テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
『一年後も、隣で。』
第一話
冬の朝。
まだ太陽が昇りきらない東京は、冷たい空気に包まれていた。
スタジオへ向かう車の中。
渡辺翔太は窓の外をぼんやり眺めていた。
流れていく景色。
赤信号で止まる車。
行き交う人たち。
どれもいつもと変わらない。
変わってしまったのは、自分だけだった。
────────
💙side
スマホが震える。
画面には一件のメッセージ。
母
《無理しなくていいからね》
短い文章。
それだけなのに、胸が締め付けられる。
“無理しなくていい”
その言葉が、一番苦しかった。
無理なんて、とっくにしている。
だけど、もう決めたことだから。
通知を消してスマホを伏せる。
マネージャーがバックミラー越しにこちらを見た。
「渡辺さん、体調大丈夫ですか?」
💙「あ、大丈夫です」
「顔色が少し悪くて」
💙「寝不足っす」
自然に笑う。
最近は嘘をつくことにも慣れてきた。
スタジオへ着く頃には、いつもの渡辺翔太になっていなければいけない。
車が止まる。
深く息を吸い込んで、ドアを開けた。
────────
楽屋。
💜「おはよー!」
🧡「翔太くん、おはよう!」
💚「お、今日早いじゃん」
🤍「おはよう!」
❤️「おはよう」
みんなの声が一斉に飛んでくる。
💙「おはよ」
いつも通り笑って返す。
荷物を置いて椅子へ座ると、阿部が隣へ来た。
💚「今日寒くない?」
💙「寒い」
💚「朝起きるのつらかった」
💙「それな」
他愛もない会話。
こんな時間が好きだった。
何も考えなくていいから。
だけど。
「渡辺さん」
マネージャーが入口から声を掛ける。
「少しだけいいですか?」
💙「あ、はい」
立ち上がる。
楽屋を出る瞬間。
なんとなく視線を感じた。
振り返ると。
宮舘がこちらを見ていた。
目が合う。
❤️「……」
何も言わない。
でも、その視線はどこか引っ掛かるものがあった。
翔太は軽く笑って、そのまま廊下へ出た。
────────
廊下。
周りに誰もいないことを確認すると、マネージャーが小さく封筒を差し出す。
「昨日お願いされていた資料です」
💙「ありがとうございます」
封筒を受け取る。
白い封筒は思ったより重かった。
中身は分かっている。
まだ誰にも見せるつもりはない。
誰にも知られるわけにはいかない。
特に。
“あいつ”だけには。
「来月には正式に動き始めます」
「はい」
「本当に大丈夫ですか?」
その質問に、翔太は少しだけ笑った。
💙「大丈夫です」
「……そうですか」
マネージャーはそれ以上何も言わなかった。
────────
❤️side
楽屋に残ったまま、翔太が出て行った扉を見つめる。
💜「翔太どうしたんだろ」
🧡「仕事ちゃう?」
💚「すぐ戻ってくるでしょ」
誰も気にしていない。
でも。
涼太だけは違った。
さっき目が合った時。
翔太は笑っていた。
なのに。
笑っていなかった。
長い付き合いだから分かる。
あれは作った笑顔だった。
(何かある)
理由は分からない。
でも確信だけはあった。
────────
数分後。
翔太が戻ってくる。
💙「お待たせ」
💜「何だった?」
💙「ちょっと打ち合わせ」
💚「朝から?」
💙「うん」
短い返事。
すぐに荷物を整理し始める。
その横顔を見つめながら、涼太は小さく考え込んでいた。
昔から。
翔太は嘘が苦手だ。
何かを隠そうとすると、右手で無意識に親指を触る癖がある。
今もそうだった。
誰にも気付かれないくらい小さな癖。
でも。
涼太だけは知っている。
(やっぱり)
嘘をついてる。
何を隠しているのかは分からない。
だけど。
相談してくれないことが少し寂しかった。
────────
💙side
撮影は順調に進んでいく。
集合カット。
ソロカット。
インタビュー。
スタッフの声が飛び交う中、翔太は何事もないように笑っていた。
「渡辺さん、もう少し笑顔お願いします!」
💙「はーい」
シャッターが切られる。
笑う。
笑う。
笑う。
仕事だから。
今だけは全部忘れる。
そう思っていたのに。
ふと視線を上げると。
少し離れた場所で宮舘がこちらを見ていた。
目が合う。
❤️「……」
優しく笑う。
昔から変わらない笑顔。
その笑顔を見るたびに思う。
(言えるわけないだろ)
一年後には。
もう隣にいないなんて。
そんなこと。
お前には絶対に言えない。
翔太は何事もなかったように笑い返した。
その笑顔が。
この日一番苦しい笑顔だったことを、まだ誰も知らなかった。
コメント
2件
ええええええええ!? しょぴーーーー!?
みぅだよ🤍🥀 第1話、読んだよ。 ……なんか、すごく胸がぎゅってなった。 翔太くんの「大丈夫」が、大丈夫じゃないって、読んでるこっちにも痛いほど伝わってきて。 宮舘くんが気づいてるシーン、一番好きかも。 長年の付き合いでしか察せない“違和感”って、リアルだなって思った。 一年後に隣にいなくなるって、どんな決断なんだろう……続きが気になる🌙
#Snow Man
絶対辰哉
539
絶対辰哉
514