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お久しぶりですね

最近低浮上でごめんなさい、😣





⚠️⚠️⚠️⚠️⚠️

。ナイトスノウ

。かわいそ凛ちゃん

。かわいそ凛ちゃんママ





2.可哀想






「今のコース、甘いんじゃねぇの」


背中越しに伝わる優しさを持った声は、紛れもなくあの兄の声だった。


「おか、えり……」


ただ、兄の姿は、変わっていないようで、変わり果てていた。

隈ができ、明るく優しい顔は、希望を持ち澄み切っていた瞳は、曇っていた。





それから、急にMFになるとか言い出すから、冷静さが欠けて、言い合いになる。

1on1も始まって、俺は負けた。





「消えろ、凛」

「俺の人生に、もうお前はいらない」



そう冷たく突き放される。

追いかけなければいけないのに、身体が動かない。

待って、と言わなければならないのに、声が出ない。




なんで、約束したのに。

俺だって頑張ったのに。


努力を認めてもらえなくて、苦しんでることに気づいてもらえなくて、それがまたどうしようもなく辛くて、心臓を掴まれたかのように苦しくなって、生温い水が頬を伝う。

汗か涙か分からないが、顔をぐちゃぐちゃにして呻き続ける。


ただ、1人蹲って、寂しさに押し潰されないよう、息をし続けることしかできなかった。






自然と目が覚める。

時計に目をやれば、まだ2時。カーテンの隙間から差し込む光も少ない。


二度寝しようにも、寝付けない。

冷え切った身体を、温もりを忘れた心を、少しでも温めようと自分の身体を抱きしめて、眠気が襲うのを待った。





何かが割れる大きな音で目が覚める。

その音が止む気配はなく、母の甲高い叫び声とともに襲ってくる。


あぁ

また始まった。


母はストレスがたまると、兄と父がいない時に物に当たる。

今までも、俺を殴ったり、ひたすら部屋の物を壊し続けたり。

止めようとしても、自分がどれだけ傷を負おうと、気が済むまで止めることはない。




音が鳴り止み、静かになった下へ降りる。



リビングへの扉を開けて、辺りを見渡す。

食器棚から皿は引き摺り出され、机の上の紙類はぐちゃぐちゃに破り捨てられ、とにかくありとあらゆる物が投げられ、破壊されている。

掻きむしった手の甲と、爪と、硝子の破片が突き刺さった足から血が出て、涙混じりに床に広がっている。


「…ぇ、ねぇ、凛。」

「…なんで、どうして、冴は帰ってきたのに顔も合わせてくれなかったの?」


「凛が、……凛が、…冴になにか言ったの?」


か細い声で、そう問いてくる。

だが、母の中で答えは固定されている。


「ねぇ、凛は、いつもどうして余計な事ばかりするの?」

「どうして…?」

「どうして、凛はそんな出来損ないになってしまったの?」


「私の育て方が悪かったの?」

「私のせいなの?」


「私は一生懸命育てたのに!!」

「あの人から暴力を振るわれても、浮気されても、我慢して育ててきたのに!!!」

「辛くても、嫌になっても、ちゃんと育てたのに!!!」


「どうして、凛はできないの!!!!!」


母の高い怒鳴り声が、静かなリビングに響き渡る。


母の震える手が、振り翳される。



頬を叩かれ、じんじんと痛む。

それでも、何も言わない。



沈黙が流れた後、母は床に崩れ、子供のようにぐすぐすと泣き出した。









母は、可哀想な人だ。



父に愛を注がれなくなり、不倫され、言い争いが増え、殴り蹴られた。

それでも、離れたくなくて、まだ愛してくれていると信じて、離婚できなかった。


父がもう一度愛してくれることはなく、家にいる時間も減っていった。

帰ってきても、ストレス発散のために酷く扱われ、気が済むと、すぐに母を捨てまた家出ていった。


そんな父でも、信じることをやめられなくて、そのせいで母は壊れていった。

自分をもう愛していない父が、母は大嫌いだった。

だから、父によく似た容姿の俺を嫌った。


父に酷く扱われた自分が可哀想でならない。

母はいつもそう自分を憐んでいた。

そして、自分によく似た容姿の兄を、自分に重ね、憐れみ、大切にした。



母は、自分は辛くて可哀想だと信じる事でしか、生きていけなかった。

自分は世界で一番可哀想だから、きっといつか救われる。

自分は可哀想だから、何をしても許される。

そう信じなければ、死んでしまう。





母は、俺に似ていた。






あぁ、可哀想。

どうせ救われもしないのに、そう思わなきゃ生きられないなんて。

事実を受け入れられないなんて。事実を知れば、ショックで息が出来なくなるなんて。

希望に縋りつかないと生きられないなんて。


可哀想で、可哀想で、仕方がない。



もう、息をすることさえ、辛いと思ってしまうなんて。

なんて可哀想。



俺は、可哀想な人だ。







母は、俺と同じだった。




だから、


可哀想な母を、自分に重ね、自分と同じように憐んだ。




母は、俺の次に可哀想だった。





































































可哀想な子が、自分で自分を可哀想だと思ってるのが可愛くて大好きです💗






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コメント

5

ユーザー

分かります!! 可哀想って自覚してるの可愛いですよね😣💞

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