扉を開け、こちらを振り向く俺の彼女
たく「じゃ、いってくるね」
うた「ん、言ってらっしゃい、門限までには帰ってきてね」
わかってる、と屈託のない柔らかな笑みをたたえながら、愛しの人は出かけていった
ってのがつい6時間20分前の出来事
たく氏は一時に家を出て、現在午後9時20分
門限はたくぱんの身の安全と今日のはるてぃーと飲むという予定を両方考慮して渋々午後9時に指定した
ホントはもっと早くても良かったんだが…7時とか、なんならメンバーじゃなかったら行かせてすらしないし
閑話休題
たくぱんの連絡先に怒りスタンプを連打する
俺はこんなにたくぱんのことを想って優しくしてるのにたくぱん自身は俺との約束すら守ってくれないんだな
既読すらつかないスマホ。そんなにはるてぃーと飲むのが楽しいのか
そうかそうか俺とは嫌がって飲まないくせにな
完全にへそを曲げた。もうキレた。今日という今日は許さん
うた「…絶対ひどくしてやる…」
たく氏が俺に堕ちるまで絶対許さない
手足を切ってでも俺に執着させてやる
そうスマホを見ていると
一本のビデオ電話が
件のはるてぃーからだった
少しイライラしながらも立ち上がり、通話ボタンをタップして電話に出る
うた「…はいもしもし」
はる『もしもしうた〜?』
電話を開いた瞬間にスマホ全体に映し出される腐れ縁の顔
その顔ですら俺の不機嫌を加速させる要因だった
うた「んだよ、人の彼女捕まえつつなんか用かよ?」
はる『うおぉ…めっちゃキレてる…ほらたくぱんお前の愛しの彼氏だぞ〜』
一瞬マイクから離れて小さくくぐもった声になる
たくぱんを呼びに行ったことは自明だ
愛しの彼氏という単語に少しの優越感を得てごく僅かに気分は上がったが同時に気付いた
はるてぃーが俺に電話をした、つまり、たくぱんは今自力で電話すらかけられない状況と
それだけ泥酔しているのか
俺と飲むときはちゃんとセーブしてるっていうのになぁ?
電話越しにたくぱんの声が聞こえる
うた「あ、たくぱんお前なぁ…」
そのまま小言を頂戴してやろうと口を開くが映し出されたたくぱんの顔に言葉が詰まる
酔って顔は真っ赤になっておりアメシストのような瞳は潤んでいる
目も眠そうにとろんと垂れた半目でどうも劣情をそそられる顔をしていた
極めつけには
たく『あ!うたくんだぁ〜んふふ…どぉしたの?』
酒気を帯びた吐息多めの甘い声
舌っ足らずになっていて、何処か幼さも感じる
普段からよくたく氏の声で悶えている俺からするとえげつないファンサだ
倒れ込みたい衝動をぐっと抑えソファに座り込む
うた「…で?なに?」
はる『いや〜…たくぱんって酔ったらこんなに甘えたになるんだな』
たく『ん〜はうてぃー…』
はる『ちょちょちょちょ!電話相手お前の彼氏!てか俺も彼氏持ちだし!俺確で殺される…って』
電話越しで繰り広げられるクソみたいな状況
通話画面を見たはるてぃーの顔が真っ青になっていく
ちょっと怒りが抑えられていなかったか
スマホのガラスにピシリとひびが入る
反射で写った自分の顔は我ながらに凶悪なものだった
はる『お、俺なんも悪くねーからな!場所送るから今すぐこの酔っぱらい迎えに来い!』
うた「あ?おい人の彼女を酔っ払い扱いとはいただけないな?決めました、てめぇの彼氏にも連絡しまぁす」
はる『は!?やめろ待ってほんとにごめんそれはやめて!罪状が!俺の罪状がッ____』
電話をぶつ切る、あのたまアリバカに慈悲なんてやらねぇ
コート掛けにかけていた上着をとり
はるてぃーから送られてきた地図の場所に向かう
ちょっとこれはお灸を据えに行かないとな
俺が迎えに行った頃にはたくぱんは爆睡していて
はるてぃーはもうすでにお金だけ置いて逃げていた
癪なのは眠っていたたくぱんが握りしめている上着がはるてぃーのもので
俺がプレゼントしたマフラーは座敷の端に追いやられているということ
俺の中でのたくぱんとはるてぃーの罪状がどんどんと増えていく
深く低く息を吐き、たくぱんを揺り起こす
たく「う〜…もうちょっと…」
と言ってもう一度寝直そうとするたくぱんを起こしあげる
うた「ほら帰るよ、帰ったら色々話すからね」
たく「ん〜…うたくんおんぶして…おんぶ…」
どれだけ俺を煽れば気が済むのか
重度の可愛さにもはやイライラしてきた
仕方なく上着を着せてからおぶる
抱えあげるたびに思うが、こいつは身長の割に本当に軽い
はるてぃーが置いていったお金を数える
少し量が多い気がするのは口止め料だろうか
さっさとお会計を済ませ、店を出る
肌を刺すような冷たい風に秋の終わりを感じた
これから寒くなるだろうなと思いながら背にある温もりを担ぎ直す
ゆっくりと歩きながら家路をたどる
たく「ん…うたくん…なんか怒ってる?」
眠たそうな声が後ろから聞こえる
起きたのか
うた「まぁはるてぃーにあんなにベタベタするのは…妬いた」
たく「…そっか、そっかぁ…ふふ…」
そう柔らかく笑うたくぱん
まだ酔いはさめきってないみたいで少し口調が甘い
うた「何が面白いんだよ、てか起きたなら下りて」
たく「ん〜?成功だなぁって…」
よいしょっとなんて言って背中から下りて、俺のすぐ横を歩く
うた「何が成功だっていうんだよ?」
たく「え〜?内緒‥!」
こんなにいい笑顔で言われちゃ詮索できないじゃないか
本当にずるい
うた「俺が妬くの見て、何が楽しいんだよ」
すねたように一人愚痴ると
たく「楽しいよ?好きなんだもん、愛されてるなーって。ふひ、恥ずかし」
酔って赤くなった頬に更に赤みがさした
深い青のマフラーに顔をうずめてこちらに小首を傾げてくる姿はなんともあざとい
うた「…お仕置き、今度宅飲みして、そんで酔って」
たく「えぇ〜?うたくんのまえでは酔いたくないなぁ〜」
なんでだよ、と突っ込むと
くるくる回りながらご機嫌に前を歩き、振り向いて言った
たく「…うたくんの前ではかっこいい俺でいたいから?」
きゃー言っちゃったとまるで女子高生のようなノリでパタパタと逃げていくたくぱん
ふと急に止まったと思ったら、空を眺めだした
何があるんだと視線の先を追うと、柔らかい光を発している淡い月の周りに
まるで宝石が散りばめられているかのように星が光っている
薄ら雲一つない快晴の空
たく「きれいだね…」
うっとりといった様子で空をながめるたくぱんに
うた「ずっときれいだったよ」
なんて返す
酔っていてバレなかったみたいだけど
バレてたらバレてたで恥ずかしいのでまぁいいとしよう
冷え切ったたくぱんの手を掴んでまた歩き出す
幸せな帰路
月は見守っていた
…こうなるはずじゃなかった
もっとドロドロしたヤンデレエロギャグが出来上がるはずだった!!!!
なんでこんなきれいになった…?????嘘だろ…?????
はるさんの彼氏はどうぞお好きに妄想してください
コメント
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神だ … まじ凄 、たくぱんさん の酔い方どストライク ︎︎👍︎︎ はるさんが焦ってんのもリアル感ある 🫠🫠 リクエストに応えてくれてほんっっとありがと ~ !! 🫶️💗 まじネクストとか付けて♡設定した方がいいよ?!! 1万でも2万でも付けるから (( はるさんの彼氏 … あす か 山 だと 、思いたい 🙄💭