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大城さんは思った以上に本当にできる人でなんでこんな人を主戦力に入れなかったのかと思うほどであった。
「病院は臨機応変に動かなきゃダメですし、学校で習った以上に勉強しなくてはいけないんです。昔から勉強するのは好きなので」
と彼女は微笑んだ。微笑むと可憐さが滲み出る。今までしゃべったことなかったししゃべっているところはあまり見なかったから彼女の口から出る言葉数と速さにはほかの社員たちも目を点にしていた。
課長も
「いやぁ、毎日のようにシステムの事を勉強して持ち帰って次の日にはもうできているからすごいもんだわ。これは助かる。派遣じゃもったいないよ」
「いえいえ今回はこのチームに入れて頂きありがとうございます」
謙遜する彼女の胸ポケットにはあのドラマのキャラクターマスコットが揺れる。すると山田課長がそれに気づき
「ずっと気になっていたんだが大城さんもドラマ見てるの」
「はい……課長もご存じで?」
とこっから盛り上がってくる。
「あ、うちに高校生の娘がいましてね……好きなアイドルが主人公の弟の友達役で出ているからって毎回付き合わされていてな」
「あぁー、久留米役のD-AY2の守尾くんですね。ちょい役だけどすっごいキーマンなんですけど私もすごくいい演技されているなって」
「お、でーず? のモリモリって娘が言っててなぁ。まーみんなどいつもこいつも同じ顔に見える」
「ファンの私もですけどねぇ」
と山田課長と大城さんの二人がこんなにも会話のラリー続くものかと驚く。そんなの夢のときにはなかった光景である。
大城さんなんて彼氏もいないから男性と話をするのは社員とでも苦手そうにしていたのに。
いったいどういうことなんだろうか。普段知らない顔だ。私の見ていないところではこういう顔なのか。
私はドラマを見ていない。やはり見るべきなのだろうか。同僚たちも見ている人が多いし。
でもドラマを見たところで何か変わるのだろうか。睡眠が大事。人気ドラマと言いながらも23時台。
深夜帯なのに異例のヒットというのは課長の娘さんみたいに役者目当ての視聴者を引き付けるのが上手いのであろう。
それから半月、大城さんが増えただけで少し楽になったけどもまだまだ……前よりも書類とか減った方だけどもやることは多い……ため息をついてふと立ち上がるともしかしてという感覚が。
数日前から兆候は感じていた。アプリを見ると生理予測日よりも少し前だ。来てしまったの?
でも大城さんの投入によって心身負担は少し余裕がある。私は席を外しトイレに向かった。今日生理が来てしまったらまたタイミング法も時期がずれるのだろう。
やはりしょせんアプリ。やはり病院に行かないとダメなのかな。もう一度謙太に伝えよう。それか私だけ病院に行くか……。
私だけの原因なら私が病院行くだけで私よりもさらに忙しい彼も病院に行く必要ないんだもん。
「あっ」
「ごめんなさい」
急いでいたのがいけなくて前から歩いてた女性に気づかずぶつかってしまった。すごくすらっとして目が吊り上がっててきれいな人。
私は目的のトイレに入ってやっぱり生理だと肩を落としオフィスに戻ると先程の女性が他の部署のところにいた。
彼女と話す隣の課の男性社員は鼻の下を伸ばしながらも彼女と何かを話しているようだった。この課には既婚者の女性しかいないからああいう可憐な若気のある女性はいないし、うかれちゃうよね。
私は近くにいる同期に聞いてみた。
「あの人はTOKIプランニングの営業の鷲見さんですよ」
と他の同期と顔を合わせて嫌な顔をする。
「男性社員にこび売っている感じ丸出し。前はどっかのデパートのお菓子持ってきて私たち女性社員の外堀を埋めてからぐいぐい来てるから気を付けた方がいいわよ」
と言いながらそのお菓子らしきものを彼女たちは食べている。いや、もう外堀埋められてるじゃんとか思いながらも私は自分の部署に戻った。
すると山田課長と大城さん、そして数人が取り囲んで談笑している。こんな光景見たことがない。大城さん以外の派遣の子もいるし確か断った社員の子たちもいる。
「白沢さん。彼女たちも分散して入ってくれるそうだ」
「そうなんですか」
一人の女子社員がこっそり耳打ちしてくれた。
「なんかここ最近課長と大城さんがドラマの話盛り上がってて自然と……なんかさ、入りずらかったんですよ。課長の顔大魔神みたいだし」
大魔神、と聞いて笑ってしまった。いやドラマの話きっかけでこうして集まることになったってかなり単純、ていうか最初から集まれたんじゃない。
私はちょっと拍子抜けだったが大城さん登用したことでこんなにもすぐ人が集まるだなんて。なんか不思議だわ。って私、人望無い? 大魔神フェイス課長もだけど私がいろいろやっても集まらなかったのに。
まぁしょうがないか。ここまでやってこれたのも……ね。前の会社に比べればと 思うと。