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瀬名 紫陽花
コメント
1件
読ませていただきました!第3話、めちゃくちゃ楽しかったです〜🖤 人間界に来たはいいけど、誰にも見えなくて、しかも帰り道も分からなくなっちゃうクロたちのドタバタが可愛いすぎます。「居眠りしてた」ってオチ、笑っちゃいました。でも一番グッときたのは、ゴミ捨て場の付喪神たちとの交流。最初はケンカ腰だったのに、お化けパソコンの文字化けを一緒に解読して、自然と仲良くなっていく流れが好きです。「戦いの後に芽生える友情」って言い切るウルフと、「そうでしょうか?」と首を傾げる花子の温度差もいいですね〜。次、ちゃんと帰れるのかな?続きが気になります🌷
妖魔ロードの中は薄暗かった。何もかもが灰色で、どっちが上でどっちが前なのかもよくわからないほどだ。自分たちが前に進んでいるのか落っこちているのかさえ、はっきりしない。だけど、急に辺りが明るくなった。妖魔ロードの出口から、空中に放り出されたのだ。
「ひゃわあああああああああああああ」
長い悲鳴の後で、ベシャッと地面にぶつかる。妖怪でなかったら、ぺしゃんこに潰れていたかもしれない。
「ああ、びっくりした。花ちゃん、大丈夫?」
「……はい」
クロは花子を下ろして周りを見渡す。
「へえ、ここが人間の世界かあ」
「は、早くどいてよ〜、クロくん〜」
一番下になっているウルフが唸った。
「おっと、ごめん」
慌てて彼の上から降りた。
人間界は、四角くて大きな建物がいくつもいくつも並んでいる。クロたちは、その建物と建物の間に現れた。広い道に出ると、人間がたくさん歩いている。
「どこに行けば、アイドルになれるんだろうね?」
ウルフが首を傾げる。
「尋ねてみればいいんだよ」
そこにいる人間に近づいて、声をかけた。
「ねえねえ。俺たち、今大人気の妖怪なんだけど?テレビとかに出られるとこまで、連れていってもらえない?」
だが人間はクロを見もせずに、スタスタ歩いていってしまう。
「あれ、なんでだ?妖怪は人気があるはずなのに?もしもし?」
何人に声をかけても、まるで返事をしてくれない。
「……もしかして……私たちが見えてないのかも……」
「えっ、そうなのかい?」
驚いた彼が、花子を振り返る。その途端に、人間がどしんとクロにぶつかった。その人間は自分が何にぶつかったのか分からない様子で、キョロキョロしている。
「……やっぱり見えてない……です」
人間の目の前にひらひらと手を振ってみて反応がないのを確かめてから、彼女が断言した。
「はっ!思い出した!そういえば死神学校の授業で、『人間に姿を見せる術』ってのがあった」
「それだ〜。それを使おうよ、クロくん!」
「そうだな!だけど、俺はその授業居眠りしてた!」
思わず、ずっこけるウルフと花子。
「大丈夫。死神学校に戻って、それだけ習ってこよう」
「う、うん、そうだね。それがいいんじゃないかな?」
「じゃあ、早速妖界に戻……」
振り返ったところで、クロの動きがぴたりと止まった。
「俺たち、どっちから来たっけ?ウルフ、匂いで分からない?」
「う、うん。試して……へーっくしょん!だ、ダメだー」
狼男の鼻は、犬よりも鋭い。鋭すぎて、刺激に弱い。人間界の妖界にはない悪い匂いで、もうウルフは涙目だ。
「クロくん。……先輩の死神とか……他の妖怪が……人間界に……来てない?」
「なるほど!探し出して、帰り道を聞けばいいのか!」
クロは深く考えずに、適当に歩き出した。そのうち、たまたま出くわしたりしないかなあと期待する。
やがて夜になった。月が出ないことに、彼は安心する。狼男のウルフは、月を見ると暴れ者になってしまう。しかも本人は、そのことを覚えていない。
周りが暗くなるとクロたちがぼんやり見える人間もいたけれど、みんな驚いて逃げるばかりだ。
「俺たち、きゃあきゃあ言われてるよ。やっぱりアイドルなんだ」
クロは逃げる人間の背中を見て、大喜びに言った。
「そうかなあ。怖がられてるような気がするんだけど?」
やがて真夜中を過ぎた頃、花子が提案する。
「どこかで……ちょっと休憩しません……か?」
「そうだな。ちょっとドクロスナックが食べたくなったんだ」
「持ってきてたの?あんなカライもの、死神しか食べられないよ」
「そうか?美味しいぞ?おっ、あそこなんかいいんじゃないか?なんか死神学校の屋上に似てるしねー」
クロが見つけたのは、粗大ゴミの捨て場だった。壊れた机、ドアの取れた冷蔵庫、電気ガマなんかが積み上げられている。
三人がゴミ捨て場に入り込むと、いきなり怒鳴られた。
「こらああああああっ!ここはあたしらの縄張りようっ!」
怒鳴った手足の生えた電気ガマに続いて、周りのゴミがゾロゾロと起き上がってきたではないか。
「あたしたちは、このゴミ捨て場に住む付喪神よ」
電気ガマが言う。
付喪神は、長い間使われた道具に魂が宿ったものだ。妖怪の一種だが、妖界に渡らず生まれた人間界に住んでいることが多い。
「リーダーはお化けパソコンのキューハチローさまよ。勝手に入り込んできたあなたを尋問するわよん」
古いテレビそっくりの付喪神が、ふんぞり返って前に出てきた。スピーカーが壊れているので、モニター画面に言葉を映して話しかけてくる。
「やい、小僧ども。どこからきよったんや?」
「なんだよう、偉そうにさあ。その態度はないだろ」
クロはツンとそっぽを向いた。
「妖界から来ましたあ」
ウルフが丁寧に頭を下げる。
「おい、ウルフ〜」
「……クロさん……他の妖怪を……探してたんですから……」
か細い声で花子に言われて、やっと気がついた。
「そうだった!お化けパソコンのおっちゃん。この辺に妖魔ロードがあるか教えてくれたら、さっきの態度は許しちゃうぜ」
「許すて、お前。最初に無断侵入したのはそっちや」
「うぅ、細かいこと言うなあ」
「細かくないと思うよ、クロくん」
「だいたい、なんで探してんねん?」
少し、お化けパソコンも柔らかい口調になる。
「僕たち道に迷っちゃって……なんとか妖界に帰りたいんです」
「なんや、迷子か。妖魔ロードのありかを教えたる。けど、覚悟せえよ。近くの妖魔ロードは、魔界とも繋がってるらしいで。そこから魔物がやってきて、付喪神を攫っていっとるゆう噂があるねん」
クロたちは顔を見合わせた。
「攫っていくって、なんでそんなことしてるんだ?」
「そんなん知らんわ。ほんで妖魔ロードの場所やけどな……」
突然お化けパソコンの画面が、訳のわからない字で埋め尽くされてまう。すっかり止まる。
「どっ、どうしちゃったの?」
「お化けパソコン様も古いから……」
電気ガマが進み出てきて、ため息をつく。
「時々文字化けを起こすのよ。お化けだから当たり前だけど」
「うーん、なんて書いてあるんだ?妖魔ロードはどこにある?」
なんとか解読に試みると、ようやく読むことができた。
「……ふう、やっと妖魔ロードの場所がわかったよ」
クロが言うと、付喪神は一斉に拍手する。みんなで知恵を絞るうちに、仲良くなっていた。
「これが戦いの後に芽生える友情ってものなんだね!」
感激した様子で、ウルフが言う。
「……そうでしょうか?」
花子が首を傾げる。
明るくなると、また人間たちが動き出す。クロたちは、早速出発することにした。