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辛うじて今の私にはジュプエという友達がいる。友達と読んでも良いのかは分からないけれど。
「まずは教室確認ですわね」
「うん、そうだね」
私はジュプエの言葉に頷きつつ、柱にでかでかと貼られた紙を見る。
「エリアは学籍番号は何ですの?」
「48105」
ジュプエは紙を見つめる。
「あら…奇遇ですわね。同じクラスですわ」
無数の数が並べられた紙からどのように自分の番号を探したのかは分からないが、少なくともジュプエの学籍番号近くにあったのだろうと考える。
「そう。…ところで、教室がどこにあるか分かる?」
「ラステア西棟四階…らしいですわ。ごめんなさい、私には分かりませんわ」
ジュプエは残念そうな顔をするけれど続けて
「でも、クロムに案内して貰うから安心して」
と言った。
「クロム?なにそれ?」
そう問うと、ジュプエは手をくるくるさせ、一つの白い物体を作りあげる。
「これがクロムですわ。学園のキャラクター的存在で、色々有能ですのよ」
ジュプエは私に撫でるよう促す。仕方がなく、そのクロムとか言う物体を撫でてみる。すると、
「コンニチハ、48105。用件ハ何デスカ?」
と喋り出した。驚いて言葉が出なかったどころか、尻餅をついてしまった。
「大丈夫ですの?」
私は差し伸べられた手を取る。
「ありがとう。…これがクロムか…。初めてだな、こういう機械」
「エエ、私ハクロム、コノ学園ノ案内人デス。用件ハソレダケデゴザイマスカ?」
「ううん、もう一つあって…、私の教室まで案内してほしい」
クロムはくるくると回ると、
「了解致シマシタ。ソレデハ用意ヲオ願イ致シマス」
私は用意、が分からずジュプエに目を向ける。
ジュプエはそれが分かっていたかのように既にとあるものを作り出していた。
「それは…?」
「えぇ、それでは乗りましょうか」
私はそっとそれに乗る。
それはゆっくりと浮上し、斜め上を目掛けて地を飛び立つ。
鋭く、柔らかな風が耳元を燻る感覚は生まれて初めてで、足が竦んでしまう。
「すごいね…。こうやって見渡すとこの学園がどれほど広くて、凄いのかがよく分かる」
「フフ、まあ最大級の広さと教育の質の良さを誇る学園ですしそうですわよ」
私は視線を景色からジュプエに変える。
「これだけあると迷いそうだね」
「そうですわね」
「それに、敬語じゃなくてもいいんだよ。なんか堅っ苦しいよ」
「そうね。でも私はいつでも令嬢あるべき姿でないといけないから…」
にこりと微笑むが、どこか悲しそうだった。
「いいじゃん、今だけでも」
「でも、どうしたらいいのかしら」
「そんなの自然体だよ。いちいち考えてらんないし」
ジュプエは少し考えたあと、大きく息を吸う。
「確かに。それもそうだ」
私は思わず笑ってしまう。
「な、なななんか変でしたの?!」
「ううん、そんなことないよ。むしろそっちの方が勇ましくてジュプエに合ってると思うよ」
「じゃあなんで笑ったの…」
恥ずかしそうに頬を染めるとそっぽを向いてしまう。
「ふーん、そうなんだ。ジュプエ、ツンデレだね。本当は嬉しいのにツンツンしちゃって」
「もー!なんなんですの!」
しばらく二人顔を見合わせ、アハハッと笑い合う。
「はーもう、エリアってそんな子だったのね、次笑ったら殴るからね!」
怒ってる風に言っているが声のトーンが高く、嬉しそうだ。
「フフ、殴れるもんなら殴ってみ!」
「本当ー?」
にやにやしつつ私に問う。
「勿論に決まってるよ!」
私は元気よく答えた時、私達を乗せるものは地に向かって降下していく。
「…あれ、もしかして着いた?」
「そうみたい」
クロムに視線を向ける。
「モウスグデラステア西棟二到着致シマス」
「じゃあ、準備をしなくちゃね」
「そうね」
私達は準備を進める。
「そういえば、私達を乗せてるこれってなんて言うの?」
「これは教室移動等で使ったりする。この学園内でしか使えなくて、ブリードと呼ばれる」
敬語を外し、慣れない口調で話すジェプエが微笑ましく、笑わないように微笑みながら私は見上げる。
「そうなんだね。これって特定の働きで作り出せる?」
「えぇ。あとで教えてあげるよ」
やっぱり堪えきれず、俯く。
「もー、早く慣れてよ」
「そうは思ってるけど…」
「オ二人様、到着致シマシタ。ラステア西棟デゴザイマス」
クロムはゆっくりと地に降り、私達に話しかけた。
「そうだな」
「そうだね、意外と色々な植物が植えられているんだね地球産のもある」
「物知りなんだね。ここではほぼ全種類の植物が管理されているよ」
ジェプエは小さな建物に指を差す。あれがジュプエが言う、管理している建物なのかな。
「へぇ、今度見てみようかな」
「それもいいかもね」
後ろにいたクロムはシュッと溶け、地面に浸透していく。
「おー!ジュプエ!!久しぶりだな!!!」
急に後ろから声がしてクルッと振り返る。どうやらジュプエの友達らしい。
「あら、ルザネ。お久しぶりですわ」
「えっと…隣にいる子は?」
「エリアよ。転校生だから優しくしてあげなさいな」
「よろしく、ルザネさん」
とりあえず、よろしくの意で手を差し出す。
「ああ、エリアよろしくな!」