テラーノベル
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31
久しぶりに見た彼女は、やっぱり君のままだった。
それなのに、どこかが少しだけ違って見えた。
ベッドの上で、弱々しく笑う。
「……来てくれたんだね」
その声を聞いた瞬間、全部がどうでもよくなった。
「なんで、もっと早く言わなかったんだよ」
そう言いながら、気づけば君の手を握っていた。
震えていた。
君も、同じくらい弱く、でも確かに握り返してくる。
「ごめん……」
それ以上、何も言えなかった。
ただ、そこにいた。
それだけでよかった。
「もう、離れないで」
自分でも驚くくらい、素直な言葉が出た。
君は、少しだけ目を細めて頷いた。
「……うん」
その一言で、やっと繋がれた気がした。
ずっと、失いかけていたものが戻ってきた。
——まだ、完全じゃなくてもいい。
——一緒にいられるなら、それでよかった。
その夜、病室の窓から見えた景色は、やけに静かだった。
「明日も、来るから」
僕はそう言って、君の頭をそっと撫でた。
君は、小さく笑っていた。
しばらくして、君が小さく息を吐く。
「……ねえ」
かすれた声が、静かな部屋に落ちる。
僕は顔を上げた。
「……まだ、間に合うかな」
その言葉の意味が、すぐには分からなかった。
「何が」
そう聞き返すと、君は少しだけ目を伏せた。
「……私たち」
胸の奥が、強く揺れる。
「離れたまま、終わるのは……嫌」
その言葉に、僕の中で何かが崩れた。
「……当たり前だろ」
かすれた声で、そう返す。
「終わってない」
「終わらせてない」
言いながら、君の手を強く握る。
君も、少しだけ力を込めて握り返した。
「……ごめん」
「いい」
すぐに僕が遮る。
「謝るなよ。……今は」
その言葉に、君の目が少しだけ揺れた。
「……ありがとう」
その一言は、やけに軽くて、でも重かった。
「戻ろう」
僕は、はっきりと言った。
「ちゃんと、もう一回」
君は、しばらく黙っていた。
そして、ゆっくりと頷く。
「……うん」
その瞬間、ふたりはやっと、同じ場所に立った気がした。
言葉ではなく、沈黙でもなく、
確かな「選択」で繋がる。
何も完全じゃないまま。
それでも、もう一度、隣にいると決めた。
僕はその手を離さなかった。
君もまた、その手を離さなかった。
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