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お母さんに話したら、だいぶ落ち着いた。
離婚は最後の手段にしようと決めた。
「じゃ、仕事行ってくるね!うちにいるならいてもいいよ」
「あの人がいないなら、泊まってく」
「じゃ、ご馳走作らないとね、行ってきます」
もしかしたらこのまま帰らないかもしれないと思って、置き手紙も残してきた。
[健二へ
しばらく実家へ帰ります。理由はわかってると思います]
マリの寝言のことだとわかるだろうけど、まさかスマホの中身まで見たとは思わないだろうな。
LINEのことは、当分黙っていることにしよう。
何かの時にとっておく。
必殺技としとこう。
「翔太、ちょっと、くるみちゃんママとお話ししてもいい?」
「うん、じゃあ、テレビみてる」
テレビにDVDをセットして、翔太から少し離れたところで千夏に電話する。
「もしもし?千夏さん?」
『おはよう!どした?』
「うちの旦那のLINE、スクショした」
『え?やっぱり浮気してたの?』
「うん、でも、子どももいるからもう少しおとなしくしておくことにしたの。それより、今度の日曜日、何時に行く?」
千夏の夫、圭佑の不倫相手を見に行く約束。
『胡桃を預けてだから、お昼くらいかな?』
「じゃ、私も翔太を預けて、それくらいに行くことにする。現地集合?」
『了解』
「もう一回、お店の情報を送っといて」
『さらに了解』
ぴこん🎶
とLINEで地図とお店の外観が届いた。
21歳の女子大生。
写真で見る限りは、いいとこのお嬢さんなんだけど。
パパ活なんて、なんでやってるんだろ?お金なのかな?
「おかあちゃん、テレビおわったぁ」
「あ、翔太、今日はばぁばのおうちにお泊まりするよ。晩ご飯はなにがいい?」
「カレー!おほしさまの」
「わかった、じゃ、買い物行こうか」
カレーを作って、お風呂も用意した頃、ピンポン♪と玄関チャイムが鳴った。
モニターを見たら、健二だった。
「あ、おとうちゃんだ、おとうちゃん!」
玄関に向かって走っていく翔太。
「翔太、ちょっと待って!ねぇ!」
翔太は玄関で待っていた。
「綾菜、ここ開けて、話を聞いて!」
「近所に恥ずかしいから、大きな声出さないで、もうっ!」
とりあえず鍵を開けた。
「よかった、入れてくれないかと思った」
「何しにきたの?」
「迎えに来たんだよ、翔太と綾菜を」
「どうして?」
「いやっ、どうしてって、その…誤解してるみたいだからさ、ちゃんと説明したいと思って」
部屋に戻る私の後を追って、そのままリビングまで入ってくる。
「誤解?何を?私が何を誤解してると?」
「あの寝言のことだよ、その…マリちゃんと言ったとか言わなかったとか…」
「言ったよ、たしかに。それが誤解なの?」
「そうだよ、ホントに寝言なんだからさ。夢で昔の…学生時代の、なんかそんな夢見てたからさ」
ぽりぽりと頭をかきながら、あたふたと説明している。
どうしても寝言だということで済ませたいらしい。
その態度に腹が立つ。
仕方ない、必殺技を出すか。
「母親に進化した私は女としては退化してるんだったっけ?」
「え……?!」
「誤解かぁ。でもまぁ、離婚訴訟起こしたらこちらの有利なネタでは、ある」
「……見たのか?」
顔色が変わった。
心なしか手が震えている。
「誤解なんでしょ?毎日でもマリちゃんを抱きたいとか。あれはどんな誤解なのか教えてほしいんだけど」
「どうやって!?まさか、パスワードがわかったのか?」
「まぁね、それくらいは推測できるわよ、私にだって」
本当はパスワードじゃないけど。
健二のスマホはパスワードと指紋認証の両方が設定してあるのに、本人はそのことを忘れてるようだ。
「あー、あれ?あれはさぁ、ほら、あの…」
どんな言い訳をしてくる?
しばらくの間。
「ごめんなさい!許してください!ずっと前に一度だけ、酔った勢いでその…だから、あれは事故のようなもので、そのあとも酔った勢いでのやり取りが残ってた…んじゃないかな?そうだよ、本気でやましいやり取りだったら即削除するけどしてなかったってことはさ、そんなやましくないんだよ、ね」
勢いよくしゃがみ、床に頭をこすりつけての土下座。
「…で?」
「だから、あれはホント事故だって。だから、出来事としても認識してないくらいでさ、昔酔っ払ってのことだし、誘ってきたのは向こうだし…俺は結婚してるからって断ったんだけどさ、酔ってて…」
顔を真っ赤にして、よくわからない言い訳を並べ立ててる。
今時のお笑い芸人でも、ここまで激しい土下座と言い訳はしないだろう。
我が夫ながら
「情けない…」
思わず情けなさすぎて、そこだけが言葉として口からこぼれた。
「あ?うん、情けないよね?俺、どんだけ酒に弱いんだって話だよ」
私はあのやり取りを全部見たし、日付も入っていてそれをスクショしているのに、この人はなんでこんなに言い訳ばかりしてるんだろう?
ずっと前?なんのことなんだろ?
怒りと同時に、わけがわからない言い訳で、思考がストップした。
「ただいま!」
「あっ、ばぁばがかえってきた!」
翔太が玄関に走っていく。
「あ、ら…健二君きてたの?」
少し間の抜けた感じのお母さんが入ってきた。