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恵
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#連載小説
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星キラリ

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分家筋のネコミミ美少女メイド——猫見こまに、遺産の相続権がある、と猫神八千代は言った。
親戚たちは騒然となった。
「なにを馬鹿なことを言っているんだ! この家の相続人が、そんな分家のメイドなどであるはずがない!」
居間に集まった親戚たちの怒号が飛び交う。二股のしっぽを持つ猫又・八千代は、金色の瞳で一同を見据え、傍らには黒いメイド服に白いエプロンの猫見こまが静かに控えていた。
八千代は優雅に口元を隠して微笑んだ。
「例え話じゃ。冗談ですよ、皆さん。妾が言いたかったのは、この家の血を引く者が、形式だけで決まるものではない——というたとえ話です」
親戚たちはどよめき、とりあえず静かになった。しかし「例え話」であっても、こまの存在が際立ってしまったせいで、メイドへの風当たりは明らかに強くなりそうだった。古い価値観を持つ親戚の視線が、こまの猫耳としっぽに刺さるように注がれる。
姫神姫と加賀美は、その空気を察して顔を見合わせた。姫はゆるふわの金髪を軽くかき上げ、できるだけ冷静な声で言った。
「とりあえず、今は食事にしましょうでごぜぇやす。調査は午後からでも遅くありません」
昼をすぎ、昼ご飯が運ばれてきた。豪勢な、群馬の食材を活かした食事である。猫見こまが自ら厨房に立ち、用意してくれたものだ。
まず目を奪われたのは、高崎名物のだるま弁当をアレンジした豪華版だった。大きく開いただるまの容器の中には、赤く染まった桜肉のローストビーフが層をなし、その下には群馬産のブランド豚・上州麦豚を使った角煮がとろけるように並んでいる。つけ合わせの赤飯は、山の幸たっぷりの栗と小豆がふっくらと炊き上がり、噛むたびに甘い香りが広がる。さらに、下仁田ネギをたっぷり使ったネギ味噌焼きは、甘みと香ばしさが絶妙で、熱々のまま口に運ぶとネギの旨味がジュワッと溶け出す。副菜のおっきりこみうどんは、平たい麺にきのこ、根菜、鶏肉が絡み、醤油ベースの出汁が染み渡り、郷土の温かさをそのまま感じさせる。デザートには、富岡の名産であるこんにゃくを使ったヘルシーなあんみつが添えられ、黒蜜のとろりとした甘さが後を引く。
姫は箸を進めながら、思わず目を細めた。
「……すごいですでごぜぇやす。群馬の食材をこれだけ活かして、しかも上品にまとめてある。こまさん、本当に上手でごぜぇやす」
加賀美も大きく頷き、角煮を頬張りながら短く言った。
「飯がうまいと、捜査のやる気も湧く。世話になったな」
こまは猫耳を少し伏せ、控えめに微笑んだ。
「お役に立てて光栄です、姫さん。警部補」
午後の調査が一段落すると、夕方になっても豪勢な食事は続いた。夕食はさらに手が込んでいた。みなかみの清流で獲れた岩魚の塩焼き、嬬恋キャベツを使った千切りサラダに上州牛のステーキ、そして締めに草津温泉近郊の蕎麦屋が特別に届けたという手打ちそば。出汁は鰹と昆布の合わせで、香り高く、喉越しが滑らかだ。姫と加賀美は再び舌鼓を打ちながら、屋敷の空気が少し和らいだように感じた。
夜になり、姫はやけに眠くなった。食後の眠気か、それとも屋敷の空気に何かが含まれていたのか。彼女は客間の布団に横になると、すぐに深い眠りに落ちた。
起きたら——縛られて、空室に監禁されていた。
両手両足を丁寧に縄で固定され、口には布が当てられている。薄暗い部屋には家具もほとんどなく、窓は板で塞がれていた。姫は目を見開き、息を殺して状況を把握しようとする。心臓が早鐘を打ち、冷や汗が背中を伝った。
(……タタリを呼ぶ生け贄に、されたのかも……?)
頭の中でその考えがよぎった瞬間、恐怖が頂点に達した。体が震え、制御が利かなくなる。熱いものが腿を伝い、シーツをじわじわと濡らしていく。姫は恥と恐怖で顔を真っ赤に染め、目に涙を浮かべた。失禁してしまったのだ。
その匂いにつられて、ぽぽぽぽ……という小さな音が聞こえた。
ドアの向こうから、ゆっくりと何かが近づいてくる気配。そして、鍵が外される音。
入ってきたのは、身長が百八十センチ以上ありそうな美少女だった。白いワンピースに白い帽子を被り、長い髪を背中に流している。肌は青白く、瞳はどこか虚ろで、それでいて恐ろしいほど美しい。彼女は姫の失禁した匂いを嗅ぎ取るように、小さく鼻を鳴らした。
笑顔は子供のように無邪気だ。しかし、その存在感は明らかに「人」ではなかった。
新しいタタリだった。
タタリは都市伝説のようにも姿を変えられる。かつては古い屋敷に住み着く怨念だったものが、今はこんな可憐な少女の姿を借りて、生け贄を求めている。
姫は震えて泣いた。縄に縛られたまま、涙が止まらない。新しいタタリはゆっくりと近づき、姫の頬に冷たい指を這わせた。
どうなってしまうのか。美少女探偵——姫神姫は、まだ答えを持っていなかった。
続く。
コメント
3件
ああ、これはぞくっと来ましたね……。 最初の豪華な食事シーンで群馬の魅力をたっぷり味わわせてくれたあと、夜になって姫さんが監禁される展開、怖すぎます。失禁してしまう描写がすごく生々しくて、彼女の無力さと恐怖がひしひしと伝わってきました。そこに現れた新しいタタリ——白いワンピースの美少女、「新しいお友達」って台詞が不気味で美しくて、もう続きが気になって仕方ないです。こまさんの料理の温かさと対照的な冷たい恐怖、本当に巧みだなあ。