テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,000
38
145
1,268
朝。目を覚ました瞬間から、身体が重かった。
蘇枋「……参ったな」
ベッドから起き上がる。
いつもなら何も考えずにできる動作なのに、今日は少し時間がかかった。
頭がぼんやりする。
喉も少し痛い。
熱っぽい気もする。
それでも、俺は鏡の前に立った。
蘇枋「……大丈夫」
自分に言い聞かせるように呟く。
顔色は…
まあ、少し悪いかもしれない。
でも、学校を休むほどじゃない。
そう思うことにした。
眼帯をつけ、髪を整える。
最後に、いつものように口元を緩めた。
蘇枋「よし」
これで問題ない。
少なくとも、他の人から見れば。
教室に入る。
蘇枋「おはよー、桜君、楡君」
楡井「おはようございます、蘇枋さん」
桜「朝からうるせぇ!!」
相変わらずだ。
俺は思わず笑った。
蘇枋「ひどいなぁ」
いつもの桜くん。
いつもの俺。
これなら大丈夫。
そう思っていた。
桜「……」
けれど、席に座った瞬間。
少しだけ視界が揺れた。
机に手をつく。
ほんの数秒。
それだけ。
誰にも気づかれていない。
……と思った。
桜「おい」
蘇枋「ん?」
顔を上げる。
桜くんがこっちを見ていた。
桜「お前、今日なんか変じゃねぇか?」
蘇枋「そう?」
桜「なんか……」
桜くんは眉を寄せる。
桜「顔、変」
蘇枋「それは失礼だなぁ」
桜「そういう意味じゃねぇ!!」
思わず笑ってしまう。
やっぱり桜くんは面白い。
蘇枋「ちょっと寝不足なだけだよ」
桜「……本当か?」
蘇枋「本当、本当」
俺は笑う。
桜くんはまだ納得していないようだった。
桜「……ならいいけど」
そう言って前を向く。
助かった。
これ以上心配されたら、少し面倒だ。
俺はもう一度、机に手を置いた。
――大丈夫。
そう思った。
放課後。
街で揉め事が起きたらしい。
俺たちは現場へ向かうことになった。
桜「蘇枋、お前は――」
桜くんが何か言いかける。
蘇枋「行くよ」
桜「……」
蘇枋「どうしたの?」
桜「いや……」
桜くんは俺を見る。
桜「無理すんなよ」
一瞬だけ、返事に困った。
蘇枋「……心配してくれてる?」
桜「してねぇ///」
蘇枋「ふふ」
いつも通り。
俺は笑って歩き出した。
身体は重い。
さっきよりも少しだけ。
でも、まだ動ける。
まだ戦える。
だったら問題ない。
そう思っていた。
現場に着く。
相手は複数。
桜くんたちが一斉に動いた。
俺も続く。
拳をかわす。
攻撃を受け流す。
相手との距離を詰める。
身体は重かったけれど、動けないほどじゃない。
蘇枋「……よし」
一人。
もう一人。
倒していく。
――大丈夫。
まだいける。
そう思った、その瞬間。
視界が一瞬だけ霞んだ。
蘇枋「……っ」
足が止まりかける。
まずい。
俺はすぐに姿勢を戻した。
誰にも見られていない。
……たぶん。
桜「蘇枋!」
桜くんの声。
桜「後ろ!」
振り返る。
蘇枋「――!」
相手の攻撃。
避ける。
……はずだった。
いつもより、ほんの少し遅れた。
肩をかすめる。
蘇枋「……っ」
痛い。
けれど、それ以上に。
身体が思うように動かないことの方が気になった。
桜「蘇枋!」
桜くんが駆け寄ってくる。
桜「お前、やっぱおかしいだろ!」
蘇枋「大丈夫だよ」
桜「大丈夫じゃねぇだろ!」
珍しく、本気で怒っている。
俺は少しだけ困った。
蘇枋「桜くん」
桜「なんだよ」
蘇枋「まだ終わってないよ」
そう言って笑う。
本当に、大丈夫だと思っていた。
あと少し。
あと少しだけなら。
そう思って――
一歩、踏み出した。
蘇枋「ぁ……」
足に力が入らない。
視界が大きく揺れた。
蘇枋「……やばっ…」
小さく呟く。
その瞬間。
身体から力が抜けた。
桜「蘇枋!」
桜くんの声が聞こえる。
誰かが俺の名前を呼んでいる。
けれど、もう目を開けていられなかった。
――しまった。
こんなところで。
そう思ったのを最後に、俺の意識は途切れた。
コメント
1件
ああもう、タイトルからして「いつもと違う」って伏線バリバリじゃん…! 蘇枋の「大丈夫」って自分に言い聞かせる感じ、読んでて辛かったわ。普段あんなに余裕あるやつが、身体重いのに笑顔作ってるの見ると「無理すんなよ!!」って画面越しに叫びたくなった。 桜くんの「顔、変」からの「無理すんなよ」、あれ蘇枋のことちゃんと見てるからこその台詞だよな…じーんときた。 ラストの「しまった」で落ちるとこ、一気に引き込まれた。続き気になりすぎる😭