未成年の俺に親の決定に従わない権限はなく、俺は泣く泣く女子高生として、編入する羽目になった。
素乃学園は、佐久間社長の多額の寄付で運営されており、編入試験も名前を書いただけで簡単にパスした。
金と権力の凄さをまざまざと見せつけられたわけだが、巻き込まれる子供の方は堪らない。
俺は、春休みの間に、親しい友達に別れを告げて回った。しかし、一番仲が良かった幼なじみの涼太だけはどうしても捕まらず、結局直接会えなかったのが唯一の心残りだった。
素乃学園の校門の前に、届いたばかりの制服を着て、俺は立っている。
バカみたいに金をかけたであろう、悪趣味な鉄壁の校門で、セキュリティが非常に厳しいらしく、厳重なチェックを受けないと中に入れないと聞いた。
俺は10分も前から係の教師が出て来るのを待っていた。
💙「おせえ……。それにしても、スカート、落ち着かねえ」
春休みの間に、社長に命じられて全身脱毛を強制的に受けさせられ、短いスカートからちらりと覗く脚元に男らしさは微塵もない。
それにしても中等部はセーラー服だったから、ブレザーの高等部でよかった……。
女装自体が異常事態なのに、既に受け入れ始めている自分に驚く。メイクはもともと好きなので妹の雑誌を見ながら難なく済ませた。
今朝なんて鏡の中の自分が可愛くて、ちょっとだけ見惚れてしまった。
💚「ごめんごめん、渡辺さん?」
校門ではなく、裏手の方から、シュッとした爽やかイケメンが現れた。
教師か?
身構えていると、いきなり握手を求められた。
💙「えーと、どちら様ですか?」
少し高めの声で尋ねる。髪が伸びるまで仕方なしに被っているウィッグの横髪で顔を隠した。
💚「あ!申し遅れました!僕、阿部って言います。阿部亮平です。君の担任で、数学の教師をしています」
話すと丁寧で、笑顔が魅力的だった。
こんな教師がいたら、女子高生が放っておかないだろう。
そんなことを思っていたら、ピンクに髪を染めたギャルっぽい女子高生が本当に後ろから現れた。
💙「うわっ!!」
🩷「阿部先生っ!おはようございますぅ」
💚「やあ、佐久間も迎えに来たんだね」
💙「佐久間っ!?」
佐久間社長には俺と同い年の息子がいて、この学園にいると聞かされてはいたが、この見た目は予想外だった。
なんで……女装シテルノ???
💚「あ。渡辺さん、こちら、生徒会長の佐久間大介くん。服装の趣味が少し個性的だけど、れっきとした男子生徒だよ」
自由な校風らしい。
いや、こいつがおかしいのか?
🩷「よろしくねー!パパにも渡辺さんのことは頼まれてるから、何でも俺に頼ってねっ」
佐久間の笑顔は人懐っこく、いい奴そうに見えた…けど、俺の正体も知っているのかはわからなかった。
佐久間は、阿部先生にずっと引っ付いていて、離れない。佐久間の性別を聞いていなかったら、あやうくそういう関係かと誤解するところだった。
💚「じゃあ、寮の部屋に案内しますから。僕について来てください」
俺が荷物を持とうとしたら、阿部先生がさっさとかなり重たい俺のトランクを代わりに引いてくれた。
💙「あっ!いいっすよ、俺自分で…」
言いかけて、しまった、と思ったが、阿部先生は少し目を見開いただけで、スルーして先に入って行く。俺は黙ってついていった。佐久間が俺の横を通り過ぎながら、
🩷「初日にゲームオーバーとか勘弁してよね」
と、低い声で言った。
コメント
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急な低音ボイスはビビらないかい?
ガチで人物の配置しか考えてないからここからノープランです🤣🤣🤣 ちゃんと最終回まで辿り着けるかな?応援してねw