テラーノベル
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「ああ、神さま。なぜあなたは私の性生活(予定)を、をことごとく邪魔するのですか……!!」
ひよりは自室の枕に顔を埋めて叫んだ。
きっとあれだ、運気が悪いのだ。ネットで調べたところ、寝室の環境が重要らしい。
・ベッドをドアの真正面に置かない。
・自然素材(シルクや綿)の寝具を使う。
・観葉植物で空気を整える。
(なるほど……! 今のシングルベッドは、いわばおひとり様専用。化学繊維のシーツは肌触りが悪いし、いざ事後になっても、二人でまどろむスペースすら確保できない。
なら答えは一つ、大きいダブルベッドを導入しシーツも新調。風水を味方につけて陽一さんとベッドイン……♡)
相変わらず思考が「目的」へ直行している私は、計画を練り始めた。
***
土曜日の昼。僕は白石さんに誘われて、家族連れの多い北欧インテリアの大型店に来ていた。
「わあ、広い……! 陽一さん、見てください! あのおっきいベッド~!」
目を輝かせる彼女の横で、僕は石像のように固まった。
(……は、墓場だ。先輩たちが言っていた、人生の墓場への入り口がここなのか……?)
システム部の既婚先輩たちから聞いた呪いの言葉が蘇る。
「転生したら、俺は二度と結婚はしない」
「小遣い月3万」
「フィギュア廃棄」
結婚生活の悲惨な実態を語る先輩たちの顔が忘れられない。
僕の脳内Excelは、ショールームの価格タグを見るたびに、警告のアラートを激しく点滅させていた。
(ダブルサイズか……。結構幅があるな。都内標準スペックの1Kに置くとなると、搬入経路で詰む可能性があるから要検討……いや、それどころじゃない……)
今の白石さんは危険だ。試しにと腰掛けたベッドの沈み込んだマットレスのせいで、僕たちの太ももは逃げ場なく密着していた。
ミニスカートから覗く眩しい太もも。薄い布越しに伝わってくる彼女の体温。ふと見ると、僕を見つめる彼女の瞳が熱く潤んでいて、僕を誘っているように見えるのは…き、気のせいか?
既婚者の先輩は「結婚は墓場だ」と言った。だが、目の前の白石さんという圧倒的な報酬は、その恐怖を上書きするほどに扇情的だ。
その時。
「……どうしたんですか? そんな難しい顔して」
首を傾げながら、彼女がゆっくりと脚を組み替えた。スカートの裾が捲れ、その奥底──禁断の領域から淡いピンク色が、一瞬だけ僕の視界を支配した。
(——ピンク!? ぱ、パンツ……いま、見え……!?)
僕の脳内サーバーには致命的なエラーが叩き込まれ、全システムがフリーズ寸前だった。
(うふふ……このベッドを買えば、毎晩この距離で……いや、ゼロ距離で密着して、あんな格好やこんなシチュエーションで情熱的に……♡)
(陽一さん、普段は真面目で奥手だけど、二人きりになったら、キーボードを叩くあの器用で長い指先で、私のあんなところやこんなところに触れて……激しく♡)
(立てなくなるくらい愛されたいなぁ。ああ、想像しただけで、なんだか身体の芯が熱くなってきちゃう♡)
「……ふふ、なんか新婚さんみたいですね♡」
白石さんが身体を密着させながら、僕の耳元で甘い吐息と共に囁いた。その瞬間、脳内サーバーは完全にオーバーロードした。
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