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嫌なことばっかり続く。家族とも上手くいかないし、仕事じゃミス連発。 でも働かないと推し活すらままならない……世の中、ほんと辛い。
疲れ果ててベッドにダイブ。
こんな時はもう、ゲームしかない。
慣れた手つきでイヤホン突っ込んで、スマホを起動させる。
画面が光った瞬間、聞き慣れた声が響く。
「よ、相棒。……相変わらず、死んだ魚みたいな顔してんな。」
失礼すぎる。
でも、いつものこいつだ。
……ん? なんか、いつもより声が低い?
いや、久々のログインだし、記憶違いかな。
もっと聞きたくて、タップする。
「ありゃ? マジで元気ねぇじゃんか。」
!!!
待って、これ……絶対、ゲームにこんな台詞なかったはず。
画面越しに話しかけてくるなんて、ありえない。
心臓が跳ねる。
息を呑んで固まってる私に、サーティーンがため息混じりに続ける。
「……マジで沈んでんのかよ。……あー、わかった。ちょっと待ってろ。」
そして、画面が一瞬暗転したかと思うと――
“今、そっちに行くから。”
……は?
え、何これ。
マジで?
視界がぐるぐる回って、足元が急に抜ける。
真っ暗な闇の中、風が耳元で唸る。
体が浮いて、落ちて、止まらない。
怖すぎて、泣きたい。
私、何か悪いことした? 死ぬの……??
最後に、せめて推しに会いたい。
サーティーン……
「よぉ、相棒。そんなに俺っちに会いたかったか?
相変わらず、辛気臭ぇ顔してんじゃん。」
視界がパッと明るくなった瞬間、失礼極まりない声がすぐ近くで響いた。
アニメで見たような、青白く光る電子空間みたいな世界が広がってる。
そして――私は、最推しのサーティーンに、俵みたいに抱えられてた。荷物扱い。
腕の中で軽く揺さぶられる感触。
体温……ある。
匂いも、ゲームのボイスじゃなくて、本物の匂い。
「えっ! さ、サーティーン!? 本物!??」
心臓が喉まで跳ね上がる。
彼の赤い瞳がすぐそこに。
マスクの下から覗く口元が、いつもの皮肉っぽい笑みを浮かべてるけど……
なんか、目が少し優しい気がする。
「は? 何ビビってんだよ。
……仕方ねぇから、落ちるとこ助けてやっただけだろ。」
サーティーンがそう吐き捨てるみたいに言うけど、
私の体を支える腕は意外としっかりしてる。
明らかに女性の抱え方じゃない、失礼極まりない持ち方。
周りの可愛いヒーローたちにかけるような歯の浮く台詞も一切ない。
なのに……自惚れかな、声だけは少し優しい。
「え、でも……なんで? ゲームの中にいたはずじゃ……」
言葉が震える。
現実とゲームの境目が溶けてるみたいで、頭が追いつかない。
彼は軽く舌打ちして、
赤い瞳を細めて私を見下ろす。
「ったく、相棒ってのは鈍いな。
お前があんな死にそうな顔で『サーティーン……』って呼んだからだろ。
……俺っち、死神なんだぜ? 呼ばれたら来るに決まってんだろ。」
……え?
一瞬、時間が止まった。
マスクの下の口元が、いつもの皮肉っぽい笑みじゃなくて、
なんか……少しだけ、困ったみたいに歪んでる。
「ま、呼んだのは相棒だけど、ここに連れてきたの俺っちだし。
仕方ねぇから当面、ここでの面倒は見てやるよ。」
あ、面倒見てくれるんだ。
てっきり「面倒くせぇ」ってジャンヌあたりに丸投げすると思ってた。
「ま、死んだ魚みてぇな顔が、生きた魚くらいになるまでのんびり過ごしたらいいんじゃねーの?
……一応、俺の相棒だからな。」
電子空間の床に着地する瞬間、消えるように小さな声が聞こえた。
「えっ?」と見上げると、彼はそっぽを向いている。
しかし、耳が赤い。
……照れてる。
サーティーンが現実にいることが嬉しくて、
夢なら覚めないで欲しいし、夢なら泣く。
思わず自分の頬を全力で引っ張った。
痛い。
夢じゃない。
嬉しい。
「ふふ、ありがとう。世話になるね。」
彼は一瞬目を逸らして、
「……ったく、礼なんかいいっての。
相棒なんだから、当たり前だろ。」
その言葉に、じんわりと涙がにじむ。
不器用な優しさが、心に沁みて、離れられなくなる。
(この世界で、ずっと一緒にいられたら……)