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なんて邪悪な笑みだ、と。
そう言わなかった自分の自制心を褒めちぎりたい気分になるオウカだが、本気でどうしようもない厄ネタだ。
とはいえ、助けないという選択肢もなかった。
自分と同じ車両に乗っている王太子閣下が暗殺者に襲われて死ぬ、しかも暗殺者も王族に雇われているとなれば、下手をするとオウカたちが大逆の罪を着せられかねない。
王族の持っている権利というのはそういうもので、それが継承権騒動となれば尚更だ。
(ああ、どうしようもねえ……とはいえ、腹ぁ括るしかねえか)
やらざるを得ない。であれば次はどうするか?
簡単だ……より有利に動くための準備をするのだ。
「姫様。質問をしてもいいか?」
「ええ、よくってよ」
「そもそも姫様はこんな暗殺者共が来るのを承知で動いてるみてぇだが……警護を薄くしてまで何をしてぇんだ?」
「あら」
楽しそうな表情のイリーナ姫だが、これは余程のアホでもなければ当然に気付く。
何故なら、お忍びだろうとなんだろうと、護衛が一人なんてことは有り得ない。
そして何より、お忍びの様子すらない。であれば騎士がずらりと並んでいて当然なのだ。
それがアスガルとかいう騎士一人だけをつけて出歩いている。
有り得ない。異常だ。
であれば、当然そうしている理由がある。
それがオウカの考えだが……それすら見抜くようにイリーナ姫は笑う。
「理由は二つ。裏切り者の炙り出しと、王太子としての義務ですわ」
「……聞くんじゃなかった」
「あら! もう降りられない船なんですもの! ならその聡明さで私の寵愛を得るのが最適手ではなくて?」
そうかもしれないが、アホの振りをして何処かで降りたほうが良かったと思ってしまうのは無理ないことだろう。
というか、今の発言。物凄く聞き捨てならない。
「あー、姫様。先程の言葉の前半だが」
「降りられない船?」
「ではなく」
「うふふ、裏切り者の話?」
「おう。まさかとは思うんだが、棒引きクジのごとく、当たりはそこの騎士殿一人しかいなかったってオチかい?」
「ええ! 私一人に対抗するために仲も良くない同士で組んだおかげかしらね。中々に手が長いわ!」
「詰んでるじゃねえか」
「半分は冗談よ。アスガルがいれば処分できるから、他を全部怪しい奴で固めたの」
想像通りだったわ、と微笑むイリーナ姫にアンナが「怖ぁ……」と引いているが、無理もない。
この魔石列車にその裏切り騎士どもの姿がないということは、すでに処分されているということに他ならない。
裏切り者だろうと王太子の護衛ということは相応以上の実力者だろうに、このアスガルという騎士は相当の実力者なのだろう。
わざわざオウカを雇う必要もなさそうに思えるのだが……イリーナ姫がわざわざ無駄な人材を雇うとも思えない。
「……姫様の義務とやらはダンジョン絡みで?」
「そう、そうよ! やはり頭の回転が速いですわね! テンランスのダンジョンで手に入るっていう、あるものが欲しいんですわ!」
そんな義務とかにまでなるものがテンランスのダンジョンで出たかどうかと考えるオウカだが、あいにくカタナに関係ない情報までは仕入れていない。
とはいえ、何か面倒なものであることは恐らく間違いない。
「……モノの詳細は聞かせていただけるんで?」
「ドラゴンハートですわ!」
何か口に入れていたら間違いなく吹き出すであろうことをイリーナ姫はあっさりと言い放つ。
ドラゴンハート、つまりドラゴンの心臓。倒した後に硬質化するという、とんでもない魔力の塊。
倒した者がドラゴンスレイヤーと称えられる程度には打倒困難な、そんなクソ化け物。
「ね、ねえオウカ。ドラゴンって、あのドラゴンよね?」
「おう。アタシの認識が間違ってなけりゃ、どこぞの騎士団をブレスのひと吹きで消し炭超えて塵に変えたっつー化け物だ」
「無理でしょ……」
「なあ姫様。囮を御所望ならどこぞで傭兵団でも雇ってほしいんだが」
「うふふ、お誕生日ケーキに並べるロウソクなんていらないわ?」
「一息でどうぞってか。まあそうなるだろうがよ」
とんでもない言い草ではあるが、傭兵団なんぞ雇ってもブレスのひと吹きで塵になるのは間違いない。
となれば、先程からこめかみに青筋を立てているアスガルのような強い者を連れていくしかない。
まあ、アスガルでどうにかなるかは知らないが。
「一応言っとくが、アタシはシンボル武器もねえ雑魚だ。お気に召すとは思えねえんだが」
「そこは問題ないわ。ドラゴンはアスガルが倒しますもの。貴方に期待するのは、他の露払いですわ」
「なるほど、妥当だ」
ゴーレムをどうにかしろというのでないのであれば、オウカにも多少の自信はある。
であれば、あと聞くべきはこれだ。
「報酬は、期待させてもらってもいいんだな? アタシたちは安くねえぞ」