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カフェを出ると、少しだけ空気が冷たくなっていた。
夕方から夜に変わる時間。
「……」
「……」
並んで歩く。
自然に——
手は、もう繋いだまま。
さっきまで意識していたはずなのに、今はそれが当たり前みたいで。
(……不思議だな……)
ジョンは少しだけ、その感覚に驚いていた。
「……寒くない」
ジェーンがぽつり。
「大丈夫です」
「……そう」
短いやり取り。
でも、どこか落ち着く。
少し歩いて。
人通りが減る。
静かな道。
「……」
ジェーンが、ほんの少しだけ距離を詰める。
肩が、軽く触れる。
「……っ」
ジョンの心臓が跳ねる。
(近い……)
でも。
離れない。
それどころか。
「……」
自然に、その距離のまま歩く。
「……ジョン」
「はい」
「さっきの」
「……はい」
「悪くなかった」
小さく。
でも、はっきり。
(手のこと……?)
「……よかったです」
少し照れながら答える。
そのまま、少し進む。
街灯の下。
足が、自然と止まる。
「……」
「……」
向かい合う形になる。
距離が、さっきより近い。
(なんか……空気が……)
変わる。
ジェーンが、少しだけ視線を上げる。
目が合う。
逸らさない。
「……」
何か言おうとして。
でも、言葉が出ない。
代わりに——
少しだけ、顔が近づく。
(……え)
理解が追いつかない。
でも。
体は、動かない。
あと、少し。
ほんの少しで——
触れる距離。
「……」
ジェーンの呼吸が、近い。
(キス……?)
頭が真っ白になる。
その瞬間。
「……」
ほんの一瞬。
ジェーンの動きが止まる。
そして。
すっと、少しだけ距離を戻す。
「……まだ」
小さく呟く。
「……っ」
ジョンもやっと息をする。
(今……)
完全に、その手前だった。
「……嫌じゃないけど」
ジェーンが視線を逸らす。
「……もう少し」
少しだけ言葉を探して、
「……ゆっくりでいい」
その言い方。
すごく、ジェーンらしい。
「……はい」
ジョンも、静かに頷く。
「俺も……そう思います」
本音だった。
少しだけ気まずくて。
でも。
嫌じゃない空気。
「……帰る」
「はい」
また歩き出す。
今度は——
さっきより、少しだけ近い距離で。
手も、ちゃんと繋いだまま。
夜の道。
まだ少しぎこちない。
でも。
確実に、次へ進んでいる距離。
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