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「そうだよ…」
遥香は怒られると思ったらしく、僕の目をまともに見れないでいた。
「そうか……遥香だったのか…」
「ごめんなさい…」
「遥香…謝る事なんてないよ」
「えっ…怒ってないの?」
「もちろん、怒る訳ないだろ。感謝してるくらいだ。本当にありがとう」
僕は遥香の頬に優しく手をあてた。
すると遥香は僕の手の上に傷だらけの手を重ねてきた。
震えていた…。
涙が僕の手に伝ってくるのがわかった。
この日が来るまで、ずっと恐怖や不安と闘っていたのだろう。
そして今日、とてつもなく怖い思いをしたのだろう。
「はるちゃん、ゴメンね。私のせいで、こんな危険な目にあわせちゃって。一歩間違ったら命を落とし兼ねなかったんだから…。やっぱり止めるべきだった…」
「いいの、気にしないで…。お姉ちゃんたちを救うのは私にしか出来ない、私の命懸けの使命なんだから」
「はるちゃん、ありがとう…」
茉奈ちゃんは遥香が横になっているソファーのすぐ傍で泣き崩れていた。
すると美咲さんは、そんな茉奈ちゃんの肩を抱いてあげていた。
「パパ…私ちょっと疲れちゃった…。このまま寝てもいい?」
「いいよ、ゆっくり眠りなさい。後でベッドまで運んであげるから」
「Zzz……Zzz……」
僕の言葉を聞く間もなく眠りに落ちたようだ。
それから遥香は死んだように眠っていた。
今日は遥香の誕生日だけど、これではパーティーどころではなかった。
また、日を改めて誕生日を祝ってあげようと思った。
「紺野くん、これからどうする?」
「こうして美咲さんが、せっかくご馳走を作ってくれた事だし、茉奈ちゃんも来てくれたんだから、みんなで食事をしよう。パーティーは遥香の体力が回復した後に、改めてやるとしよう」
「そうね」
そういえば、遥香の誕生日となると毎年必ず送られてきたバースデーケーキとプレゼント…
何故か今日は届かなかった。
遥香が知ったら、きっとガッカリするだろう。
「ところで茉奈ちゃんは、何歳になったの?」
「25歳になりました」
「そんなになったの? あの茉奈ちゃんが…。病院であった時はこんなに小さかったのに」
あの頃の茉奈ちゃんは、僕の腰くらいの身長しかなかった。
「私は、高校生の瑛太お兄ちゃんがすっごく大きく見えました。それにすごくカッコ良かったですよ」