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コアラと木の実
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(目黒視点)
この世界は、不平等にできているらしい。
何をしても許される人間と何をしても許されない人間がいるらしい。
顔が良ければ許される芸能界、勉強ができれば地位が高くなる社会。
顔が良ければ、性格が悪くても、勉強ができなくても許されるらしい。
勉強ができれば、顔も性格も関係ないらしい。
こんな理不尽な世界で俺は生きてる。
「目黒くんって、もしかして昔子役とかやってたの?」
「……え?」
クラスの数人の女子から声をかけられた。
子役……何で急にそんなこと聞くんだろう?
「目黒くんってすごい顔いいし…」
「イケメンの中のイケメンだし…」
「これ、目黒くんだよね?!」
モジモジしながらそんなことを言う女子達。
見せられたスマホの画面に映るのは、少し前のドラマの切り抜きだった。
消えた天才子役の最後の演技………
画面の中に映るのは小さい少年だった。
目に涙を溜めて、何かを伝えようとしてる。
『僕は……嫌なんです……』
大人たちに混ざって必死に食らいつこうとしてる。
天才、か…
「……人違いじゃないかな?」
スマホに映っている情報をしっかり記憶して、やんわり伝える。
「え?で、でも、このドラマの役者さんの名前に…」
「同姓同名なだけだと思う」
しつこいな…
「もし本当に目黒くんが子役なら、私目黒くんの演技見たいなぁって…」
「………」
もう二度と演技なんてしない。
そう決めてるんだけどな……
「はい、ストップ。めめ、お昼食べに行こ!」
「……ラウ…」
「「「ラウールくんっ!!!?///」」」
いつの間にか後ろにいたらしいラウが声をかけてくれる。
やっと、終わってくれた。
「ラウ、ありがと」
「いえいえ、めめ、困っちゃってたでしょ?」
ラウと一緒にいつも秘密基地に向かう。
多分、康二も待ってるはず。
……ラウも、俺と同じ悩みを持ってる。
俺もラウも、常にルックスで評価されてきた。
ルックスで評価される芸能界を、俺らは生きてた。
(向井視点)
「まるで夢を見てるような〜♪無重力な感覚〜♪」
歌を歌いながら目黒くんとラウールくんを待つ。
佐久間先輩のアドバイスもあって、最近は堂々と歌えるようになった!
すごい成長できてるんちゃう?笑
「目の前がぼやけていく〜♪」
2人とも、早く来ないかな〜…
「康二くん、元気に歌ってるね!」
「康二、待たせた?」
「!ラウールくん!目黒くん!!」
「康二、今日はパンなんだ」
「んむ?今日は朝バタバタして時間なかったんよ〜、笑」
さすがの目黒くんはいつも俺のお弁当に興味を示してる。
いつもならおかずを2人に分けたりするけど、今日はできへんかなぁ…
「そういえば、目黒くんとラウールくんはお弁当持たんよね?」
2人はいつも購買でご飯買ってるよな。
「俺は朝起きてお弁当作りたくないんだよね〜、笑」
「俺も」
「そうなん!!?」
朝早く起きたくないだけなん!?
「2人はご両親と一緒に住んでるんやろ?」
「そうだけど、俺の家は朝早くから仕事だからね」
「俺も〜!………え?康二くんは?」
ラウールくんが驚いたように俺を見る。
「俺は一人暮らしやで?」
「え!!?嘘!!?めめ、知ってた!?」
「うん」
「俺だけ知らなかったってことじゃん!」
納得いかないって少しだけ拗ねるラウールくんに笑みがこぼれた。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴って2人と別れる。
やっぱり、2人と一緒にいるときがいっちばん楽しい…!
そんなことを思いながらスマホを開く。
「……?」
掲示板に新しい書き込み?
「……え?」
“目黒蓮、消えた元天才子役説“……?
何やこれ?
目黒くんに関する噂?
投稿されたのはついさっきのことで、もちろん誰が書き込んだのかはわからない。
目黒くんは学校の有名人やから、いくらでも噂は存在してる。
彼女いる説、元カノの人数が2桁はいる説、甘いものが好き説、好きな女の子のタイプ…全部嘘でしかない噂ばっかやったけどな。
でも、これだけは異質な感じがして、ついその書き込みに指が触れた。
『目黒蓮、消えた天才子役説 投稿者:みんなの秘密を暴き隊
この学校のイケメンといえば誰が思い浮かぶだろう?
爽やかイケメン生徒会長、阿部亮平。硬派イケメン風紀委員長、岩本照など、代表的なイケメンが思い浮かぶかもしれない。
その中で、やはり思い浮かぶのは彼だろう。
生徒会1年、目黒蓮』
上手い引き込み方やなって思いながらスワイプの手を進める。
『まずは何も言わずにこの動画を見て欲しい。
これを見れば、きっとみんなもわかるだろう。』
その下に貼り付けてあるURLをクリック。
出てきたのはショート動画。
消えた天才子役の最後の演技……?
『僕は……嫌なんです……』
その一言から始まる演技。
小さな男の子の演技に引き込まれる。
表情管理も台詞読みも、子供だとは思えない演技。
確かに天才子役っていうのはわかるかも知らんな。
『僕は、僕は……!!そんなことしたくないんです!!!』
そこで動画は終わった。
これが最後の演技…?
動画が終わって、また掲示板に戻る。
まだ文章は続いてる。
『お分かりだろうか?この少年、かつて天才子役と呼ばれた少年。
目黒蓮ではないだろうか。
幼さはあるが、あの国宝級イケメンとよく似ている。
そして、このドラマに出演している役者の方々の名前を見てほしい。
先程の少年の役者、目黒蓮と記されている。』
「………!」
ほんとに、目黒くんの名前がある…
でも、同姓同名なだけかも…
でもでも、確かに顔は似てるかもやし……
……って、閲覧数600以上…!!!?
学校の3分の2の人が見てるやん!!!
そんなにこの噂は広がってるん…?
目黒くん、こういう噂されるのあんま好きやないって言ってた…
これ、嘘か本当か置いておいて大丈夫なんかな…?
(目黒視点)
芸能界っていうのは俺にとっては生きにくい世界だった。
子役としてその世界に足を踏み入れたのは5歳くらいの時だった。
周りが言うには、俺は顔がいいらしい。
親が子供も出れる番組にたまたま応募して、たまたまそれが当たって、たまたまそれが有名な事務所の社長さんに見つかっただけだった。
演技は、楽しかったとは思ってる。
俺よりもすごい人がすごい演技をしてる。
俺はそれに追いつくように努力する。
年齢なんて関係ない、競争相手みたいなものだった。
それは、すごい楽しかった。
……でも、生きにくかった。
「………蓮くん、もうちょっとカメラ目線いけるかな?」
「え?」
「蓮く〜ん、こっち見てね〜」
生きづらさを感じ始めたのは、撮影に慣れ始めた6歳の頃だった。
撮影中、カメラマンさんとマネージャーさんに声をかけられた。
このタイミングでカメラ目線なんて変だ。
このシーンは相手に自分の強い意志を伝えるシーン。
相手のことをしっかり見ないといけないのに…
でも、ここで断ったら撮影が進まなくなって、周りの人に迷惑をかけるかもしれない。
だから、違和感を感じながら指示には従った。
初めて、大人と俺自身のズレを感じた。
ラウと出会ったのは7歳の頃だった。
今をときめく若者の何とかみたいな番組に共演したのが初対面。
俺は天才子役、ラウは天性のモデルとして出会った。
隣でニコニコ笑いながら大人たちの求める通りの答えを出す。
そんなラウを見て、俺も求められてるであろう答えを出す。
すごい、嫌だった。
「…… 目黒くん、だったよね?」
撮影が終わった後、ラウに声をかけられた。
マネージャーさんに見つからないように腕を引かれて静かな場所に連れてかれる。
ニコニコ笑ってた可愛い天性のモデルとは一変。
真剣な顔で俺のことを見つめてた。
「芸能界って、すごい理不尽だよね」
ラウの一言が、俺の何ともいえない生きづらさに名前をつけてくれた。
ラウは顔も良くて、スタイルも良くて、頭も良かった。
だからこそ、この芸能界の理不尽さ、不平等さに早く気付いたんだ。
俺は感覚で気付いただけだったから、名前も何もつけられてなかった。
ラウと俺だけが、この世界の生きにくさを感じてた。
「子役はいいよね。セリフがちょっと読めるくらいでもてはやされるんだから」
そんなことを言われたのが8歳の頃。
共演していた役者さんの声を偶然聞いてしまった。
「しかも顔がいいから、カメラはその子ばっか追うしね」
「努力してる私たちが馬鹿みたいになってくる」
「…………」
セリフがちょっと読めるくらい…
俺は、共演者さんにもそう思われてたんだな。
実力なんて、全然足りれない…
「……おはようございます」
「あ……れ、蓮くん、!おはよう!」
「今日もよろしくね!」
俺が挨拶すると、すぐに笑顔に切り替える。
こんなところでも演技しなくていいのに。
「………一緒に逃げよう」
少しだけ時間が経った10歳の頃。
言い始めたのは俺だった。
こんな腐ったような世界から抜け出したかった。
こんな場所にいたら、俺らもきっと腐る。
ラウの手を取って、こんな場所から逃げ出そうって。
ラウも頷いて、俺らは一緒に逃げ出した。
その時点で受けていた仕事を最後に、俺は一切の仕事を受け付けない。
世間は俺らのことを“消えた“って言った。
でも、俺らの感覚は違う。
“消えた“んじゃない、“逃げた“んだよ。
“天才“なんて言う肩書きは俺には必要ない。
俺が、俺らが見て欲しかったのは顔でもスタイルでも何でもない。
本当に見て欲しかったのは、俺らの“努力“だ。
俺らの努力を、平等に評価して欲しかった。
過去のことを思い出すのは何年ぶりだろう。
俺は、過去はあんまり見ないようにしてる。
それこそ、あんな腐り切った世界のことを思い出すなんて思いもしなかった。
……あの時の選択は正しかったと思ってる。
あの日、一緒に逃げたからこそ“今“を笑って過ごせる。
2人きりだった世界に、康二も一緒になって…
大切なものが増えたから、良かったって思えてる。
「………え?」
次の日の昼休み。
目の前にはありえない光景が広がってた。
いつも通り、ラウと一緒に秘密基地に来ただけ。
なのに、どうして……
「ほんとに目黒くんとラウールくんだ!!」
「昼休み、2人で何してるんだろうって思ったら…!」
「こんなとこにいたんだ〜!!」
一気に集まるたくさんの女子からの視線。
どう言うことなのか分からずに、俺とラウは顔を見合わせる。
康二がこの場所を誰かに話すわけない。
なら、どうして…?
(向井視点)
「自由の空に今羽ばたくドリーマー♪」
目黒くんとラウールくん、もう来とるかな?
口ずさみながらいつもの場所に向かう。
今日は2人に分ける用の唐揚げを作ってきたから早く一緒に食べたい!
「……?」
いつもの場所に向かう最中、やけに人が多い。
おかしい。
いつもこんな場所に人なんておらんのに…
違和感を持ちながら2人の場所に向かう。
「………え?」
いつもの場所には、大量の女子達。
その中心にいるのは…
「目黒くん…ラウールくん……?」
2人とも、困った顔しとる……
助けないと…
そう思って体を前に動かす。
「すんません、ちょっと通して…!」
なかなか前に進めへん…!!
何なんこれ!?一体どうなってるん…!!?
「通してくださいっ…!!ぅあっ!」
俺の声には誰も反応してくれない。
キャーキャー言いながら、俺のことを外に押し出す。
その拍子で、俺は転んであっという間に輪の外に…
もう、2人の顔が見えないくらいに遠くに転んで……
「………っ!康二…!」
「…め、ぐろくん…?」
かすかに、目黒くんの声が聞こえた気がしたけど、すぐに群衆にかき消される。
なんで……何で、こんななってるん…?
嫌な予感がして、恐る恐るスマホを取り出す。
学校の、掲示板……
『秘密の場所が明らかに 〜1年のイケメンの隠れ家はここに〜』
「………」
ご丁寧にサブタイトルまでつけられた新しい投稿…
投稿者……
『みんなの秘密を暴き隊』
無意識に、強くスマホを握りしめてた。
……許せない…
ここは、俺たち“3人だけ“の秘密の場所…
目黒くんとラウールくんが唯一素でいられる場所。
なのに……!!!
絶対、特定したる……
まずは、何とか2人を助けないと…
この女子の波を一気に抑えられるような人……
生徒会長?風紀委員長…?
だめや、2人とも話したことなんてない…
佐久間先輩と渡辺先輩だって2人の時間があるやろうし……
誰か、この状況をかっさらっていけるような人……
「………あ」
スマホの数少ないトーク画面。
目に止まった人……
出てくれるんかな…?
不安でも、やるしかない。
息を吐いて、通話ボタンを押す。
(深澤視点)
布団に包まれて夢を見て〜…
二度寝、さいこ〜…♡
「………ん〜…あ…それ、やばぃ…」
『テレテレテレテレテン♪』
「んにっ……?!」
電話……?
目覚ましよりも大きい音に意識が現実に戻される。
何だよこんな時間に…ってか、もう昼か!わら
で、俺の二度寝を邪魔するのは誰よ?
照かな〜?
「……え?康二?」
通話画面に表示された名前は康二だった。
康二から電話?珍しいな…
「もしもし?ふっかで〜s
『…っ深澤先輩!!!助けて……!!!!』
通話ボタンを押してから1秒、俺の声を遮った康二の焦った声。
助けて…?
何かやばいことに巻き込まれた?
「康二?どうした?大丈夫?」
明らかに異常な気配を感じて、そう声をかける。
危ないこととかに巻き込まれてないよね…?
『い、今すぐ学校来れますか!!?』
「え…?今から……?」
俺、すんごい寝巻きで寝癖もやばいわよ?
『お願いします!助けて…!!!』
「………」
康二の悲鳴に近い声が響く。
可愛い後輩のお願いだしなぁ……
「10分だけ、時間ちょーだいね」
それだけ言って電話を切る。
さて、準備しますか…!
いつもよりもちょっと緩いけど、何とか最低限の準備を終えて学校まで走る。
普通の道じゃ信号に捕まっちゃうかなぁ……
となると、裏道!!
軽く塀を飛び越えて、近道を通る。
約束の10分まであと5分か…
とっくに閉まってる校門を飛び越えてっと!
ナイス着地、さすが俺!!
って、自画自賛しながら康二に教えてもらった場所まで走る。
滑るように階段を上がって……
お!だんだん人の波が見えてきたぞ!!
あ〜…確かに厄介なことになってんね〜…
中心にいるのは、目黒とラウールじゃん!!
なるほどなるほど、そう言うことならお任せをっと!
「わ〜、すごい人集まってんね〜!何の騒ぎ?わら」
面白いことに、俺の一声で全女子が振り返る。
これで視線は俺のものっと…
あとやるべきことは…
「う〜ん、たまたま俺に出会えちゃったラッキーなみんなに朗報!今から俺を捕まえられた子にはちょっとしたサービスがあるよん♪」
ウィンクなんていうファンサも入れて、一気に興味を燃え上がらせる。
あの深澤先輩からの挑戦状よ?乗らないわけないじゃん!!
「深澤先輩がどうしてここに…!!?」
「サービスって何だろう…??///」
「深澤先輩に会えちゃった…!!」
全員の視線を俺に固定させて、俺は背中を向ける。
「サービスは一等賞の子だけ!さ、みんな頑張って捕まえて!わら」
全力で走り出すと、ちゃんと女の子達は追いかけてくる。
これで大丈夫そうかな?わら
コメント
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ついにめめラウの過去が明らかになってきましたね!まさか芸能界にいたとは...! 🖤の事、三人だけの秘密の場所を掲示板に書き込んだ人、ちゃんと裁かれてほしいです。 急に呼ばれた寝起きの💜さん、後輩のピンチに駆けつけて、みんなの意識が自分に向く事を知った上で、そうしてるのちゃんとわかっててかっこよすぎます🫶💗
ふっかさんかっこいい💜
fkさんが最年長の面倒見の良さ的なやつを発揮しててよすぎる…!! mmruにとってkjは素で接せる唯一の人ですもんね…