TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
Lose ball

一覧ページ

「Lose ball」のメインビジュアル

Lose ball

4 - 第4話

♥

20

2024年03月30日

シェアするシェアする
報告する

〜水戸洋平side 〜

「洋平…?」

ようやく呼吸が安定した花道が、俺がここにいることを不思議そうにうかがう。

「花道が倒れたって聞いたから…。」

こうやって花道の看病をするのは今日が初めてじゃない。

親父さんが亡くなった後から、塞ぎ込んで季節外れの風邪を引いたとき、初めて一人暮らしで体調を崩し、俺が家に行くまでずっと玄関でうずくまってたとき、花道がこういうときに親父さんの代わりに頼れるのは、俺しかいなかった。

「今、あの日の夢を見てた。…親父が死んだ日。」

「うん。」

とうとうこの時が来た。

俺が今まで無意識のうちに避けていた、あの日のことを聞く時が。

「俺、あの日、学校の帰り道、洋平と別れた後さ…高校生4人ぐらいに絡まれたんだ。この前の鉄男とかとは比べものにならないくらい弱い奴ら。だからソッコーで倒して家に帰った。そしたら、玄関で親父か倒れてて…っ…俺バカだから…っっ」

当時のことを思い出したのか、花道が嗚咽混じりに泣き出した。

「俺、バカだから…救急車呼ぶとか思いつかなくて、走って病院に行って、お医者さんに来てもらおうとして…っ、そしたらっ、さっきの奴らが数増やして待ち構えてた。ボコられながら、親父か倒れたんだっつっても、聞いてくれなくてっ…警察がちょうど通りかかって、奴らは逃げてったけど、親父はっ…もう、動いてなくてっっ…。」

「うん。」

「俺がっ、俺がバカだから…親父は死んだんだっ…。」

花道の震える手をそっと握る。

「ごめんな、あの時…そばにいてやれなくて、ごめんなっ…。」

俺は、涙を堪えるのに精一杯だった。

「救急車はな、119を押すんだよ…。自分で病院に行かずに、…救急車が来るのを待つんだよ。」

自分でも、何を言っているのか分からなかった。

でも、花道は、もう二度と同じ間違いをしないように、大粒の涙を流しながら、必死に俺の言葉に頷いていた。


俺と花道が初めてリーゼントにした時、一番最初にその姿を見せたのは、花道の親父さんだった。

自分の親には怖くて見せられなかったのに、親父さんには自慢気に見せれた。

散々笑って、少し小馬鹿にした後、

「花道の仲間になってくれてありがとう。」

と折角セットしか髪をわしゃわしゃと撫でながら言っていた。


肩に、温かい感触が広がる。

花道が、俺の肩に身を預けたまま寝息を立てていた。

この作品はいかがでしたか?

20

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚