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「…どこにいる?」

「ごめん…」


「言えないってこと?」


「慎吾先輩が美容室をオープンして、そこで働きながらお世話になってる…」


「は…?なんだよそれ…」



嶽丸が怒るのも無理はない。

でも、まだ慎吾先輩に確認してないから、言えないことがあった。


慎吾先輩の家に到着してしばらくして、嶽丸から着信がきた。

移動しながら携帯を確認しなかったのは…実はわざとだ。


声を聞いたら、離れる決心をしたのに気持ちが揺らぎそうだったから。



「と、とにかく…ごめん。嶽丸が大切だから、今離れるって、わかってほしい」


私の中の問題なのに、ろくな説明もなく理解しろっていう私も悪いとは思う…



「…俺じゃないの?…頼るの」


「それは…ごめん」


揺らぐくらいの決心なら、嶽丸と一緒にいればいいのに…母への恐怖に震える私を、これ以上嶽丸に見られたくない思いもあった。


過去の私と母の関係を、嶽丸は朱里に聞いて知ったと言うけど…私の苦しみはそれだけじゃない。


…私は父にも捨てられた。


お金だけを送金してくるけど、手紙1つもらったことがない。

そんな苦しみや闇を、明るい嶽丸に見られることが怖い。


だから…母のことが落ち着くまで、恐怖が薄れるまで、離れることが私のベストだった。


理解しにくいかもしれないけど、これが私の本音。



「ただいま」


説明しようと口を開いたところで、慎吾先輩の声がした。


また電話する…と言って嶽丸との着信を切り、携帯をしまいながら玄関へ向かう。



「おかえりなさい」


慎吾先輩の傍らにいる男性も柔らかく微笑んでいる。



「あの、本当に…突然お邪魔してすいません…宏樹さん」


私が頭を下げると、宏樹と呼ばれた男性は、慎吾先輩を少し見つめてから言った。



「いいんだよ!慎吾には聞いてたし。僕たちで助けになるなら、とことん利用して!」


宏樹さんはそう言いながら、自然と慎吾先輩と手をつないだ。


そう。

宏樹さんは慎吾先輩の恋人。

さっき嶽丸にそのへんのことを言えなかったのは、慎吾先輩に他言していいか確認していなかったから。


銀座店でも、慎吾先輩の恋人について知っていたのは私だけだったと思う。

実はアシスタント時代にすでに宏樹さんを紹介され、当時の私は淡い気持ちを昇華させていた。


2人はとても素敵な恋人同士だった。だから今回、2人で暮らす家を購入して、美容室をオープンさせる計画を聞いた時は、自分のことのように嬉しかった。


…こんな形でお世話になるとは思わなかったけど。


ホッとしていた。

嶽丸と離れることになったのは寂しいけれど、母からの追手が来る心配がない環境は、心がとても楽だ。


後は健に母の動向を聞きながら…気持ちが落ちついたら、嶽丸を残してきたマンションに戻ろう


…そう思っていたのに。



私のポチくんと俺のタマ

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コメント

1

ユーザー

慎吾ちゃんは、みゃーちゃん狙いだと思ってたのに、まさかのパートナー持ちでしたw 離れていても、きっと直ぐに会いたくなっちゃうよ(*´꒳`*)

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