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名古屋の街の戦闘が終わった後、雅也の野望は次なる段階へと進む。彼は単なる陸上での戦いにとどまらず、今度は水路—つまり、江戸と大阪を結ぶ重要な航路の支配を目論んだ。海上の交通が止まれば、物資の流通も断たれ、幕府の経済基盤を揺るがすことができる。雅也は、この航路を壊滅させることで、幕府を内側から崩壊させるつもりだった。
「海路を絶てば、江戸も動かざるを得ん。船の動きが止まれば、商人も動けんし、贅沢も支えられん。」
雅也は冷静に言った。
「商売と資金が途絶えれば、権力も絞まる。大阪から江戸までの航路を根本から潰すことができれば、あとは簡単や。」
橘はその計画に懐疑的だった。海賊団に頼んで航路を破壊するなんて、ただの破壊活動にすぎない。それが本当に倒幕に繋がるのか? だが、雅也の目に宿る炎のような決意は揺るぎない。彼はすでにその先を見越して動いていた。
「それじゃ、どうやって?」橘は尋ねた。
雅也は軽く笑みを浮かべて答える。「知り合いの海賊団に頼む。あいつらならやってくれる。」
雅也が指示したのは、江戸湾に出入りする海賊団「黒潮団」だった。彼らは幕府の監視をかいくぐりながら、違法に物資を輸送していたが、雅也の提案に対しては即座に応じた。なぜなら、雅也が提供する報酬は、彼らに魅力的だったからだ。
「お前の言う通りにしてやる。ただし、代償は大きいぞ。」
海賊団の頭目、黒瀬は強い意志を見せながら言った。「でも、そんなことで幕府を倒せると思うなよ。」
雅也はその言葉に動じることなく、冷徹に答える。「幕府が崩れれば、自由も広がるんだ。船を止めることで、新たな秩序が生まれる。」
黒瀬はしばらく黙ってから、うなずいた。「分かった。お前の言う通り、船を沈めてやる。だが、お前が言ってる“新しい秩序”ってやつが、俺らを圧倒することにならないようにな。」
黒潮団は、その夜、名古屋港から出航し、江戸への航路を封じるべく、早速行動に移した。最初に狙ったのは、江戸湾に向かう商船だ。雅也が指示したのは、商船を沈め、重要な交易の流れを断ち切ることだった。彼らは夜の闇を利用して、商船に忍び寄り、爆薬を仕掛けてその船を一瞬で沈めた。
「これで、江戸の商人たちが名古屋のやつとは顔を合わせられん。財政の基盤が揺らぐ。」
雅也は報告を受けると、冷静に笑みを浮かべた。
だが、これは序章に過ぎなかった。黒潮団はその後も江戸と大阪を結ぶ航路を次々と攻撃し、主要航路を封鎖し続けた。商船を沈めるたびに、幕府の体制は一歩ずつ揺らいでいく。商人たちは恐れ、藩の財政は逼迫し、幕府の重臣たちは焦り始めていた。
しかし、雅也が予期しなかった事態が起こった。幕府は、これ以上の被害を避けるために、海軍を派遣してきたのだ。その指揮を執るのは、幕府海軍の提督、山田兵衛という男だった。山田は、名将であり、江戸湾を守るために数々の戦いを乗り越えてきた者だ。
「黒潮団を許すわけにはいかん。」
山田兵衛は鋭い目つきで言い放ち、艦船を指揮して海賊団に立ち向かう準備を整えた。
「どうする、雅也?」橘は冷静に問いかけた。彼はこの戦いがどれほど危険であるかを理解していた。海軍の力を無視できるほど、黒潮団は強くない。雅也はその問いに対し、少しの間黙っていたが、やがて決断を下した。
「船をもう一度沈めろ。山田が来る前に壊す。」
雅也は再び命令を下した。その冷徹な声に、橘は再度驚きながらも、黙って従うしかなかった。