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第5話(家庭環境がひどいです 注意)
side:ya
ガチャっ
アパートの一室。
どちらかと言えば古い鍵を開けて中に入る。
ya)…ただいま
化粧中の母さんは、俺がただいま、って言っても振り向きもしない。
まず、今日変わったところを見つけなければ。
ya)……母さん、今日ネイル変えた?可愛いね
ya母)え?そうよ〜よく気づいたわね!流石私の息子!
忌々しそうに俺を見たかと思えば、ぱっと表情を変えた。そういうときだけ流石なんて言って。
柔らかいソファは、俺が座っていいものじゃない。母さんと、その何人目かの彼氏さんだけ。
しばらくしてキッチンに立つ。
今日の晩御飯は何にするか。…俺のじゃない。母さんのだ。
トントンと野菜を切り刻んで、半額シールの付いた肉と一緒に炒めて、母さんの好きな鶏ガラで味付けをする。
今日はちゃんと食べてもらえるだろうか。
この間みたいに机ごとひっくり返されないだろうか。
彼氏さんと予定ができて要らないかもしれない。
ya)…か、母さん、ご飯…出来た、よ
喉の使い方が一瞬わからなくなった。震える声でそう言えば、今日は機嫌がいいらしい。
ya母)あらそう!じゃあ食べるわね
そう言って、ありがとうもいただきますも無しに食べ始める。しばらくすると、彼氏さんとビデオ通話を始めた。
俺はその間どこかへ行かなければならない。
夜の繁華街で待ち合わせ。
urとsvは今日も来るだろうか。
side:ur
メイド)お帰りなさいませ、坊ちゃん
どこからどう見てもこんな敷地いらないだろうと思える家に入って、目に入るのはずらりと並んだメイド。
その表情に滲む、俺への嫌悪と憎悪。
どうせ俺は役たたずで女好きな妾の子だよ。
影でこんなに言われるくらいなら、表立って言われる方がずっといい。
前から親父が歩いてきた。
小さい頃からしてきた、迷いない足取りで跪く。
ur)ただいま戻りました、父上
ur父)…またお前はギターなんぞ、…妾の子とはいえ財閥の息子が、恥を知れ
俺の背中にあるアコースティックギターを、冷ややかな目で見つめてそう言った。
何千回と聞いてきたこの言葉。
女性に優しくすれば女好きと囁かれ、それを辞めれば冷酷な人と言われ。
夕食は俺の分だけ少し少なくて、人参やらキノコやら、家族とも言えぬ人々が嫌う物が寄せ集めのように入っている。
母の目も、親父の目も、兄上の目も、妹の目も冷ややかで、心から俺を軽蔑しているらしい。
兄と妹はまだいいとして、母様も、親父も…お前等が生み出したんだろうが…
早々に夕食を胃に流し込んで、自室の窓から外へ出た。
行先は繁華街。
あそこが俺に似合う。yaとsvはいるだろうか。
side:sv
忍び込むように家へ帰れば今日も言い争う声が聞こえる。
「貴方が不倫したのが悪いんでしょう!?」
「前にお前の不倫を見ていないことにしてやったのは誰だと思ってるんだ!?」
母さんたら、1人目の旦那もこんなのだったろう。
頭がガンガンする。
俺が姿を見せれば、全ての矛先は俺に向く。
sv母)なんだ、あんた帰ってきたの。そのまま帰ってこなくて良かったのに
母さんのあれが始まった。
“新しい”父は何も言わない。
折角巻いた包帯を荒い手つきで外されて、母さんは俺の首に今日も手をかけた。
痛い。
苦しい。
どうでもいい。
俺さえ苦しめば、義理の妹には危害は及ばない。
俺なんかと違って優秀なんだから。
「あんたさえいなければ!」
母さんの声が遠く聞こえる。
ならこのまま永遠に眠らせてくれよ。
なんてのも無駄で、意識を手放す直前に終わるもんだから残念で冷酷だ。
そのままの格好で、いつものように財布とスマホを掴んで家を出た。
繁華街に行くには、右へ真っ直ぐ。
urとyaはもう着いたんだろうか。
第5話 終
家庭環境😢😢がやっと書けた!
七瀬🍏
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コメント
4件

第5話、読み終えました……。三人の「ただいま」が誰にもまともに返されない、それぞれの帰る場所の冷たさが胸に刺さりました。yaくんは母の機嫌を伺いながらご飯を作って、自分は座れないソファ。urくんは「お前が生み出したんだろうが」という言葉が、あまりにやりきれない。svくんの首を絞めるシーンは、生々しくて読んでいて苦しかったです。それでも三人が集う繁華街があるから、少しだけ救いがある気がしました。家庭環境をここまで丁寧に、匂いや温度まで描き分けられていて、すごいなと。続きが気になります……!