柚が花月たちを斬ろうとしたとき、動きが止まった。奏も気づいたみたいで、花月のポケットに手を入れている。
「これは……。」
奏の手には、俺が花月に渡したロケットペンダントが握られていた。
「それ……は…。」
「あれって昔、柚ちゃんが劉磨クンに渡した……。」
「やめろ…やめろ…。」
柚の呼吸がどんどん荒くなっていく。あまりにもその光景は痛々しく、俺の足が柚の元へ向いた。
「柚…ごめんな。俺のせいでこんな体にしちまって。」
柚の体を優しく包み込む。懐かしい匂いと温かい感触。
「俺と契りなんて結ばなければ、柚にこんな思いをさせなくて済んだのに……本当にごめん。」
「劉…磨…?」
「ならん……キズ、わしに背くのか!?」
「ぐあ……。」
柚が大きくのけぞる。まだ黒鬼院に操られているのか……?
「柚、俺らのことをもっと思い出してくれ。」
「命令だ、殺せ!」
黒鬼院が声を荒げ叫ぶ。柚は俯きながら、沈黙を続けていた。
「…………。」
「聞いているのか、キズ!」
「……でき……ません。」
「何を言っているんだ、早くやれ。」
「私は……ずっと劉磨たちに復讐することだけを胸に生きてきました。それが真実だと思っていたから。」
「それがなんだ…。」
「でも違った……すべては貴方の手により塗り替えられていた。それをその子が教えてくれた。今更……皆が私のことを信じてくれるかは分からない。でも…私は皆を信じたい。」
「キズ……貴様、すべての記憶が戻ったのか…?」
「私はキズなんかじゃない。私の名前は立花柚(たちばなゆず)。もう、貴方なんかの下僕じゃない。」
「おのれ……。」
「許さない……人の記憶を…心を利用して。私はもう貴方を主だなんて思わない。私は貴方を倒す、この身に代えても。黒鬼院霧想。」
「貴様ぁ!」
「柚…。」
「昔みたいに……もう一緒にはいられない。でも……私は信じているから。だから……今だけは私を信じて…?」
「くそ!まだ下僕はいる。輝石、李仁、琉生、何が何でも殺せ!」
「ふう……やっと片付きましたね。」
「子供に手を上げるのは気が引けたが、こっちも終わった。」
「お主ら……まさか。」
「安心してちょうだい、殺してはいないわ。ただ……アナタとの契約を解いただけ。つまり、これでアナタの味方はいなくなったわね。」
「ふざ…けるな…。皆…わしのことを裏切りやがって。皆消えてしまえ!」
「柚、待て!」
柚が黒鬼院の元へと駆けていく。黒鬼院を倒す気か……?
「皆…最後にあえてよかった……ありがとう…」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!