テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「面白いな」
男の声は、さっきよりもはっきりと興味を帯びていた。
蒼真を見つめるその目は、獲物を見るものではない。
観察している。
「お前、さっき何をした?」
問いは静かだった。
だが、その裏にある圧は重い。
「知らないよ」
蒼真は吐き捨てた。
正直に答えられるはずがない。
自分でも分かっていないのだから。
男は、わずかに口元を歪めた。
「そうか」
だが、その目は一切笑っていない。
「なら、なおさら価値がある」
「・・・は?」
蒼真の眉が寄る。
その言葉に違和感を覚えた。
敵のはずだ。襲ってきた側のはずだ。
なのに。
「お前は”未分類”だ」
男は続ける。
「測定不能。記録なし。分類外」
蒼真の心臓が跳ねる。
(なんでそれを)
学校での結果。
まだ外部に漏れるはずがない。
だが男は当然のように口にした。
「おれたちはな」
男がゆっくりと一歩近づく。
「選別している」
「選別?」
「そうだ」
男は淡々としている。
「使える者と、使えない者」
その一言で、一気に空気が冷えた。
「ふざけんな」
思わず声が漏れる。
「てめえらが勝手に決めてんじゃねえよ」
怒りが、胸の奥からこみ上げる。
だが男はまったく揺れない。
「すでに決まっていることだ」
あっさりと返す。
「この世界は、能力で成り立っている」
蒼真の脳裏に、あの測定の光景がよぎる。
歓声。
嘲笑。
線引き。
「その中で”例外”は、排除されるか・・・」
男の視線が、蒼真を貫く。
「回収される」
その言葉に、背筋が冷たくなる。
「回収?」
「そうだ」
男は一切ためらわない。
「お前のような存在は、放置できない」
そのときだった。
後ろで小さく息を呑む少女に気づき、蒼真ははっとして振り返った。
少女は震えながら、蒼真の服を掴んでいた。
「あの人たち・・・怖い」
それで、現実に引き戻された。
(そうだ)
今はそれどころじゃない。
状況は何も変わっていない。
むしろ、悪化している。
「安心しろ。そいつに興味はない」
それが逆に不気味だった。
「目的はお前だけだ」
「チッ・・・」
蒼真の喉が、わずかに鳴る。
逃げるか。
戦うか。
選択肢は、その二つしかない。
だが、逃げ切れる保証はない。
戦って勝てる保証もない。
(どうする)
思考が高速で巡る。
そのとき。
男の背後にいた別の男が、口を開いた。
「もういいだろ」
低い声だった。
「そいつは”当たり”だ」
蒼真の心臓が、強く打つ。
「連れて帰ればいい」
「ああ」
最初の男が頷く。
「そうだな」
それで決まった。
逃げ場はない。
「来い」
男が手を伸ばす。
それは命令だった。
拒否を許さない、絶対の圧。
だが。
「断る」
蒼真は、きっぱりと言った。
空気が変わる。
「そうか」
男は静かに呟く。
そして。
「なら、強制だ」
その刹那、男の姿が消えた。
「えっ⁉」
視界から消えた。
いや、違う。
速すぎて見えない。
直感が叫ぶ。
(来る!!)
世界が光に包まれた。
音が途切れる。
思考だけが鮮明になる。
(当たるな)
その一念。
そして。
時間が戻る。
男の拳が、蒼真の頬をかすめて通り過ぎる。
「ほう」
男がわずかに目を細める。
さらに興味が深まったような顔だった。
「やはり、制御できているな」
蒼真の中で確信が固まる。
これはもう、偶然じゃない。
自分の意思で、結果を変えている。
だが同時に、胸の奥に妙な違和感が残る。
何かが削れていくような感覚。
(なんだ、これ)
だが考える暇はない。
男たちが一斉に動いた。
三方向から、同時に迫る。
(無理だ)
一人ならともかく、三人。
しかも全員が能力者。
正面からでは、勝てない。
(それなら)
蒼真は息を吸い込んだ。
恐怖を押し殺す。
(”当たらない”だけじゃない)
視線を鋭くする。
(”当てる”こともできるはずだ)
そのときだった。
ふと、頭の奥に引っかかるものがあった。
男の言葉。
”選別”。
”回収”。
そして。
(実験?)
その可能性が浮かんだ。
もし、そうならこの爆破も。
ただの襲撃じゃない。
蒼真の中で、何かが繋がった。
(こいつら)
ただの敵じゃない。
もっと、厄介な何かだ。
だが、今は考えるな。
生き延びることが先だ。
迫る攻撃。
交錯する殺意。
そのすべてを前にして、蒼真は初めて踏み込んだ。
光が満ちる。
音が消える。
そして、戦いが始まった。