テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「右足を上げる時の方がバランスが悪いよね。自然に使えていた左を使わないようにしていたから」
人間の動きというのは、関係ない動きのように見えて他の部分も使っているのだ。
「全部の負荷を落として楽に動かすだけのところから、均等になるようにやり直すよ」
「はい」
後退のように思える内容だけれど、左膝も同じように動かしているところは前進だと考えてみる。
「オーケー。ラストいっかーい、はい。お疲れさま、サイサイ」
「フーッ…ありがとうございました」
「本当は、トレーニングの反復運動だけでなく、軽い運動をして知らず知らずに細かく筋肉を動かすととてもいいんだよね。子どものドッジボールや鬼ごっこみたいに、駆けて、急に止まって、急に方向転換してっていうような動きね」
「ドッジボールや鬼ごっこ…」
「あれって、子どもの骨や筋肉にとてもいいんだよ。サッカーとかもね。野球のように同じスイングを何百回もするのはオススメしないけど」
「ああ…すごく一定方向に同じ動きだ…」
「うん、それ。だからサイサイは今、筋肉と筋力をつけている真っ最中だから複雑な動きは大歓迎なんだよ?ダンスって…オススメしていいのか分からないけど…」
「大丈夫ですよ、先生。ダンスは…世界に手を伸ばしていて、突然…何て言えばいいかな…突然、諦めに手を伸ばさなくちゃならなかった感じですけど…」
「そうだね」
「あの大会、見てないんです。結果も」
「うん」
「そこを見なければ、ダンスが好きっていう気持ちが残っているので…オススメしてもらっても、ガーンとかいう気持ちにはならないから大丈夫」
緒方先生のオススメという意味はよく分かる。
ダンス、特に私がやっていたダンスは、実に細かく複雑に全身を動かすんだけど…
「先生、このあと詰まってます?」
「次は1時間後だね」
「ちょっと補助に立って頂いていいですか?」
「いいよ。何の補助?」
「体操みたいな。たぶん出来る感覚ですけど…」
「ああ、オーケーだよ」
「すみません。お願いします」
私が後ろ向けにゆっくり手を下ろしてブリッジすると
「補助いる?うちに来てる人も壁なしで、これは出来ないと思うけど」
という声を聞きながら、足を床から離して半円を描いて手の方へ…ゆっくりバク転をする要領だ。
「体操選手だね」
「先生のおかげで、上半身の感覚は問題ないです。ちょっと跳ぶので下がってもらっ…」
「跳ぶ?バク転?補助するよ」
「危ない時に頭を掬い上げてもらえばいいので」
「オーケー」
私は先生が言ったように、反復トレーニング以外の感覚を確かめるように、くるくるとバク転したあと、片手でバク転…途中で止まって…おぉ、止まれるね。
「才花」
「っと…羅依、お迎えありがとう」
私が逆立ちで歩いていたところへ、羅依とタクが来てくれた。
「何やってんだ?」
「筋トレ以外の動作確認だよ」
「羅依、サイサイはちょっとおかしいんだよ。ダンスの動きを取り入れるかと思えばそうじゃなく、くるくると体操選手の床運動を始めるんだ。補助もなしでね」
「先生のメニューのおかげで上半身の感覚が以前のままなんです。ありがとうございます」
コメント
1件
お〜っ(ᵒ̴̷͈ᗨᵒ̴̶̷͈ )スゴイ!!才花ちゃん片手バク転とかできてるよ〜👏😭 凄いよね〜緒方先生!でも先生の言ってる意味わかる〜!多分よ、先生のダンスは体でリズムをとってみたいなのじゃない?踊っても扇子🪭フリフリのおちりぷりぷりのようなお立ち台のよね?違う?😅 先生の筋肉と筋力の話や、その例えがわかりやすくてありがたいです!┏○ ペコリ