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斐ウィ神@低浮上
「がはははっ……!!ぎゃはははっ……!!」
彼女は不気味は狂ったような笑みを高らかに上げる。
「十字架も聖書の詠唱ですらも効かなくなったとは……悪魔の憑依数も呪いも全部が前例のない異常な事ばかり……どうしたら……」
祓魔師、シスター。悪魔と対峙し、悪魔を祓う責務を背負う者として目の前に立ちはだかっている役目から逃げる訳にはいかない、目の前に救わなければならない人が居るんだから。
「はははっ……!」
ニヤリと口角を上らせ、目線の先で無様に立ち尽くしている祓魔師達を嘲笑う。
「人間は非常に愚かだ、惨め……我々を呼び寄せた奴らと同様にな」
「そういえば、そんな事を言っていたわね。誘いに応えただけ…‥と、やっぱり今回の悪魔事件の全ての引き金は悪魔崇拝者達……それで、彼らは死んでるの?それともまだ存命してるのかしら」
「そんな事を知る訳がない、だが言える事があるとするなら…あの人間共は相当な怨念と我々悪魔に対する絶対的信仰心を抱いてるのを感じた」
悪魔がヴェルリナの主人格を奪っている今、その状況を逆手に取って利用し、悪魔事件の完全解決に向けての糸口を何か掴めるかと思ったが、そうとはならなかった。
「…………さて、一体いつまでヴェルリナちゃんの体を苦しめる気?私達だって貴方達の事を祓えない訳じゃない、数年……それ以上かかってもずっと悪魔祓いを止めない。完全にヴェルリナちゃん身体から取り憑いている悪魔全てが祓い切るまでね」
そうエリミアは悪魔に対し、少し挑発的に煽る。
「挑発のつもりか……?下らない戯言は終わりだ、そんな無駄な足掻きを続けて何になる」
悪魔は、終始祓魔師達を見下し、失笑する。
一方で、祓魔師達だって黙ってる訳にはいかない。しかし、思考を読まれている……それだけではない、悪魔に有効とする手段さえ碌に活用できないとなると……。
「ヴェルリナちゃん、絶対に貴女は私達が助けるからね」
エリミア達は十字架をヴェルリナの視界に入るように、四方八方から複数のシスターや祓魔師で悪魔祓いをする。
「さあ、邪悪な悪魔よ。地獄の底へ舞い戻りなさい」
「ぐうう……ぐううう……ああああああああっ……!」
やっとの事で悪魔の沈静化に成功し、するとヴェルリナは気を失い、倒れ込んだ。
「はあ、やっと落ち着いた……それにしても厄介ね。悪魔憑きの事象を重ねる度にヴェルリナちゃんの意識と意思を乗っ取る時間が長くなってる、完全に人格が奪われ始めてる。何か他の方法を見つけないといけないわ」
「ああ、本格的に悪魔祓いを開始させる為にもまた場所を移そう」
「ええ、そうね。そろそろ悪魔祓いの儀式を執行していかないと…ヴェルリナちゃんを救う為にも」
そう言って気絶したヴェルリナを抱えたままエリミア達はとある部屋へと場所を移した、その場所というのは……。
「此処は……?」
「此処は悪魔憑き患者に対し、悪魔祓いを行う場所で執行する際は此処で行っている。監獄みたいに鉄格子の檻のような構造にしている、悪魔付きの状態の人間は例え未成年の子供であっても侮れないんだ」
「悪魔祓いが始まれば…‥ヴェルリナは元に戻るの……?」
「直ぐには戻れない、これまでに何度も明言している通り此処から先は本格的にヴェルリナちゃんに取り憑いている悪魔を全て完全に祓う作業の段階に入る、言葉だけを読み取るなら安易に思えるかもしれないけどヴェルリナちゃんに取り憑いてる悪魔の正確な数は未知数、とにかく全身に纏い憑いている」
「そんな…………………」
しかし、それでも悪魔事件解決へ一歩前進する事になるのは確実だ。
「……………………」
「ヴェルリナ……」
「これからの悪魔祓いは完全完了するまで、此処から先は数年……数十年単位で見込む必要がある、あの部屋よりはかなり閉鎖的で少々過ごしづらいかもしれないが、悪魔祓いが全て終了までの辛抱だ」
「ヴェルリナが元に戻るのなら、それで構いません……どうか、私達夫婦の大切な娘を救って下さい」
「ええ、勿論全力を尽くすわ」
そう話していると、気絶から目を覚ましてゆっくりと起き上がって辺りを見渡し、居た事のない空間の部屋、何より監獄の中のような閉鎖的な厳かな空間に困惑しているようで辺りを見回す。
「怖い?檻の中みたいで居心地が悪いかもしれないけど、これから先の期間は悪魔祓いの儀式の執行の都合で、この場所に移動させたの」
「此処で……悪魔祓いをするの……?」
「そうよ、此処から先は凄く長期的な悪魔祓いになるから疲労が溜まるかもだけど、頑張れる?」
「うん………頑張れる、これが終わったら私は良くなるの……? 」
「ええ、時間はかかるけど貴女を苦しめてる悪魔を全部祓ったら身体の体調も良くなっていく筈よ」
エリミアはそう言い、ヴェルリナの頭をそっと撫で撫で。撫でられたのが嬉しかったようで、彼女はエリミアに撫でられた事が嬉しくなり、ぎゅっと抱きついた。
「ふふっ」
「ヴェルリナちゃん、苦しくて辛い期間が続くけど俺達が居るから頑張ろうね」
「うん」
こうして長い年月を経て、漸く悪魔事件の終息に向けて第一歩に進めた一家と祓魔師達、解決までの道導が明確になってきた。
しかし、ヴェルリナに憑依している悪魔は彼女の身体を蝕み、全身を覆う程に無限に絡み憑いている、今も尚こうしている間にゆっくりと死滅への誘いが進んでいるのもまた事実。
「げほっ………おえっ…………」
ヴェルリナは突然嗚咽し、その後急激な吐き気が襲い……吐血した。
「はあ………はあ……はあ……うう、ううううっ……」
吐血の発症と同時に脳神経、上半身全体に強い痛みが襲い、身体は一気にぐったりとした状態になり、倒れ込むと今度は急激な脱力感に襲われ、全く力が入らなくなっていた。
「はあ……はあ……はあ…………」
「ヴェルリナ…………」
容態が急変し、危篤状態になり……昏睡。やはり、彼女の心身の状態は非常に深刻のようだ。
「かなり身体が衰弱してる、この状態が継続的になると考えると益々彼女は生死を彷徨う事になりかねない……」
「ああ、薄々こうなる事は見越していたが、それ以上に現実といのは残酷だ」
そんな不安を溢しつつ、悪魔事件の終息にやっと解決への道が切り拓いてる事を思い返すと少しは安堵できるが……。
「そういえば悪魔祓いは何時行うの?かなり長期的な大掛かりの悪魔祓いになるんでしょ?」
「彼女に憑依している悪魔の数と怨念や憎悪の力が強い事を考慮すると早めに取り掛かっておきたいのが正直なところだが、悪魔祓いというのは悪魔憑き当人にかなり負担がかかって体力が激しい」
「そうね、悪魔祓いの儀式中はその者に憑依している悪魔が抵抗しようと荒ぶる……悪魔の意識に乗っ取られてる時も体力の消耗量は激しいの。例えるのなら、出産の時と同じくらい」
「そんなに負担がかかるのね、悪魔憑きに陥ってる間は常に体力やエネルギーを奪われてるって事…?」
「ええ、その通りよ。だから今直ぐには取りかかれない…もう少し時間をおいて悪魔祓いは執行するわ」
「……………………」
母親は心配そうな眼差しでぐったりと横たわるヴェルリナを静かに見つめる。
「ううう……はあ……はあはあ……ん……んん…」
容態は非常に危篤な状態に陥っていて、元気のかけらも無く呼吸も不規則的、そして心臓の鼓動。
意識の乗っ取りと悪魔の怨念と憎悪、呪い……これらの要因が合わさって彼女の心身を諸共破滅へ詰め寄らせる。
「顔……益々青白くなって冷たそうに……血色も決して健康とは言えない、辛いね。ヴェルリナちゃん」
と若年の祓魔師はそっとヴェルリナの頬に優しく触れた。
「容態が少しでも回復に向かってくれたら直ぐにでも悪魔祓いを行えるんだけど…」
「仕方ないよ、彼女に憑依している悪魔はあまりにも多勢で本来の人格が喪失するのは必然的な結果だったと思う、寧ろ身体を覆う程に張り憑いている悪魔が呪っても尚、未だ絶命してないのはある意味奇跡だよ」
そう冷静に話す。やはり、経験を長年積んだ祓魔師やシスター達からしてもヴェルリナの悪魔事件の事例ケースは余程異常な事態らしい。
「これまで向き合ってきた悪魔憑き患者とは、まるで次元が違う……これはほんとにかなり長い悪魔祓いになりそうだね」
「ええ、かなり長期的な悪魔祓いになる……なるべくヴェルリナちゃんにストレスがかからないように慎重に少しずつやっていくつもりよ、貴方達のような若年祓魔師が居るのは何より心強いもの、ヴェルリナちゃんとも年齢がそれなりに近しいから、とっても助かってる」
「勿論、俺達も協力するよ。祓魔師として悪魔憑きに苦しむ患者を助け、元に戻すのが俺達の役目なんだからさ」
「ありがとう」
と、そんな会話をしているとこの施設に来てからエリミアやアルベスのような大人の祓魔師などが居る中で比較的ヴェルリナと年齢が近い若年層の祓魔師が多い事が気になったようで、そっと疑問を投げてみる。
「ヴェルリナと同じくらいの祓魔師やシスターがなんだか多い気がするような……ちょっと意外というか、不思議な感じ…… 」
「その理由は至って単純で、悪魔事件の多くが子供が憑依されてる事例ケースが殆どだからよ、けど偶に大人の人が悪魔憑きに遭って騒動になった事件ケースも幾つかはあるけど、大半は子供の事が多く、特にヴェルリナちゃんのような十代の子供が多い傾向にある」
「それに彼らの中には身内や知り合いや親戚といった関係の人間が悪魔に憑依され、その件をきっかけに祓魔師になった者も居る」
「だから道理で接し方がこんなにも手慣れてるのね、悪魔に苦しめ悩まされてる私達一家にとってほんとに頼もしくて有り難いわ、ほんとにありがとう……って言っても、まだこの先もずっとお世話になる事になって、申し訳ないんだけど……」
「ご安心を。時間は要する事になりますが、必ず娘さんは我々祓魔師が必ず救うと誓います」
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