登場人物
ツカサ…ある王国の王。ルイに恋をする。
ルイ…ツカサの重臣。ツカサに忠誠を誓う。
トウヤ…貴族。ツカサを尊敬していた。
アキト…トウヤを守る騎士。真相はもう間近。
from.ルイ
ツカサ様に押し倒され、僕は何の抵抗もしなかった。いや、出来るわけなかった。
そんな顔されたら…抵抗なんか出来るわけない。
僕はそのまま、ツカサ様と身体を重ねてしまった。
「後悔しているか?」
僕にブランケットをかけながら、問いかけて来た。
「後悔してると言ったら、もちろんしてます。けれど…」
「僕にはもう、貴方しか選択肢が無かったんですよ。」
本当はこの後、城を出ていくつもりだった。ツカサ様が止めようと、僕は犯罪を犯したから。犯した罪は償わなければならない。
けれど、ツカサ様は…
「俺を殺してくれ。」
「は?」
馬鹿なのか、この方は。何を言ってるんだ?
「お前が出て行くのなら、俺を殺してくれ。」
「貴方は何を…僕のことなんか忘れて、元の生活に戻ればいいじゃないですか!そのために、僕は出て行こうと…」
「そんな事、俺は望んでない!!俺は、俺はただ…」
「ルイを…人を、愛したかっただけだ。」
「そんなの…貴方の我儘じゃないですか。とにかく、この事はなかった事にして…そうだ。幸い、誰も知らないんだし、この関係は今夜限りで…」
けれど、僕は甘かったようだ。
「?!!」
「あ…あ、あの…ご、ごめんなさい!」
失態だ。ネネに知られてしまった。
「ネ、ネネ…」
「誰にも言いません!絶対、誰にも言いませんから…どうか、ルイ様、城から出て行くなんて言わないで下さい…」
「あ、信じられないのなら私を殺して下さい!ルイ様がいなくなるより、ただのメイドがいなくなる方がこの国のためにもなりますから。」
「いや…すまないね、ネネ。そんな事はしないよ。」
さて、どうしたものか。
そんな時、ツカサ様が口を開き、
「ならやはり、俺が死んだ方がいいな。」
「ツカサ様!!だから、それは…」
「まぁ聞け。考えがある。」
ツカサ様の考えとは、こうだった。
まず、ツカサ様の死を偽装する。
僕の技術と知識にかかれば、偽装なんて簡単だった。
そして、捜査官を用意すること。
これは不自然にならないようにするための茶番だ。
それも、絶対事件を解決できないような人を選ぶこと。だから僕は、アキトくんが適任だと思った。
そしてツカサ様が死ねば、次の王は自然とトウヤ様になる。その日までツカサ様の死を偽装し続ける。
そして、トウヤ様が正式に王になったら、2人で駆け落ちしようと。この国から逃げ出してどこか遠くへ行こうという話だった。
この国を守るため、そして僕らが幸せになるための計画だった。
僕にはもう、それしかなかった。
僕はツカサ様の計画に従い、ネネと協力してこの事件を偽装し続けた。
from.アキト
「と、まぁざっくりとそういう事だ。」
俺は言葉が出なかった。馬鹿らしい。本当に、馬鹿だ、
「それで…俺が知っちゃいましたけど、どうするんですか?」
「それに関しては、全く問題がない。」
ツカサ様は剣を抜いた。
「お前を俺の殺人容疑で処刑する。」
「馬っ鹿じゃないですか?」
思わず声が出た。
「無理がありますよ。それに、あんた生きてますし。」
「仮死状態から生き返ったという事にでもしとくから問題ない。」
「そして、生き返った俺が証言するんだ。お前が殺したとな。これで解決じゃないか。」
ああ、俺はただの山羊(スケープゴート)だったのか。
「ツカサ様、おやめ下さい。」
ルイ様が俺の前に出た。
「ルイ、何のつもりだ?」
「貴方がアキトくんに罪をなすりつけ、処刑するのならば、僕は海に飛び込んで自害致します。」
「なッ…!!!ルイ!!」
なんでルイ様は俺を庇うんだろう。
「そうか、ルイ。お前はやはり、アキトを…!」
「は?俺?」
「ずっと思ってたんだ。ルイはやはり、アキトに恋情を抱いているんだろう?」
え、そうだったのか?いや、それはないだろ。
どう考えたって…ルイ様が愛したのはツカサ様だ。
「アキトくん、早くここから逃げて。」
「はい?え、貴方何する気ですか?」
「初めからこうすれば良かった。」
すると、ルイ様は自身の剣を抜き、ツカサ様を刺した。
「ぐッ…!!ルイ…!!」
「ちょ、何してるんですか?!」
「アキトくん、僕は早く逃げてと言ったよ。早く逃げてくれ。」
「けど!」
俺は迷った。
「出てってくれ!!」
だけど、もう迷わなかった。
2人から背を向け、俺は走り出した。
from.ルイ
ああ、やっと邪魔がいなくなった。
えっと、確か向こうに灯油があったな、
僕が動こうとすると、ツカサ様に足を掴まれた。
「ルイ、どこに行く気だ。」
「どこにも行きませんよ。ただ、取ってきたい物があるんです。」
「嘘だ。そんな事言って、俺を置いてアキトを追うんだろう?」
「そんな事絶対しませんよ。少し離してください。」
「絶対、お前は戻ってこない。母様みたいに…」
僕はキッチンにあった灯油を持って、ツカサ様のいる部屋は戻った。
戻った僕を見ると、ツカサ様は嬉しそうにニコっと笑った。
「ルイ、戻って来たのか。それとも、これから出て行くのか?」
不安そうに言った。
「どこにも行きませんよ。」
僕はカーテンに灯油を染み込ませた。
「何をしているんだ?」
「カーテンに灯油を染み込ませているんですよ。」
そして、マッチで火をつけ、カーテンに放った。
ぼうっと、たちまち燃え上がった。
「ルイ、何をしているんだ?」
僕はツカサ様に、ツカサ様の剣を握らせた。
そして、剣先を自分の心臓に向け、当てた。
「ルイ?」
「ツカサ様、しっかり握っていて下さいね。」
ゆっくりとツカサ様の方に体重をかけていった。
ずしっとした痛みが走る。
「ツカサ様、僕が愛したのは貴方だけです。」
そう言ってツカサ様を抱きしめた。
お互い、血塗れだった。けど、そんなの気にしない。
「ルイ…」
ツカサ様も、僕を抱きしめ返してくれた。けど、その力は弱々しかった。
「俺も、お前だけを愛していたぞ。…ルイ、ありがとう。」
どんどん燃え上がる炎。
どうか、この部屋全てを燃え尽くしておくれ。
僕らの思い出は、僕らごと燃やしてしまおう。
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コメント
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でも,少し涙出てきた
スケープゴート………ひつじがいっぴきじゃないか!!(知能:ゼロ)心中エンドですか……ありがとう………(昇天)あかまるの言葉選びが更に感情移入させてくれる……🥲関係なかったらごめんなんだけど、一番最初の登場人物紹介の冬弥ところ、「ツカサを尊敬していた」って過去形なのが少し突っ掛かった。ツカサとルイの初夜見ちゃったのかな……………
やべやべやべやべやべヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ