クロスが目を覚ますと、松高がクロスを見つめていた。他にも懐かしい面々が揃っており、ハルもその場にいた。
「…松さん…?…ゲホッゲホッ…」
「喋るな…重症なんだ、安静にしてくれ…」
そう。クロスの体はボロボロだった。左腕は複雑骨折しており、右目の視力は失っていた。助かる見込みはほとんど無い。しかしそれでもクロスは言葉を紡ぐ。
「…日向達は…?」
「赤い髪の人達か?今手当を受けて寝ているよ…彼らも重症だったが、命に別状は無い。」
「…なら良かった」
無茶な事を言ってしまったから、生きてて良かったと安堵した。そろそろタイムリミットも近いのか、眠気が襲ってくるが、まだ言いたいことがある。
「…僕さ、強いんだって………どう思う?」
「あぁ…お前は強いよ、誰よりも…なんたって、俺の息子なんだからな…」
「!……へへ…」
笑顔になると、クロスが小さく息を吸った。団体のみなはこれが最後の歌だと察し、全神経を歌に集中する。
曲はクロスが幼少期によく口ずさんでいた歌だった。前のような力強い歌声ではなく、とても優しい声だった。しかし段々と声が小さくなっていき、最後は静かになった。するとハルが
「……いつだってあなたへ…届くように………歌うよ…」
ハルが歌の続きを泣きながらも歌った。団体のみなも泣き崩れていたが、松高だけは笑ってクロスを送り出した。
「おやすみ、クロス…いい夢を…」
綺麗な塵が、空を舞っていた。
あれから1週間が経ち、あるニュースが世界中に新聞として広まる中、ハルはヒビが入ったゴーグルが掛けてある墓の前で新聞を閉じた。記事に大きく書いてあったのは
『 英雄死亡。戦争の終わりは?』
「…あんたってほんと、有名人だよね。私よりも知られてるじゃん…」
ハルは立ち上がると、笑顔で言う。
「クロスが書いてくれた曲。大好評だったよ!今度アルバムも出すんだ!…クロスにも、聞いてほしかったな…私の歌。」
悲しい表情になってしまった為、気晴らしに歌を歌う。クロスが書いた新曲だった。
『 どうして あの日遊んだ海の匂いは』
『 どうして 過ぎる季節に消えてしまうの』
ふいに、歌声が2つになった気がした。
お借りした曲
『 世界のつづき』
『 _____』
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