テラーノベル
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小春「海音がいつも家からあの待ち合わせ場所まで歩いている場所は……ここだな」
小春は辺りをみ渡す。草むらや木の下も探したが海音はいなかった。
小春「どこにいるんだ……ん?」
小春はある物を拾った。
小春「これは……」
「「おれがあげた海音のピン留め」」
小春「海音が自惚れじゃなかったらおれのあげた物を捨てるとは想えない。多分……海音は……」
プルルルル プルルルル
小春「瑠璃人さんから電話だ!」
ピッ
小春「海音はどうでしたか?」
瑠璃人『海音は……おそらく攫われた』
小春「やっぱり……海音のピン留めが落ちてたので……」
瑠璃人『海音は……母親に攫われた。自分の母親に』
小春「え、どういうことですか?」
瑠璃人『小春は知らないと思うが、海音と海音の母親との間には接近禁止命令が出ていて、それが最近解除されたんだ。海音の母親は……海音に復讐するつもりなんだ。自分の人生計画をめちゃくちゃされたとか言って……とんだ逆恨みだよ』
小春「…………」
《ママ……》
あの保健室に行った時、海音はお母さんを呼んでいた。
海音はきっとすごくお母さんが恐くて、
お母さんが……
小春「大好きなんだろうな」
瑠璃人『何の話だよ』
小春「いえ……何でもないです。それで海音は一体どこに?」
瑠璃人『おそらく海音の母親の家だ。あのヒステリックな母親のことだ。危ないことをしてるかもしれねぇ。早く助け出さないと……』
小春「でもどこに家があるのか分からないんじゃ……」
瑠璃人『一応助っ人を連れてきた。今からお前と合流するからお前は例の待ち合わせ場所で待ってろ』
小春「分かりました!」
瑠璃人は助っ人を連れて、小春と合流した。
瑠璃人「待たせたな。悪ぃ」
小春「それは良いんですけど……助っ人って……」
「「雨花さん?!」」
助っ人は「雨花」だった。
雨花「話は聴いてるよ。海音ちゃんが行方不明なんだよね?」
小春「そうなんです!早くみつけないと……」
瑠璃人「オレが知ってる一番強い人は雨花だしな。」
雨花「わたしは強くなんてないよ。……本当に」
小春「とにかく早く海音を助けましょう」
瑠璃人「でも心当たりが……」
雨花「海音ちゃんのお母さんと繋がりある人を探せば良いんじゃない?例えば……」
「「海音ちゃんのお父さんとか」」
瑠璃人「あ」
小春「ていうことは瑠璃人さんのお父さんでもありますね」
雨花「盲点だったのかな?あはっ!可能性があるところは全部行こう」
瑠璃人・小春「おう!・はい!」
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雨花「ここが瑠璃くん家なんだね」
小春「で、」
「「でっか?!?!」」
瑠璃人「まぁ一応当主とかいるからな。……ってそんなことは良いんだよ。ほら行くぞ」
雨花、瑠璃人、小春は家の中に入っていった。
瑠璃人「お父さんの住んでるところは複雑に入り組んでいて、簡単には行けねぇんだ。息子のオレも中々行けない」
雨花「でもご飯とかどうしてるの?」
瑠璃人「お父さん専用の召使いが運んでる」
小春「じゃあその人の跡を追いましょう」
雨花「でも気配に敏感かも……わたし先に行く」
瑠璃人「行ってどうするんだ?」
雨花「その人の跡を追って目的地に着いたらお父さんの召使いを全員気絶させて、瑠璃くんと小春くんを中に入れる。そうすれば瑠璃くんのお父さんに会える」
小春「それ雨花さんしかできない芸当ですよ……」
瑠璃人「でもそれしかない。頼んだ。雨花」
雨花「はーい」
雨花は、早速キッチンに忍び込んだ。
「そろそろ旦那様の御膳を出さないと」
「冷酷よね……あの人。瑠璃人様も海音様も可哀想に……」
「そういえば知ってる?海音様行方不明なんですって」
「確か噂では奥様との接近禁止命令が解除されたとか」
雨花「(もう噂になってる……噂になってることを知られたら警戒して海音ちゃんの居場所を変えられるかもしれない……その前に早く海音ちゃんのお父さんに会わないと……)」
雨花は召使いたちの話を聴いていた。
「じゃあ行ってくるわ」
雨花「(よし)」
父親の元へ御膳を運び出した。その召使いの跡を追う雨花。
雨花「ここから入るんだな。流石に道のり全ては覚えられないから、ヘンゼルとグレーテルみたいに道に印を付けていこう」
雨花は気配を探られないよう跡を追い続ける。
「旦那様。お食事をお運びに参りました」
「あぁ、そこに置いておいてくれ」
雨花「あれが瑠璃くんと海音ちゃんのお父さん……厳格そうな人だな」
召使いは食事を置くと素早く帰っていった。
雨花「どんだけ嫌われてるんだ……瑠璃くんの一族のパパ上様とママ上様は……傍若無人なのかな」
雨花は元来た道に戻り、瑠璃人と小春を無事に連れてくることが出来た。
瑠璃人「で?どうするんだ?お父さんの元へは着いたが……」
小春「どうすれば良いんでしょう……」
雨花「ここまで来たんだよ?もう堂々としてて良いでしょ?こんな風に……」
「「たのもうーーーー!!!!」」
瑠璃人「ば、バカ野郎!!!!」
小春「そんなことしたら……」
二人が慌ててると……
「誰だ?」
とても低い声の返答が帰ってきた。
瑠璃人「お、お父さん……」
小春「こ、こんにちは」
雨花「こんにちは」
「…………何で瑠璃人がいる?そしてその二人は誰だ?」
瑠璃人「そ、その……」
雨花「…………」
自分の父親なのに足元をみなくちゃいけないなんて……
なら……
雨花「単刀直入に言います。海音さんの居場所を教えて下さい。もしくは、海音さんのお母さんの居場所を教えて下さい」
「知らない。知っていたとして部外者の君に教えるわけないだろう」
雨花「じゃあ瑠璃人さんになら教えてくれますか?」
足元をみろっていうタイプは案外こういう真っ直ぐ突っかかってくるタイプに慣れてないはず
「…………瑠璃人は、愛人の息子。海音は本妻の娘だ。全く別々の家族。教える義理はない」
雨花「でもあなた、海音さんと瑠璃人さんのお父さんですよね?全く別々ではないと想いますけど。腹の探り合いは結構です。早く教えて下さい」
瑠璃人・小春「お願いします」
「……海音は」
瑠璃人・小春「!」
雨花「…………」
「海音という存在は……」
「「いらないんだ」」
瑠璃人「は?」
小春「え」
雨花「…………それ海音ちゃんに言ったんですか?」
父親は雨花たちに近づいてくる。
雨花「そのセリフを海音ちゃんに言ったんですか?」
「あぁ」
「「言った」」
雨花「…………」
瑠璃人「ふざけっ……!」
小春「ふざけるな!!!!」
小春は父親の胸ぐらを掴む。
小春「良いか!?親が子供のことを愛するのが当たり前じゃないように子供だって親のことを愛するのは当たり前じゃないんだ!!!!あなたたちに虐げられた海音の気持ちを!あなたたちのことが大好きな気持ちを!あなたたちは踏みつけにし続けてるんだ!!!!」
瑠璃人「小春……」
小春は血管が浮き出るほど怒っている。
小春「海音の場所を教えろ」
「だから知らないんだ」
瑠璃人「あなたは……何がしたいんだ。どうして海音をそこまでして虐げたいんだ」
「海音が生まれて来なければ、海音の母親とはもっと早くに別れていたんだ。海音の出来が良ければ海音の母親も利用価値があったがな。私は瑠璃人の母親の方を愛していた。海音の母親は私に捨てられるのが嫌で海音にきつく当たってたんだろうな。あの女のことだ。他所からやってきたから私の一族内で馬鹿にされたりしたんだろう。それを見返すには海音を当主にする必要があった……という訳だ」
雨花「…………」
瑠璃人「そんなの海音には関係ねぇじゃねぇか!海音はたまたまお前らみたいなクソ親の元に生まれただけだ!それなのにどうして海音が苦しまなくちゃいけないんだ!!!!」
小春「海音は……何も悪くないのに……」
「私からすれば海音は邪魔者。あの女からすれば管理物。ただそれだけだ」
瑠璃人も小春も言葉を失ってしまった。
こんなにも言葉は届かないものなのだと。
無残にも散っていくのだと。
しかし……
雨花「よく分かりました」
瑠璃人・小春「!」
雨花の声色はとても淡々としていて、その声には怒りも憎しみも悲しみもなかった。
雨花「あなたたちが海音ちゃんを愛していないことも、傷つけたいこともよく分かりました。きっとあなたたちのような人間のことを「言っても意味がない」という人間なんでしょうね。あなたたちが海音ちゃんを容赦なく殺し続けるなら、わたしも……」
ドッゴォォォォン!!!!
「なっはっ!!」
小春「雨花さん!」
瑠璃人「右ストレートが綺麗に決まったぜ!」
雨花「わたしも……」
「「あなたたちを殺し続けます」」
さっきまでとは違い、圧倒的にドスの効いた声で父親に告げ、ぶん殴る雨花。
「ふ、ふざっ……な、何だ……体が動かなっ……」
雨花「あなたの脳みそに振動を与えたのでしばらくふらふらすると想います」
「なので」
雨花「これからわたしがあなたを拷問します。海音ちゃんの居場所を教えるまで。ずっとやり続けます」
「せ、正義感のつもりか?」
雨花「正義感?そんななまっちょろいものじゃないですよ。正義感なんて優越感に浸るだけの自己満足です。わたしがやってる理由は……」
「「単純に親という立場を都合よく利用して子供の善意に漬け込んでることがキモイなって想ってるからってだけです」」
「き、キモイ……?」
雨花「海音ちゃんはあなたたちご両親の悪口なんて一言も言ったことないですよ。あなたたちがこれまでやり直せる範疇でいられてるのは海音ちゃんがあなたたちを庇ってきたからです。あなたたちは親という立場にいるくせに、子供に守られているんです。あなたたちは親という立場にいるだけの大人のふりをしてるだけのクズです。親が子供を守るものだと誰しもが言いますが、子供がいるからその人は親になれたわけで、親という立場を守ったり、親の言う言葉で成長してくれる。それが子供です。つまり本質的には子供が親を守ってるんです。それが親子なんです。だから親は守ってくれてる子供を守ろうとするんです。あなたたちはどうですか?子供に守られてばかりで全く守ろうとしてませんよね?だからあなたたちは親じゃないんですよ。親になった気でいるだけです。」
「お前みたいなガキには分からないんだ……海音のせいで私は……」
雨花「それなら結婚しなきゃ良かったんです。あなたが愛した人と一緒にいられることを望めば良かったんです。そうすればあなたの望むことが叶ったのではないですか?あなたたちは自分の手で今の道を選んでるんです。それを人のせいに……ましてや自分の子供のせいにしないで下さい。逆恨み以外の何者でもないですよ」
「…………」
雨花「さぁ次は……爪をはぎます」
「ま、待ってくれ!!頼む!!」
雨花「待ちません」
「言うから!!海音はあの場所にいる!!」
雨花「……何故言う気に?」
「お前なんかに説教されてる状況がちゃんちゃらおかしくなったんだよ!!」
雨花「…………」
ドッゴォォォォン!!!!ドッゴォォォォン!!!!ドッゴォォォォン!!!!ドッゴォォォォン!!!!
雨花「…………」
瑠璃人「やり過ぎだ」
小春「おれはスッキリしました!」
雨花「あはは!じゃあ行こうか!」
「「海音ちゃんの元へ!」」
雨花「もしここが嘘だったら、どこにいても探し出して拷問の続きしますからね♡」
「ひぃ!」
あぁ またここにいたんだ
ここは ママの用意した勉強部屋?
そういえば 雨花たちと会ってから
ママのこと あんまり想い出してなかったな
そのバチが当たったのかな
だからこの部屋に閉じ込められたのかな
ここは……
嫌だなぁ……
暗くて 寂しくて
ペンに血が滲むまで書き取りをされて
暗記できるまで寝ることもできなくて
いつでも完璧じゃないといけなくて
このまま死んでいくしかないのかな
それなら最後くらい
瑠璃兄と小春の夢がみたかったな
「海音」
え
「海音」
もしかして瑠璃兄と小春?
瑠璃人「そうだぜ」
小春「良かった。また会えて」
……うん!
瑠璃人「よく頑張ったな」
小春「偉いぞ。海音」
……ありがとう!
瑠璃人「そろそろ休まねぇか?」
小春「こんなに耐えたんだからもう休もう」
……私ももう……休みたいな
もう本当に疲れたの……
瑠璃人「じゃあオレたちの元に帰ってこいよ」
小春「そうじゃなきゃ困る」
……でも、ここ夢の中だし
瑠璃人・小春「ぷっふふ・ふはっ!」
?
瑠璃人・小春「夢じゃないよ」
え
海音はみ渡すと、自分が狭いワンルームの部屋に横になっていたことが分かった。
海音「あぁそうだった。私、ママに気絶させられてふらふらの頭でこの部屋に投げ飛ばされて、閉じ込められてんだ……」
「あっ」
「「ママは?!」」
雨花「気絶してるよ」
海音「雨花!!気絶って雨花がやったの?」
雨花「ごめんね?海音ちゃんのお父さんと全く同じこと言ってたから頭にきちゃって殴っちゃった!……すみません」
瑠璃人「何とかみつかって良かった!」
小春「本当ですよ。……あっそうだ。はいこれ」
小春は桜模様のピン留めを海音に返す。
小春「お前の落し物」
小春は海音の髪に付ける。
海音「……うっ……ぐっ……」
瑠璃人「さっき小春が言ってたけど……また会えて良かった」
小春「おかえり。海音」
「うん」
海音「ただいま!」
海音は瑠璃人と小春の腕の中で泣き続けた。
雨花「良かったね。海音ちゃん」
その後、海音の母親には再び接近禁止命令が出令された。本来なら逮捕されるところを海音が猛反対し、何とか接近禁止命令で済んだ模様。
父親は、雨花におど……説得され、海音に今後一切傷つけるようなことをしないように。と契約させられた。
こうして、海音は無事発見され、元の日常が戻ってきた。
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