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「……マジで? スーツで来たら浮きまくるよ、お姉さん」
「いいよ、そんなの。どうせ私のことなんて、誰も見てないし」
自嘲気味に呟いた言葉に、光は少しだけトーンを落として言った。
「……俺は見てるけどね。お姉さんのハイヒールが、いつ折れるかヒヤヒヤしながらさ」
その言葉に、胸の奥が少しだけチクッとした。
職場の誰も気づかない、私の限界。
それを、たった数回顔を合わせただけの隣人が、面白おかしく見抜いている。
「……じゃあ、明日。新宿で」
「おう。滑ったらお姉さんのせいにするからな」
壁を隔てただけの、奇妙な会話。
完璧な自分を演じなくていい場所が、まさかこんなボロアパートにあるなんて、昨日の私なら絶対に信じなかっただろう。