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❦第一話❦
「お嬢様、朝ですよ。」
ばあやの声がする。朝かしら。せっかくいい夢を見ていたというのに。
「ふわぁ。」
白い天井。レースの天蓋。カーテンを開ける音。いつも通り。
「おはようございます。お嬢様。」
「おはよう。ばあや。」
「お化粧しますね。」
「ええ。お願いするわ。」
「今日はお嬢様の14歳のお誕生日ですね。
「そうね。」
「半年後の結婚のたまに明日この家を出て国の本家へ行かれるのでしょう?」
「そうね…。」
そう、私は婚約している。しかも相手はこの国の王子様。ここまでは夢と同じだけれど…。
「あんな性悪な王子なんかの婚約破棄しちゃえばいいじゃないですか!」
王子様は性悪なのだ。私は幼い頃からずっと酷い仕打ちを受けてきた。
水をかけられることは序の口。
刺繍をしているときに驚かされ針を指に刺したり。
庭園を散歩中に大量の虫を投げつけられたり。
しまいには、階段を降りている時に背中を押され、落ちかけたり。
そんなことをされ続けていた。
「そんなこと言っちゃダメよ。たとえ性悪でもこの国の王子なのだから。」
「それはそうですね。」
「でもわからないのよね。どうして私に求婚したのかしら。」
求婚されたのは、ちょうど5年前。私の誕生日パーティーに来た王子に突然言われたのだ。
「お嬢様の美貌に当てられたのでは?」
「あはは…。それだったら面白いわね…。」
「お嬢様…。」
「本当は行きたくないわよ…。でも…行かなくちゃ…。」
「ばあやはずっとお嬢様の味方ですから。」
「ええ。ありがとう。」