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精神病、薬等の話が出てきます。
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仁人は、病院から帰る時めずらしく足取りが軽かった。処方箋をバッグにしまいながら「これで薬減らせるんだ」って、少し笑顔になっていた。
「やーっと終わりが見えてきた感じするなー」
「よかったな。先生もそう言うんだから大丈夫だろ」
いつもなら診察後はぐったりしてるのに、その日はなんだかルンルンして、帰り道に「コンビニ寄ろうよ」なんて珍しく提案までしていた。
けれど、それはまだ序章だった。
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翌日。
朝ご飯を食べても、昼になっても、仁人は薬を飲まなかった。
いつも朝昼夜飲んでいたのを夜の食後だけにしようということを 先生に言われた通りに守っただけ。
最初は平気だった。
でも夕方が近づくにつれて、手の震えがひどくなって、呼吸も荒くなってきた。
頭の奥でやばい、限界っていう不安が波のように押し寄せてくる。
「……勇斗、くすり……やばい、」
「まだ夕飯前だよ?飲むのは夜って言われたじゃん」
仁人は両手を抱きしめるように震えて、ソファに座った。
心臓がバクバクして、涙が勝手に滲んでくる。
頭も痛い、もう何も考えられない。
「ごめん…、あほんとやばい、ごめん、ごめんなさい」
「仁人……」
勇斗も混乱した。
減薬って先生が言ってたのに、目の前の仁人は今にも壊れそう。
「我慢させたらもっと悪化するんじゃないか」そんな不安が一気に押し寄せる。
「……わかった、ちょっと待ってろ」
勇斗は鍵のかかった薬ケースを開け、震える仁人に抗不安薬を一錠手渡した。
水と一緒に流し込んだ瞬間、仁人はソファに身体を沈めて、数分目を瞑りながら深呼吸していた。
「…落ち着いてきた……」
「ごめんな、ちゃんとした対応わかんなくて。
もう大丈夫だかんな」