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颯斗
涼太
高校三年生 10月下旬
創作BL 実在するすべてのものに関係がありません
______
高校生活最後の秋。
全員が一丸となって受験と戦う中、俺はまた違うものと戦っていた。
「ん、涼太。起きたか。」
「颯斗おはよ〜、寒いのにごめんね待たせて」
目の前の家からボサボサの髪で出てきた俺の幼馴染の涼太。
俺はこいつに恋をした。
「颯斗、今日なんかテストあるっけ?」
「今日は英単語テスト。」
「うわ〜なんもやってな〜い、問題出して」
「ん」
英単語帳を受け取って適当なページを開く。
今日は一年に習った単語の総復習。基礎の徹底こそ入試に1番大切なことと聞く。一年の簡単な問題を淡々と解くのは正直つまらないが、これが1番結果に響くのなら文句を言わずやるしかない。
「えー、…”苦しむ”」
「うーん…さ、さ〜…わかんない、正解は?」
「suffer。次、”〜に耐える”」
「えーと、あ、bear!」
「正解。じゃあ…”〜を引き裂く”」
「えー?なにそれ」
「tear。」
「え、tearって涙じゃないの?!」
「引き裂くって意味もあるんだぞ。おい おい、大丈夫かよ?不合格だったら居残りで直し提出だぞ。」
「えーんなのあるの?!先に言われたらもっと本気でやってた〜!」
「沢村先生のテストはいつもそうだろ…」
そろそろ自分の話をしよう。なぜ俺がこいつに恋をしたのか。
普段はサボり屋で、文系教科以外はバカで、授業も居眠りばっかでどうしようもないやつ。
でも顔は綺麗で、スタイルもモデル並で運動も出来て、おまけに病的にお人好しときた。当然モテるし、その優しさを利用してこき使おうとしてる奴もいた。
俺はそんな涼太がほっとけなくて、中学の時から一緒にいた。最初は身長も低く運動神経も皆無、童顔で勉強しか取り柄のない俺の羨む物を全て持っていた存在だから近付いた、ってのもあったのかもしれない。だが時間を共にしている内に理解し難い感情が湧いてきた。それが恋だと気付いたのは高校に上がってからだ。
まあそんなこんなで俺はこいつに恋をしたはいいものの、奥手の俺と鬼鈍感天然バカなコイツでは発展するわけもなく、今に至る。
「ひーさむさむ…もう冬だろこんなの〜、乾燥するし…」
隣で鼻を真っ赤にしてコートの袖口に顔を突っ込む涼太。今はその一つ一つの動作が愛らしくて仕方ない。今は耐えれてはいるが、感情が溢れ出るのも時間の問題だろう。
「涼太、ちなみにあと15分で朝のホームルーム。」
「走ろう!」
「あ、待て!!」
3限の英単語テストが終わり、次は体育。
体育になると涼太はわかりやすくテンションが上がる。
「うーーん、っはぁ、やっと終わった〜!体育!バレー!やっぱり動かないと!」
「そうかな。俺は座ってたほうがマシ。」
「そんなこと言うなよ颯斗!早く着替えて行こうぜ!」
寒がりの涼太は人より早く長袖になる。
それは体育着も勿論例外ではなく、今だって長袖長ズボンだ。
なのにこいつは人一倍動くから、よく汗をかく。
「ところで涼太、タオルは?」
「え?あー、忘れた!まあ服で拭けばいいでしょ!」
それが(俺と)女子にとって目に毒と言われてることを、こいつは知らない。
「はい、では1人2組に分かれてアンダー、オーバーパス練習はじめ!」
「颯斗〜いっしょにやろ!」
今の瞬間だけは涼太と一緒に居たくない。俺の運動音痴さが強調されるからだ。…まあ、こんな犬みたいに駆け寄ってくるからいつも断れずにいるけど。
「…ん、いいよ。」
「じゃ、行くよ!ほい!」
「…ってちょ、高っ!」
「ほらほら、オーバーオーバー!」
「なんか監督いるし…よ、っ!」
「あーちょ、どこパス出してんのさ!」
「でも拾ってんじゃねえか!ハァ、ハァ、」
うん、今日も散々だった。
今は授業時間が余ったので有志の生徒で試合をしている。勿論涼太は出て、俺は見学。
「おらっ!ってクソ、ミスった!セッター頼む!」
「う”、っ!あ、ごめんッ最後頼む…ッ!」
「涼太! 」
「…おらァっ!」
体育館に響くボールが叩きつけられた音。
セッターが誰も居ない場所に出してしまったボールを、反対側から走って勢いそのままアタックで得点。
そんなファインプレーに体育館は間違いなく…
「うおおおお!!!」
「涼太ナイスー!!!」
「よくやったな今の!!」
「すげー!!!」
間違いなく、大盛り上がり。
たくさんの人に囲まれ、涼太が見えなくなる。
その中でいつものようににこにこと照れくさそうに笑っているのだろう。
ちょうどチャイムが鳴り,授業が終わる。
ぞろぞろと教室に帰る支度をしている生徒から、涼太がこちらに歩いてきた。
「お疲れ。凄かったな。」
「そう?ありがと!」
「それよりも颯斗、今日のパス練で10往復も続いたよね!上手くなったよ颯斗も!凄い!」
「…」
自分がどれだけ凄いプレーをしてチームの英雄になっても、俺の小さな成長を褒めてくれる。
だから俺は、こいつに…
「…バカにしてる?」
「えーなんで!」
こいつに、惚れたんだ。
4限も終わり昼食、今日も今日とていつも通り涼太を誘って食べようと思っていた。
「行っちゃえよ真美!絶対いけるって!」
「無理…絶対無理だって…」
「行くって約束したじゃん!ほら!早く!」
なんだか周りの女子がザワザワしている。
気にせず涼太を誘おうとしたが、突如間に割り込んできて涼太の方を向いた。
「り、涼太くん…ちょっと、いい…?す、すぐ終わるから、」
「ん?うん。どうしたの?」
「ごめん颯斗、ちょっと待ってて」
「…おう。」
「ただいま〜」
「おかえり。なんだった?」
「んー秘密。それよりお腹減った〜!早く食べよ〜」
…間違いない、告白だ。
しかもしてきた相手は学年1美人と男子の中で言われる真美。
…正直、数ヶ月前から周りの女子の空気感がそうなんだろうと物語っていた。が、今勇気を出してくるとは。
涼太は…まあ、OKだろうな。顔だけじゃなく、頭も良くて愛嬌もある子だし。
大丈夫…もう諦めていたことだから。
多様性の時代と謳われている世の中とはいえ、俺のような性的マイノリティはまだまだ少数派、正直言って生きづらいと感じる人もいるだろう。ゲイであることを知ったノンケの涼太はどんな反応をするのだろう。キモがられてもしょうがないと思う。なんせ俺の恋が成就する確率なんて限りなくゼロに近いのだから。
そう…大丈夫。わかっていたこと。
「…颯斗?」
「…あぁ、早く食べようぜ」
「うん」
帰りのホームルームも終わり、放課後。
部活に行ったり、友達と遊びに行ったり、学校終わりの自由な時間。俺もそんな時間を謳歌しようとしていたが…
「颯斗〜、英単語不合格だった〜、」
「まさか…」
「居残り一緒に残って〜…」
ぺしょぺしょな顔でこちらに寄ってくる涼太。どうやらこのクラスで不合格は涼太だけらしく、心細いので一緒に残って欲しいらしい。
「…いいけどさぁ…」
「やったー!!あとでなんか奢るわ!」
昼間のことがあってから、少し平然を保てなくなっている。
今2人きりになって、感情が抑え切れるかどうか…
…いや、何年もやってきたことだ。今更なんてことない。
机を一つ挟み、向かい合わせに座る。
同じノートを覗き込むので勿論距離は近くなり、相手の情報量がいつもより倍増える。
ぼさぼさの髪、いつもは切れ長なのに眠そうに垂れ下がった目、乾燥していて小さな唇、喋るたびに上下に動く喉仏…
普段はきにならないことが、こんな時に限って嫌に目に入る。
こんなことなんて今まで何度もあったのに。せっかく頼ってくれてるんだから、集中しろ…
「…颯斗?…大丈夫?」
「あ、うん、で次聞きたいとこは?」
どうやら少しぼーっとしてたみたいだ。
涼太がこちらを伺うように見ている。
邪な心は捨てて、いい加減に目の前の問題に集中しろ。
「…颯斗の体調。」
「え?」
「昼の時からちょっと変だよ。なんかぼーっとしてるし。熱でも出たんじゃ…」
涼太の綺麗な手がこちらに近付いてくる。
額に手を当て、体温を測る。まぁ、ベタな展開。
「うーん…やってみたけどよく分かんないや…保健室運んでこうか?」
音を立てて席を立つ。
ダメだ、このままだと本当にまずい。
「…トイレ行ってくる。」
「え、…うん。」
無理やり手を振り払う様な形になってしまったが、仕方ない。あの程度の接触で動揺するなら、一度頭を冷やさなければ。
トイレに篭り早20分。
もうそろそろ戻らないと。
だが、もう足が動かない。
きっともうすぐこの思いがバレてしまう。
バレたら…もう、一緒にはいられない。
…
…言ってしまおう。
変にバレるなら、自分で言ってこの戦いにけりをつけよう。
そして、涼太に幸せになって貰えば…それでいい。
よし、行こう。そして潔く一刀両断してもらおう。
息を一つ吐き、教室のドアを開ける。
「ただい……ま、?」
明らかに顔が項垂れ、体から力が抜けている。
静かに近付いてみると、どうやら寝ているだけの様だ。こいつは無限に寝れるから、まあしょうがない。…と、思ったが…
「…目の下に…隈、?」
見慣れない隈がある。
思えばこいつ、体育の時もいつもより反応が遅かったが、授業は最近真面目に受けている。
机に広げられている英単語テストも、合格点より3点少ないだけだ。高一のこいつなら23点くらいしか取れてなくてもおかしくないのに。
…涼太も、受験で焦ってるんだ。
今初めて気付いた。涼太はいろんな人のいろんな変化に気付いているのに。
「本当に…自分が不甲斐ない…」
シャーペンを持っていながら止まっている大きな手に自分の手を重ねる。
握っているシャーペンを取り、代わりに自分が手を握る。
「は、手あったか、いつまでも子ども体温のガキめ…」
目が閉じられている分、綺麗に生えたまつ毛がよく見える。
美人の真顔は怖いとは、よく言えている。涼太も喋らなければ少し圧がある。まぁ中身が大型犬だと知れば微塵も怖くはないのだが。
「…キス、したい。」
不意にそう思った。
一度も触れることすら許されない。
不甲斐ないと感じた矢先にこんな卑怯なことをするのかと言われたらそれまでだ。
だが、これから死地に向かうような感情なのだから、今だけ、一回だけは許してほしい。
しかも、こんなに心情が乱されている原因の張本人が目の前で無防備に寝ているのだ。少しだけ仕返ししないと気が済まない。
頬に震える手を添え、近付く。
息が掛かるような距離になって、目を閉じる。
「…ごめん、涼太」
もう少しだけ近づくと、すぐに柔らかいものが口に当たる。
念願だったのに、どこか苦しい。
少し目を開けて顔を見ると、さっきと同じく目を閉じて規則正しく寝息を立てている涼太。
…俺はきっと、瞼の裏にある綺麗な目を見ながら口づけをすることは、もう無理なんだろう。
それどころかキスさえもう出来ない。二度と。死んでもだ。
…静かに顔を引く。急に頭に登った血が下がってきた気分だ。
外を見るともう夕暮れの色に染まっている。涼太が起きたら帰ろう。沢村先生は朝イチ提出でもギリ許してくれる。
俺のことは……、まぁ、いつでも話せる。今じゃなくてもいいんだ。
俺と涼太の荷物をまとめて、適当にスマホで時間を潰そう。
「ン…ふ、ぁ…」
「…ん、おはよう。意外と早く起きたな。」
「あれ…俺寝てた…、か。」
スマホを開いてから3分ほどで涼太が目を覚ました。
「もう夕方だし早めに帰ろうぜ。明日でも先生許してくれるだろ」
「…う、ん。」
涼太に背を向けて鞄を取ろうとしたとき、ものすごい勢いで肩を掴まれ、壁に押し付けられた。
「っは、?!ちょ、なになにッ…!」
そのままろくに抵抗もできず、見慣れた顔が近付いてきていとも簡単に唇を奪われ…
「…ッ、……」
…る一歩手前で、震えながら涼太がぴたりと止まった。
一旦肩を押して静止し、(まだ壁に押し付けられたままだけども)話す。
「っなんだよ急に、おかしくなっちまったのか?夢遊病とか、?」
「おかしくなってるのは颯斗の方だよ、 」
「は?どこが!」
「…俺に、キス、したろ。」
「は、」
起きてたのか?
おかしい、でもしっかり寝ていたはず…
「俺も夢うつつな状態だったから定かか分かんなかったけど、今の反応で確信した。」
「…」
「正直イタズラかと思って、今仕返ししようとしたけど、颯斗はそんなに酷いやつじゃない、何か理由があるはず…って思って、途中で止まったんだ。」
「…」
「…なんでか、聞いてもいいか、」
「なんでも何も…」
「…お前のことが好きだからに決まってんだろ…」
…あぁ、カッコ悪い。
ちゃんと目を見て話したかったのに、こんなに顔を逸らして、むしろ涼太に聞かせるようなことして。
「…卑怯だよ」
「うん」
どんな言葉でも受け止める準備はできてる。なんなら寝込みを襲った相手だ。大人に言うと言われても何も言えない。…早く、トドメを刺してくれ。
「…好きなら、ちゃんと正々堂々と来てもらわないと…」
「…は?」
「寝てるとこ襲うなんてそんなの…卑怯。俺だって颯斗の思いちゃんと受け止めたい。」
「え、待って待って」
好きなんて気持ち悪い、もう関わらないで
そんな言葉を考えていた俺にとって、その答えはあまりに予想外だった。
「正直…颯斗の想いには全然気づかなかった。ごめん。でも俺もちゃんと考えたい。こんな俺のこと好きになってくれたなら、ちゃんと全員に真摯に向き合いたい。」
「全員に…って言うのは、真美ちゃんとかも含めて?」
「あれ、なんで告白だって知ってるの?…あの子は…告白の時に後ろに友達の女の子がたくさんいてさ、怖いからお断りしようと思ってるんだ。」
「…じゃあ,他は?」
「…カッコつけて全員って言ったけど、今俺が真摯に向き合うべき人は…颯斗しかいない 」
…本当にバカでお人好しで、優しい。
くるりと回り、今度は涼太を壁側に押し付ける。
普段は涼太の方が高い身長も、今だけは同じくらいになっていた。
「…涼太」
「なに」
「…キス、したい。」
「ふ、俺は好きな人にしか身体は貸さないよ?」
「お願い、絶対好きにさせる。幸せにするし、彼氏にしてよかったって思わせる。」
「…じゃあ、いいよ」
「…」
今度はしっかり目を合わせてから、唇を重ねる。
さっきと違い、お互いがお互いを求め合うようなキス。
そんな夢にまで見たことに、心臓の高鳴りが抑えきれなかった。
「…っふ…んは、やればできんじゃん颯斗も…」
「うっさいなぁ…お前も早く俺のこと好きになれよな…」
「それはこれからの颯斗次第かな?…今日は帰ろっか。」
「ん。」
まだ付き合えてはいないけど、少し、いや大分近付いた。
少なくとも今のように帰り道をあえてお互いスローペースで歩いているうちは、俺が思い描いていた理想が崩れることはそうそうないだろう。
______
初々しい2人が描きたくて作りました
私のイメージとしては
涼太
白髪癖毛
コンタクト
180センチ
制服少し着崩し
颯斗
黒髪直毛
メガネ
172センチ
きっちり制服
こんな感じのイメージで書いてました
あとは物語途中に書いている通りです
ちなみに分かりにくかったかもですが颯斗が攻め側です
私も恋をしたことがありますが、友達と被ったので即譲るしかなくなりました。悲しみの海
ちなみにその子のことはまだ好きです。こっち向けよ‼️って常日頃思ってます
こんな感じで創作かいてくんで、気が向いた時にまた
コメント
1件
わあ〜っ、めっちゃ良かった!!😭💕💕 颯斗くんの片思いが切なすぎて胸がギュッてなったけど、涼太が起きてたシーンからの展開が尊すぎて叫んだわ!!!「俺だってちゃんと受け止めたい」って…なにそれ理想的〜!!✨✨ お互いまだ付き合えてないのに、あの帰り道の空気感が青春のど真ん中って感じで大好きです! 続きが気になりすぎる〜!!次も絶対読みます🌸