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『この距離、ズルい ―独占欲編―』
「……やば。キス、止まんなくなりそう」
そう言ったまま、風磨は私の髪をそっと指ですくって、耳の後ろにかき上げた。
その指先すら、妙に熱を帯びて感じる。
「ほんとに、誰にも触らせたくないな」
「……なにそれ、急に」
「だってさ、最近……あのスタッフの男、お前によく話しかけてくるじゃん」
「え……ただの挨拶だよ?」
「ふーん。俺の前だと、なんか距離近くない?」
「気のせい……じゃない?」
「気のせいだったらいいけど」
風磨の表情が、さっきまでの軽い笑顔とは少し違って見える。
じっと見つめるその目は、真っ直ぐで、どこか鋭くて。
「……お前が他の男に笑ってんの、普通にムカつくんだよね」
「……風磨?」
「俺の隣にいるくせに、他の男に愛想ふりまいて。なんか……バカみたいじゃん、俺」
「違うよ。そんなつもりじゃ――」
「知ってる。でも、ムカつくもんはムカつく」
低く押し殺した声と一緒に、唇がまた重なる。
さっきよりも強くて、支配するみたいなキス。
逃げようとしても、後頭部に回された手でそっと引き寄せられる。
「……もう誰にも、そういう顔見せんなよ」
「……なに、それ」
「俺の前だけでいい。他の誰にも、目線も笑顔も、あげないで」
「独占……しすぎじゃない?」
「俺にさせてんのは、お前でしょ」
唇の端に、もう一度キス。
そのあと、ゆっくり囁く。
「覚悟して。俺、けっこう重い男だから」