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『この距離、ズルい ―独占欲編②―』
「覚悟して。俺、けっこう重い男だから」
そう言った風磨は、じっと目を見つめたまま、私の首筋に顔を寄せた。
息がかかるほど近くて、ぞくっと背中が震える。
「……やだ、風磨……そこ……」
「ダメ。俺のものって、ちゃんとわかるようにしないと」
唇が、首筋に触れた。
吸われる感覚――最初はくすぐったくて、でもすぐにそれが強く、痛みに変わる。
「っ……いた……風磨、痛い……」
「ちょっとだけ。……我慢して」
低く囁く声とは裏腹に、その唇は容赦なく肌に痕を刻んでいく。
ズキズキする。痛いのに、風磨は止めてくれない。
「やだ……もう、やめてって……」
涙が滲む。声が震えて、堪えられずにポロッとひと粒、頬を伝った。
「……っ、ごめん」
その瞬間、風磨の動きが止まった。
「え、泣いてんの……?」
顔を上げた彼の表情が、一気に変わる。
「嘘、ちょ、マジで……ごめん。俺……やりすぎた?」
黙って頷くと、風磨はすぐに私を優しく抱きしめた。
「……ほんと、ごめん。お前が泣くとか思ってなかった。俺……バカだな」
いつもの余裕ある笑みなんてなくて、声もどこか焦ってる。
「痛いのに……気づかないふりしてた。お前が俺のものって思わせたくて。最低だよな」
「……風磨のこと、嫌いになったわけじゃないよ……」
「でも泣かせた。……一番、したくなかったこと」
ぎゅっと腕に力がこもる。
「次はちゃんと、気持ちよくさせるから……絶対」
頬にそっとキス。さっきとは違って、すごく優しい。
「だから……もうちょっとだけ、そばにいさせて?」
涙のあとを指で拭ってくれて、そのまま胸に顔をうずめた。
風磨の体温は、少し熱くて、でも――
安心できる温度だった。