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私はジュプエとルザネに引かれて教室へ向かう。
「四階まで登るのって…。随分大変だね……」
私はそう、呟いた。
「でも慣れたらそんなんでもないですわ。私体力には自信がありますもの」
大きな扉を開け、教室へ入る。
「敬語はなしでって私、言わなかったっけ」
ムッとしながら言ってみる。するとルザネが目を輝かせて
「え、まじ?ジュプエの敬語なしバージョン聞いてみたいかも」
と言った。ジュプエは私を睨み、「仕方がないですわ」と呟く。
「まあ、新学期だからいい機会ではあるかもしれないが……」
「へー、ジュプエって敬語なしだとこんなに雰囲気変わるんだね。いいじゃん、飛び級で四年来たの俺等だけだし」
私は一つ、引っ掛かるところがありスッと静かになる。
「もしかして…私より年下?」
グラッと視界が揺れ、ザワザワと雑音がデカくなる。
「エリアが14ならそうだな。私は13だ」
「俺も」
私はそれを聞き、何だか血の気が引く。
「そう……」
「でもエリア、気にすることないぜ。俺とジュプエは塾行ってたもんな」
「ああ」
私は、ずっと同い年だと思っていた。
ああ、そうか、そうだよな。
私が前通っていた学校はレベルが低かった。ここは、違う。毎年中央役員試験に合格者が出るような所だ。
「ジュプエ達は……。中央役員試験とか受けるの?」
「私の父方の祖父が中央役員会の委員長でな。私はそこを目指している」
中央役員会とは各州の警備を取り締まったり旅人等の管理をしている所だ。役員会としては最高権力の場所。
「凄いね……」
「俺は、警備役員会に入りたいかな」
ルザネはそう呟いた。
「エリアは?どこか入りたい所はあるの?」
ルザネにそう聞かれ、ああ、と私は思い出す。
「私は…、薬品研究部かな」
「そうか。珍しいな」
ジュプエはそう言って笑う。
まあ確かに薬品研究部はいつも人手不足で有名だが仕事は素晴らしいと私は思っている。
ルザネは窓辺の席に座り、ジュプエがその隣に座ったので私もジュプエの隣に座る。
「授業は…。何があるの?」
「色々。今日は初回だからそんなにやることはないと思うよ」
私はそっか、と思い自己紹介を考える。
どんなのがいいのだろうか? まあ、そんなに友達を作る予定もないし、適当でいいだろう。
「自己紹介とかって、するよね?」
「あぁそうだな。どんな形式で自己紹介をするのかが楽しみだ」
私は授業が開始するまでジュプエ達と他愛ない会話をして楽しんだ。
授業の開始を告げる鐘が鳴り、周りは静かになる。
前の方に位置する扉が開きコツコツとハイヒールの音がなる。
スッと音が止み前方の教壇に目をやると、小柄の女性が立っていた。
「お早うございます。本日から、四級生ですね」
なんだか何処かで見たことがある顔だ。
「知らない方もいるでしょう、私はゼレナ・グラーツェルと言います。現中央役員会委員長の秘書です」
あぁと思い、いつか見た新聞のニュースを思い出す。
『中央役員会、異次元の調査を宣言。中央役員会委員長秘書ゼレナ・グラーツェル氏は、先日遠方調査団が発表した南の未開拓地が、昔に蔓延した病気に関連があると調査を開始させるとの事。研究団、その他の組織と手を組む異次元の調査だそうだ』
あれから進展はあったのだろうか。私は少し気になったが後で聞けばよいと思いゼレナの話に耳を戻す。
「私は授業の日を除いて研究を執り行っています。質問のある方はその日の内に済ませる事をおすすめします」
ゼレナは手元の書類に書き込みながらそう言った。多分出席の有無だろう。
「では、まず最初にグループを作りましょう。ここで作ったグループは半年ずっとです、仲良くなることを心掛けて」
私は心の中でジュプエ達と一緒になりますように、と願った。
「グループの紙は前に貼りますので後で見に来るように。明日からその位置の席に座ってください」
黒板の端に2枚ほど貼る。ゼレナは皆の表情を見て頷き、教壇から大量のプリントを取り出す。
「これは課題。暫くはこれを軸に進めていきますので忘れぬように。…提出がなかった場合、選択見学に行けないので肝に銘じて」
(選択見学?)
私は隣のジュプエに聞く。
(私には分からないが……。例年通りなら各役員会を見学出来るんじゃないか?)
(なるほど…)
私は頭の中に役員会を思い浮かべる。
中央役員会、警備役員会、納税管理会、外交管理会、情報管理役員会、遠方調査団、研究団……。
他にもあった気はしなくもないがまぁ後で思い出せばいい。
プリントが後ろから配られる。
タイトルには『役員会について』と書いてあり、どうやら興味の持った役員会を調べるらしい。
「内容は見ての通りです。授業を通して興味を持った役員会を詳しく調べてきてください。次回の授業は…役員会の鉄板、中央役員会についてです」
ゼレナはフッと口角を上げると同時に紙を勢いよく机に叩きつける。
「では本日の授業はここまで。次回から本格的に始まります。授業のリスト等は次回の朝礼に配ります」
それだけ言うとゼレナは教室から去った。
「案外と、さっぱりしてた」
「そうだな。ゼレナ先生は忙しいからな」
ジュプエは時間に厳しくて怖いんだよな、と小さく呟いていた。
「そうだ、帰る前に学食に寄らない?」
ルザネの提案を聞き私はジュプエに視線を向ける。
「いいと思う。…エリアは知らないだろうからちゃんと案内するぞ」
「よろしく」
私達は荷物をまとめ、教室をあとにした。