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#doublefedora
ゆゆゆゆ
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#Paycheck
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「……いいな、その顔」
チャンスの声が、低く落ちる。
「もうちょいだ」
その一言で、
エリオットの呼吸がわずかに乱れる。
距離は、もうほとんどゼロ。
触れそうで、触れない。
さっきからずっと続いてるその“あと一歩”に、
じわじわ追い詰められていく。
「……っ、じゃあ」
エリオットが踏み込む。
今度こそ、触れるために。
視線を絡めたまま、
逃げずに——まっすぐ。
「これで——」
その瞬間。
ぐい、と腕を引かれる。
「っ……!?」
体勢が一気に崩れる。
視界が揺れて、
気づいた時には背中がソファに押し付けられていた。
上から影が落ちる。
「……遅ぇ」
低い声。
完全に、主導権がひっくり返る。
「な——」
言い返す前に、
「来いって言ったろ」
被せられる。
さっきまでの余裕はもうない。
あるのは、捕まえた側の温度。
エリオットの息が詰まる。
「っ、待——」
言葉の途中で、
奪われた。
今度は、迷いも寸止めもない。
さっきの“雑なキス”とは違う。
逃がさない、深さ。
押し付けるんじゃない。
完全に“引き込まれる”感覚。
「……っ、ん……」
息がうまくできない。
掴まれてる腕も、
逃げようとしても動かない。
「ほら」
一度だけ、ほんの少し離れて。
でもすぐまた距離を詰められる。
「これが“ちゃんと”だ」
低く囁かれる。
余裕なんて一切ない距離で。
「……っ、うるさ……」
言い返そうとしても、
また塞がれる。
今度はさっきより深く。
エリオットの指が、
無意識にチャンスの服を掴む。
さっきまで煽ってた側の余裕なんて、
もうどこにもない。
完全に崩されてる。
「……っ、は……」
やっと離れた時には、
呼吸が乱れてる。
視線も定まらない。
チャンスはそれを見下ろして、
少しだけ息を吐く。
「分かったか?」
低く聞く。
エリオットは一瞬だけ睨もうとして——
できない。
「……っ」
言葉が出ない。
代わりに、顔が熱い。
悔しいのに、
完全にやられてるのが分かる。
チャンスはそのまま、
軽く前髪に触れる。
「最初からこうしとけ」
少しだけ柔らかくなる声。
「変に意地張るから長引くんだよ」
エリオットはしばらく黙って、
それから小さく、
「……誰のせいだと思ってんだよ」
って呟く。
でもその声は、
さっきみたいに尖ってない。
むしろ——少しだけ、甘い。
チャンスは小さく笑って、
「俺だな」
あっさり認める。
その余裕が、また悔しい。
「……ほんとムカつく」
そう言いながらも、
エリオットは視線を逸らさない。
むしろ少しだけ引き寄せるみたいに、
服を掴んだまま。
「もう一回」
ぼそっと言う。
さっきまであんなに拗ねてたのに。
チャンスは一瞬だけ目を細めて、
「命令か?」
「違う」
即答。
でも、少しだけ間を置いて。
「……お願い」
小さく言い直す。
その瞬間、
チャンスの表情が変わる。
「……は、ずるいな」
低く呟いて——
今度は、さっきより少しだけ優しく。
でも逃がさない距離で、
もう一度、引き寄せた。