テラーノベル
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山中の古民家『神代家』での過酷な事件から数日。
私は今、大学の中央広場にある大きなクスノキの下で、莉子ちゃんたちとベンチに並んで座り、買ってきたばかりの冷たいイチゴ生クリームクレープを頬張っていた。
「ねえねえ渚ちゃん、先週末のお休み、どこ行ってたの? サークルの合宿?」
「あ……うん、ちょっと隣県のほうまで。九条先輩たちの『フィールドワーク』のお手伝いでね」
「え〜! オカ研ってホントに課外活動あるんだ! パパ活とか怪しい噂流してた奴ら、マジで一回謝ればいいのにね」
莉子ちゃんがぷくっと頬を膨らませて怒ってくれる。
事件の真相を知る由もない彼女たちだけど、こうして私の「普通の友達」として変わらず接してくれることが、今の私にはたまらなく愛おしかった。
(……あの事件のあと、本当によかった)
記憶を奪われていた当主さんたちも無事に全快し、あの蔵の跡地には小さな供養塔が建てられたそうだ。
何百年も「名前」を奪われて閉じ込められていた市蔵さんたちも、きっと今は穏やかに眠れているはず。
「あ、渚ちゃん! 噂をすれば九条先輩だよ!」
莉子ちゃんが指さした方を見ると、講義棟の廊下から、いつものようにパイプ(火はついていない)を手に優雅に歩いてくる九条先輩の姿があった。
目が合うと、先輩は眼鏡のふちを少しだけ押し上げ、ニヤリと不敵に微笑んで小さく手を振ってきた。
そのすぐ後ろを、オカ研の男子先輩たちが大量の古文書を抱えて慌ただしく走っていく。
『皐月さん! 先日の「名前による呪縛解除」の症例について、民俗学の観点から論文一冊書けそうなんだが!』
心の声(残留思念)が漏れ聞こえてきそうなくらい熱を帯びた先輩たちの視線に、私は苦笑いしながら小さく会釈を返した。
大学での私の立場は、入学当初とは少しずつ変わってきている。相変わらず「変な子」「オカルト好き」と遠巻きにする人もいるけれど、オカ研という確固たる居場所があり、こうして普通に笑い合える友達もできた。
そして——。
ポケットの中で、スマホがトントンと2回震えた。
『峯岸:おいクソガキ。今週末、佐藤の奴が神代家の一件のお礼だって言って、駅前のパフェ奢るって聞き出してきた。ポテトも特大で頼んでおいたから来い』
『佐藤:先輩が勝手に決めたんじゃないですかー! でも渚ちゃん、本当に無事でよかったです。パフェ楽しみにしててくださいね!』
画面に踊る2人のメッセージを見て、私は思わず吹き出しそうになった。
「渚ちゃん、何見てニヤニヤしてんの〜? 彼氏?」
「ち、違うよ! ……頼りになる、おじさんたちの連絡」
「おじさん……? あ、あの事件の時に来てたカッコいい刑事さんたち!?」
「まあね」
一口食べたクレープの甘さが、疲れの残る身体にじんわりと染み渡っていく。
いつか私が大学を卒業して、自分の力で「皐月探偵事務所」の看板を掲げるその日まで。
大学というこの場所で学び、傷つき、仲間と笑い合いながら、私は人間として、そして「探偵」として少しずつ強くなっていくんだ。
「よし、午後の講義も頑張ろ!」
真っ青に晴れ渡ったキャンパスの空を見上げながら、私は最後のクレープを口に放り込み、元気よく立ち上がった。
コメント
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第17話、読み終えたよ! 事件のあとの日常回、めっちゃ沁みたわ……。莉子ちゃんたちとのクレープタイムのほっこり感、九条先輩の余裕ある微笑み、峯岸さんと佐藤さんの連絡で「おじさん」呼びしてクスッとさせられるところ、全部がいいバランスで配置されてて「ああ、ちゃんと日常に戻れたんだな」ってじんわり来た。最後の「探偵として強くなる」宣言も熱い! 次の展開も楽しみにしてる🔥
#学園
梨本和広
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