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「僕も結構やれるんだな」
コボルトを倒して吐き気に勝つと喜んで声を上げる。これならルーザーさんを援護できるかも。
そんな甘いことを考えていると逃げてきた方向から2匹のコボルトが涎を流しながら走りこんでくるのが見える。
「1匹なら大丈夫だけど……。2匹は無理だ……。でも……思ってみればルーザーさんを置いて来てる。ここは倒すべきだ!」
僕は走りこんでくるコボルトに剣を構える。
「ムラタ!」
「この声は! エクス!」
やる気を見せて剣を構えていると背後から声が聞こえる。その声に勇気づけられながら切りかかってくるコボルトのナタを受け止める。
もう1匹のコボルトのナタが届くことはない。エクスの仲間からの矢がコボルトの眉間を貫いたからだ。
「この!」
「そのまま動くなよ!」
コボルトと鍔迫り合いをしているとエクスが僕の横をすり抜けてコボルトの首を落としてくれる。凄い攻撃だ。
コボルトは自分が切られたことに気が付いていない様子だった。
「ムラタ! 状況報告!」
「あ! ルーザーさんが食い止めてる。敵は10匹以上のコボルト!」
「了解! いくぞ!」
エクスの声に彼の仲間達が『応っ』と答えて駆けていく。僕も続いて走るけど、ドンドン離される。
『赤い夜に勝利しました。報酬が得られます』
「あ」
赤い夜の終わりを告げる声。【4000ラリ】と【トネリコの杖】が報酬としてもらえた。
僕はすぐにジャネット達を呼び出す。
「マスター! ご無事で!」
「じゃ、ジャネット!?」
呼び出すとすぐに飛びついてくるジャネット。
彼女は僕の体を入念に調べる。怪我がないことを確認すると安堵して涙を見せる。
ジャネットみたいな美人に抱き着かれるとオドオドしてしまう。鎧ごしでもなんだか柔らかいような気がするよ。
「よかった」
「ワンワン! ハッハッハッハ!」
ジャネットの安堵の声にルドラが声を上げて尻尾をフリフリ。
「ルーザーさんが食い止めてくれてるんだ。エクスが先行してる一緒に行こう!」
僕はすぐに気持ちを切り替えて声を上げる。ジャネット達は状況を理解して走り出す。
「ハァハァ」
ルーザーさんの元にたどり着くと彼は息を切らせて大部屋まで切り込んでいた。
僕が逃げた位置よりも深く入り込んでる。コボルトの死骸の山が出来上がってる。
「30、40のコボルト。異常だな」
エクスがそう言って死骸を避けてルーザーさんに近づく。
僕らに気が付いたルーザーさんはホッと胸を撫でおろして自分の剣を調べ始める。
「かけてもいないな。バンゲルはいい仕事をしてる」
彼の剣はバンゲルさんが作ったものだ。銅の剣は簡単に刃がかけちゃったけど、鉄の剣はかけることはなかったみたい。
酔っている時に言っていたけど、僕はカモにされそうになっていたらしい。まあ、鉄の剣を無料でくれたからいんだけどさ。
「ムラタ、無事だったか。よかったよ。3匹も逃がしちまった」
ルーザーさんは汗まみれの顔で僕を心配してくれる。なんだか申し訳ないな。
「……」
申し訳なく頭を下げているとジャネット達がいたたまれない様子で俯いていた。
彼女達のせいじゃない。村スキルの仕様上の問題だ。
「ジャネット、ジャン、ルドラ。僕は無事だった。スキルの仕様なんだ、僕が気を付けなかったのが悪いだけだ。気にしないで」
「マスター……はい」
気にしないように、そういうとジャネットは頷いてくれる。ジャンとルドラも元気なく頷く。
「ルーザーさんは少し休憩しててください。俺達が奥を見てきます」
「おう。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらう。まだまだ本領発揮とはいかねえな」
エクスの声にルーザーさんが答えて腰を落とす。僕はコボルトの死骸を一か所に集めておく。ジャネット達も手伝ってくれてすぐに終わりとエクスを追いかけようと振り向く。
「……無事でよかった」
背中越しに声が聞こえてくる。ルーザーさんはあんな状況でも僕のことを心配してくれてた。ほんと、優しい人だな。
「ここからは一本道みたいだな」
下っているような通路を進む。分かれ道はないみたいだ。
「ワンワン!」
「風? 別の出口があるみたいだ」
ルドラとジャンが声を上げる。確かに風が吹いてる。
「魔道具があったぞ!」
風を感じながら歩いているとエクスたちの声が聞こえてくる。
コボルトを生んでいる魔道具が見つかったみたいだ。走って向かうとルーザーさんが戦っていた大部屋よりも大きな空洞が現れる。
光が差し込んできているのが見える。結構深くまで下って来たみたいだ。
「白骨死体。こいつが元凶か?」
「魔法使いっぽいね。杖を持ってる」
エクスの声に彼の仲間が答えてる。
魔法使い……やっぱり魔道都市とかいうところの仕業?
「命を使う魔道具だと聞いていたが、本当だったんだな。つきつけても正直には認めないだろうな。とにかく魔道具を壊して」
「うん。……エクス!」
「どうした? なっ!?」
エクスの声に答えてすぐに魔道具を壊そうとした仲間達。
魔道具に彼らが近づくと急に魔道具が光り輝く。驚くエクスたちの前に大きなコボルトが現れる。
「コボルトロード!? うっ!?」
「エクス!」
エクスが驚き戸惑っていると横なぎに腕を振り回すコボルトロード。
エクスは横なぎの腕に吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。
「大丈夫だ! いつも通りいくぞ!」
『了解!』
壁に叩きつけられて唇から血を出すエクスが声を上げる。
僕もそれに答えてジャネット達と顔を見合うとコボルトロードへと肉迫する。
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