💚「……ここ…は」
目が覚めたら、病院のベッドに寝かされていた。腕から延びる点滴の管で、あー、やらかしたんだなと分かった。
きっと俺は倒れたんだ。最後に食事したのっていつだっけ…。日常のことが煩わしくて、忙しさを言い訳にして確かにあまり食べていなかったかもしれない。
💙「起きたか」
頭上から大好きな人の声。
薄暗い病室の中でもハッキリわかる。俺がこの声を聞き間違えるはずがない。
💚「翔太…ついててくれたの」
💙「ん」
短く答えると、翔太が視界に入って来た。
💙「ちゃんと食えよ。なんでお前が傷ついてんだ」
翔太は少し怒っている。でも、それは俺に怒っているというより、なんだか不甲斐ない自分自身に腹を立てているようにも見えた。どうしてこの人はこんなにも優しいんだろう。
💚「ごめん…自分で糸をぐちゃぐちゃにしておいて、解けなくなったから、翔太に気持ち伝えて…したらもうなんだか疲れちゃって」
自分でも何を言っているのかわからない。
わからないけど、もう止まらなかった。好き、がとめどなく溢れる。
ここには俺と翔太しかいない。
誰も聞いていないなら、せめて愛する人に、本当の気持ちを伝えたいと思った。本当に身勝手かでしかないけど、好きだよって百万回言いたい。
💙「勝手だ」
💚「うん、勝手だね」
目から涙が溢れた。
拭う元気もないし、泣いている自分を見せることで反省して見せているような変な気分になる。
俺、反省、してるのかな?
後悔…はしていない、しちゃいけないって思うけど。
💙「涼太と話つけた」
💚「話……?」
💙「うん。話つけた」
身体が震えだす。審判が下りるのか。
とうとう、俺、フラレるんだな………
💙「阿部ちゃんと付き合うことにした」
💚「え……」
声が掠れた。
なんで?どうして?
💙「だって俺。阿部ちゃんのこと好きだもん」
💚「嘘…でしょう?」
💙「もし、阿部ちゃんの本命が涼太だっていうんなら、早めにそう言って」
💚「違う。翔太」
💙「…ホントかよ。前科あるからな、阿部ちゃん」
翔太がうらめしそうに俺を見る。
俺は夢を見ているのだろうか。
さっきから聞こえる言葉全て信じることができない。
💙「……もし、俺を騙してるならこの話だけ聞いてけ」
💚「……………」
💙「俺、ホントはずっと阿部ちゃんのことが好きだったんだ」
💚「………………」
💙「その相談に乗ってもらっているうちに、涼太に告白された」
💚「そんな……」
💙「俺が勝手に脈がないと思ったんだ。佐久間の気持ち、聞いてたから俺は」
💚「………………」
💙「それで、涼太といると楽ちんだし、涼太優しいし、阿部ちゃんとはまた違った感じで好きになって。だから、これから俺を騙すってことは、この俺の気持ちを踏みにじるってことになるんだよ。わかったか」
💚「俺、俺……」
もう後は言葉にならなかった。
ただ後から後から涙が溢れるだけだった。バカみたいな遠回りをして、バカみたいに人を傷つけて回った愚かな俺の末路がこんなにも苦いハッピーエンドだったなんて。
💙「ちゃんと気持ちを伝えずに悪かったよ」
💚「それは俺の方だよ」
そう言って、俺たちは2人で泣いた。
コメント
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自然に涙が、、
えっ、まじですか?