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3日後。
ネットの秘匿ラインから、ハッカー仲間のエンジェル=ルーズベルトから連絡が入った。
《やばい、親父さんたちの部隊、衛星にロックされてるわよ。敵、動いてる》
僕のゲーマー仲間は世界中に広がっている。
だからいろんなところから情報を収集、衛星通信情報なんかも、まあ、よろしくないけどリアルタイムで傍受したりしている。
《罠だ。隼人、撤退を伝えた方がいいわ》
《無理だ。もう、彼ら、通信を絶っているよ》
《……傍受した衛星の画像、そっちに転送するわよ》
急に画面が切り替わる。
モニターに映るのは、上空からの衛星映像だ。
灰色の市街地。その中を貫く太い通り。青山通りだ。
画像はズームされてゆく。どうやら市ヶ谷の防衛省のようだ。今は救援軍の拠点が置かれている。
さらにターゲットを絞ってゆく。
中央の建屋。その裏側を移動する人の姿。影絵みたいに動いてゆく。
おそらく親父達のゲリラ部隊だろう。
人間の熱反応。
そして、その周囲に無数の赤い三角形が表示されている。
これは……
敵の偵察ドローンの配置データだ。
「まずい……完全に囲まれてる」
美咲も画面を覗き込む。
息を呑んだ。
「これ、ライブ映像?」
「ああ。リアルタイムだ」
映像の中で、誰かが振り向き、仲間に何か指示を出している。
建屋の中へ入ってゆく。
《旧施設の監視カメラが一部生きてるみたいよ。そいつも転送するね》
画面が分割された。
その一つは、長い廊下を映している。
暫くすると、反対側から人の姿が現れた。
用心しながらこっちに進んでくる。
突然、画面の下から火線が交差した。待ち伏せだ。
狭い廊下だと逃げようがない。敵は、わざとここまで侵入させて一気に勝負をつけるつもりだ。
一番先頭の人物が倒れる。
その背後から、別の人影が現れた。
「!」
動画がバグったかと思った。
人影は次の瞬間にはあり得ない場所に高速移動。そのままカメラ手前の、おそらく救援軍の射撃陣に突っ込んでいった。
あっという間に攻撃が止まる。
おそらく、この動き、親父だ。
加速術、捷径の理(しょうけいのことわり)を使ったに違いない。
敵が沈黙したのを確認してるのだろう。しばらくしてから後続の部隊、おそらく親父のゲリラ部隊だろう、が進んでゆく。
モニターは次のカメラ視点に切り替わる。
今度は廊下の奥が見える。そこにフルサイズのバリスティックシールドの壁。
隙間から銃撃。
ゲリラ部隊側から手榴弾のようなものが投げられた。
「――っ!!!」
閃光。続いて、爆炎。
画像が戻った時、散乱したシールドと人間が映し出される。
10人ほどだろうか、兵士の集団が残っている。銃を構えている。
そこに先ほどの男が影のように浸透してゆく。あっという間に距離が詰められる。
接近戦だ。
双方、ライフルは捨て、短銃とナイフでの格闘戦になった。
ここでも、その男のスピードは異次元だった。
五角形の動き。
相手は人形のように倒れてゆく。
最後の一人と相対する。交差する影と影。
一瞬で勝負はついた。
再び、ゲリラのメンバーがカメラの視野の中に現れる。
廊下の突き当たりの扉を爆破、その先へ進んで行く。
その時だった。
画面の手前に敵の姿が突如出現。再び火線が交差する。地上から別の敵部隊が追い縋ってきたのだろう。
ゲリラの一番後ろのものが振り返る。背中から長い竿のようなものを引き出す。肩に乗せる。
R P Gだ。そのままこの狭い廊下でぶっ放した。
凄まじい閃光。
――ノイズだらけの映像。
おそらく、カメラが吹き飛んだのだろう。
次の瞬間、再び上空からの衛星映像に切り替わった。
再び上空からの画面。写真のように動きはない。
ドローンの位置情報だけが、これがライブであることを示している。
親父達、どうなったんだ。
僕は息ができない。机にしがみついたまま、モニターを見続ける。
《首相官邸にでも戦闘が始まったみたい》
ゲーマー仲間が情報を送ってくる。
《そっちに切り替える?》
《いいや、このままにしてくれ……》
《オッケー》
僕は、上空からの市ヶ谷基地を見続けた。ジリジリするような時間。30分も経ったろうか。
「あ!」
衛星画面が光で塗りつぶされたのだ。次に同心円上に白い衝撃波が広がってゆくのが見える。
巨大爆発だ!
そして、衝撃波と土煙の後には、ただ、巨大なクレーターが開いていた。
まるで隕石でも落ちたようだ。
もはや、地上19階、地下4階建てのビルは、跡形もなかった。
「……うそ、でしょ……」
美咲が息を呑む。
僕はモニターを掴み、叫んだ。
「親父! 応答しろ! 親父ぃっ!」
衛星画像は、ただ巨大なくぼみを映し続けていた。
夜になっても、僕は、モニターの画面を消せなかった。
爆炎の残像が、網膜に焼きついて離れない。
北鎌倉での親父の声が耳の奥で反響していた。
未来って、頼んだ、って──何を?
「……僕に、何を託したんだよ」
拳を握る。爪が掌に食い込む。
そのとき、美咲が背後から僕を抱きかかえてくれた。
「ねえ……」
彼女の柔らかい体は、やっぱり温かかった。
「あなたが、今ここにいる。それで十分よ」
「……でも、親父は」
「あなたのお父さんは、あなたに『未来は頼む』って言ったのよ」
沈黙。工場跡の地下室。蛍光灯がちらちらと瞬き、遠くの海鳴りが、かすかに響いたような気がした。
美咲が僕の肩に頭を寄せた。
髪から、火薬と潮の匂いがした。僕はただ、彼女から離れることができなかった。
外では風が吹き、工場の鉄骨が鳴っている。遠く、東京の空にはまだ赤い炎の名残が漂っているに違いない。
その晩、市ヶ谷が、父と共に、沈んだ。
僕は決意した。
ここで終わらせない。
「量子コイン」と「金窪流」
この両方を使って、この国を立て直さなければ。
「美咲、次は……僕たちの最後の決戦だ」
美咲が頷く。
「だけど、うまくいかないかもしれない。自信がないんだ。だから……君を巻き込みたくない」
僕は、正直になろうと決めた。
「ううん、あなたとなら、どこまでも付き合うわ」
彼女が微笑んだ。
僕たちは自然にキスをした。もう、彼女の体温なしではいられなかった。彼女も受け入れてくれた。
そのまましばらく僕たちは唇と、そして舌先でお互いを確かめ合っていた。
ゆっくりと僕は彼女の肩に手を回した。その下でシャツ越しに彼女の形の良いバストが当たる。
予想よりずっと柔らかい。
少し触ってみた。もう少し。あと少し。
それから、ちょっと感触の硬いところを指先で感じた。人差し指でその感触を確かめる。
彼女が深いため息を漏らす。
さらに動かす。
美咲が腰をうねらす。
僕は少し大胆になった。彼女の唇から離れ、頸に唇を這わせた。
彼女の息が速くなる。体温も高くなったような気がする。
彼女のシャツのボタンに手を掛けた。一つ、二つはずす。
その下に白いブラジャーに包まれた魅力的な膨らみが直接見える。
白いヘリを押し下げる。小さな膨らみが隙間から覗いた。
僕は人差し指を差し込み、それを柔らかく押した。それから、顔を下げ、口に含んだ。
「あぁ」
美咲ははっきりと声に出した。
彼女のエスプレッソ色の瞳が徐々に琥珀色になってゆく。
僕たちは、そのまま寝袋の上に倒れ込んだ。
彼女の吐息が僕の耳に吹き込まれる。
そうして、僕は彼女の中に入っていった。
#ファンタジー
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