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私はただ…君を弱く見て欲しく無かったんだ
第3章 開幕
あの事件から2ヶ月ほど経過しただろうか、あの日からラズカは吹っ切れたような感じがして、いつもより明るくなっていた。そして…
「ラズカおはよぉ〜」
「あっ、おはようございます!カミラさん!」
このカミラという名も少し体に馴染んできた。さんじゃなくて呼び捨てとかにして欲しい気持ちもあるけど。
最近は特に何も無く、平和に暮らしている。強いて言うなら最近近くの国の1部が独立して新しい国になったって事くらいかな。
そんなこの2ヶ月間私たちはある事をしていた。 それは….
訓練だ。
ここはある訓練場。獲物を探している時に偶々見つけた施設だ。もう誰も使ってはいなさそうだから、私とラズカの訓練場として利用している。
「行きますよ、カミラさん」
「かかって来なさい!」
何故こんなことをしているかと言うと、またあの様なことがもし起こった時、対処できるようにするためだ。まあ、大抵の場合は….
「あれ、もう立てませんか?」
「うぅ….強い……」
私の大敗だ。
かかって来なさいとか調子こいたことを言ってはだいたい負ける。
「まだまだぁー!!」
頑張って立ち上がっても….
「好きだらけですよ?」
「ふぎゃ!」
このザマ。途中から同情したのか、少しだけ手加減してくれる。まぁ、それでも負けるんだけどね
「今日はこのくらいにしておきましょうか…ってあれ?あんな所に鳩?」
今日も負け試合が終わり、帰ろうと準備していたラズカが見ていたのは鳩だった。鳩はまるで雪を被っているように真っ白で、とても美しい。確かに鳩が来るのは珍しいけど、それに加えて手紙らしき物を咥えていた。
私たちはその手紙を受け取り、鳩に一礼すると鳩は飛び去って行った。
「カミラさん。この手紙は何なんでしょうか?」
「さぁ、でも私達がここに居ることを知っているって事でしょ?一体誰に?」
私たちはこの廃墟に誰も呼んだことはない。だから最初は間違えて来てしまったように見えたけど、手紙を読んでみると….
カミラ様、ラズカ様 この度は、イルゴールの開国祭のご参加、ありがとうございます。開催は明日となりますので、早々のご準備、よろしくお願いします イルゴール国王 クルノ・マッテルーネ
「私たちの手紙でしたね。クルノ・マッテルーネ….確かにイルゴール王国の国王様です」
「でも、なんで私たちに?」
カミラなら私より色んな所へ行っているだろうし、こんな手紙が来ても何ら不思議ではない。でも私の名前があるって事は….
「そこが一番の問題です。カミラさんの名前を知っているのは恐らくルータルだけでしょうし、この手紙にはカミラさんの名前が入っています。という事は….」
「ルータル側の人物って事ね」
「そう言う事です」
やはりラズカも同じ事を思っていた。これを無理に行ってしまえば、ルータルと同じように、戦闘になってしまう可能性がある。それに参加ありがとうございますとも書いているし、一体誰がそんなことをしたのだろうか….検討もつかない。
「カミラさん….行ってみましょう」
私が悩んでいると、ラズカが言った。
「冗談でしょ?もし本当にルータルと関わっていたなら、また戦闘になるかもしれない。そんなリスクを冒してまで….」
「それでも、行ってみる価値はあると思うんです。」
ラズカの目が少しづつ変わっていく。それは、あの時と同じ本気の、少し虚ろな濃い青色の目。
「今はその価値のことをカミラさんに言えません。でも、そのうち知ることになるでしょう。」
「それって….」
「出発の準備をしましょう。今日のうちに出発したら、恐らく夜明けまでには着きます。」
ラズカの目は、いつの間にか元の綺麗な透き通った目に戻っていた。
「ラズカが言うなら….分かった。準備してくるよ。でも、あまり自分で抱え込まないでね」
この声掛けが今自分の出来る最善の行動だったと思う。ラズカはいつもより元気な笑顔になり、
「ありがとうございます。じゃあ、私も準備してきますね!」
そう言った。私も部屋に戻り、準備をする。また忙しくなりそうだ。
Lazka point of view
「まだ言わない方がいいですよね….ヴァンパイアの本当のことを、そして薬のことも」