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奏でた僕らの恋

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奏でた僕らの恋

9 - 甘い瞳に僕だけ映して 🤍❤️

♥

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2025年07月06日

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「悔しいっ!もう一回やりたい!」

「いいよ、ラウールやりたいなら、もう一回やりな?」

「ありがとう!」



「じー…(おいしそうだな…いいなぁ…)……」

「…これ食べる?」

「っ!やったぁ!ありがとう!いただきまーす!」



あの頃の僕は、あれも欲しい、これもやりたいって、それも食べたいって、自分の気持ちを満足させたいばっかりで、自分のことだけを考えてた。周りの8人のお兄ちゃんたちは、なんでも「いいよいいよ」って許してくれて、僕は、深いことなんて何にも考えずに、それにずっと甘えてたんだ。


みんなの中でも特に、涼太くんはいつでも僕に優しくしてくれた。

僕がやりたいって言ったこと、食べたいと思ったもの、話したいこと、なんでも「いいよ」って優しく認めてくれて、なんでも叶えてくれた。

それは、僕がまだ子供だったの頃の話。




僕は今、21歳になって、そんな甘ったれな人間じゃダメなんだって、この世界で本格的に生きていくようになって、やっとそれがわかってきた。

大人になるにつれ、僕はこの業界の現実というものが、はっきりと見えてくるようになった。

我儘ばっかりじゃだめ、カメラの前以外でも「いい子」でいないと愛されない。すぐに見放されちゃう。

それは、まるで、頭から冷や水を浴びせかけられたような、そんな感覚だった。

今まで浸かりきっていた甘ったるい夢から、勢いよく覚めてしまった。そんな気分だった。



でも、僕は言いたいことは言いたいし、やりたいことはなんだって挑戦したい。


毒舌だって、辛辣だって言われても、それを楽しんでくれる人がいる、楽しみにしててくれるファンもいてくれる。だから、求めてくれる限り、頭で思ったことを抑えるなんてことはしたくない。

みんなが傷付いちゃうことは言わないよ?そのくらいのデリカシーはあるもん!


アイドルだけど、僕自身に与えられたものを無駄になんてしたくないから、モデルだって頑張りたい。 お芝居だって、とっても楽しいから、オファーしてもらえたなら、絶対にやりたい。


僕ができることはなんだってしたいんだ。だから、必要としてくれる人が、ものが、ある限り僕は僕らしく破天荒に生きていく。



いつだったか、僕のこの気持ちを涼太くんに言ってみたことがある。

涼太くんはいつもみたいに優しく微笑んで、「いいと思うよ、ラウールがそう決めたんなら、思う存分やってみな。応援するよ。」と言ってくれた。

僕は嬉しくなって、目一杯涼太くんに抱き付いた。

優しくて、格好良くて、いつだって僕を見守っていてくれる涼太くんのことが、大好きになった。


それはなんていうか、お兄ちゃんとか、先輩とか、そういうんじゃなくて、うーん、、一緒にいるとドキドキする感じ?

初めはそんな気持ちだった。

涼太くんの隣に立てるような、格好良い大人になるんだって思って、それはちょっと違うかもって思ったのがその後すぐのこと。

隣にただ立つんじゃなくて、今までたくさん僕を見守ってくれて、大事にしてくれる涼太くんを、今度は僕が守りたい、涼太くんと対等になりたいって思ったのが、その1ヶ月後ぐらいのこと。

また1ヶ月くらい経ってから、珍しく落ち込む涼太くんを見かけて、胸がきゅうっと鳴った日があった。抱き締めて、背中を撫でて、元気付けてあげたくなった時、僕の中にあるものが恋だってことに気付いた。

その2ヶ月後に、ほっぺたいっぱいにご飯を詰め込んでご飯を食べる涼太くんにキスしたいと思って、下心という気持ちを知った。



僕が高校生くらいの時、思い余って涼太くんに告白したことがあった。

大好きって、好きになっちゃったって、伝えたくなっちゃったんだ。

あわよくば、恋人になりたくて「付き合って」って、それも漏れなく伝えた。


いつだって、僕は僕のやり方で、伝えたいことは全部伝える。言いたいことは全部言う。体が動くまま。そうしないと不完全燃焼になっちゃう。何事も後悔したくないから。


僕のありったけを伝えたら、涼太くんは、

「ラウの気持ちが、大人になっても変わらなかったらね」と言った。



ガーンと頭をフライパンで殴られたような衝撃だった。

「大人になったら」って、、涼太くんにとっては、僕はまだ子供だったの!?

悔しいけれど、仕方がないや。

確かに僕はまだ高校生だ。もっと早く生まれてたらなって、この時の僕はとってもやるせなくて、振られちゃったし、諦めるしかないかなって思ったけど、涼太くんの顔を見たらそんな悲しさなんてどこかに吹き飛んでいっちゃった。



だって、涼太くん、すごく悲しそうな顔してるんだもん。

なんか、言いたかったこととは違うけど、こう言わなきゃいけないって思って、声に出せない気持ちに埋もれて苦しんでるみたいだった。

僕の告白に、涼太くんの目はうるうると喜んでいるのに、苦いものでも食べているみたいに口は歪んでいた。

ちぐはぐな涼太くんの表情は、なんだか、今の僕を受け入れたいのに、そうできないって、僕に伝えてくれてるみたいだった。


涼太くんは、いつも僕にすごく優しいのに、大事なところで急に苦くなる。

甘いのに甘すぎない。

嬉しそうに僕を欲しいって思ってくれてる顔をしてるのに、涼太くんは、僕のことを必要じゃないって言う。その甘さと苦さのバランスに僕の気持ちはこんがらがったけど、同時に、僕はもっと涼太くんに夢中になった。


告白した後も、涼太くんは僕が気持ちを仄めかさなければ、今までとおんなじように接してくれた。だけど、僕が少しでも涼太くんに迫れば、涼太くんは何かを察して逃げてしまう。

そんな涼太くんと、二人で繰り返すこの追いかけっこがクセになった。


多分だけど、涼太くんは僕のことを好きでいてくれてるんだと思う。

目を見ればわかる。

告白したあの日から、僕を見つめてくれる涼太くんの目が変わったの。

慈しむような?切なそうな?そんな目をしてくれるようになったの。


そんな最高の幸せ、他の誰にもあげない。


涼太くんの気持ちは、その目は、全部全部、僕だけにずっと注いでいて?


また伝えに行くから。

寝ても覚めても、僕は毎日涼太くんのことばっかり考えてる。

僕はとっくに涼太くんの虜なの。



また一つ大人になったら、涼太くんに成長した僕の想いを伝えなきゃ。


そのときはきっと、今よりももっともっと、涼太くんへの好きが溢れた僕で、今度こそ涼太くんと手を繋ぐんだ。



ねぇ、涼太くん。

ねぇ、僕のかわいい人。


それまでずっと、僕だけを見ていてね?











人間は誰だって、失敗する生き物だ。

その時々で感じる痛みはとっても辛いけど、それはいつか薄れていくもの。


あの頃の僕はまだまだ未熟で、18歳になっても未だに怒られることばっかりだった。

涼太くんに叱られる時は、いつだってへこんじゃってた。

情けなくて、穴があったら入りたくなるくらい、涼太くんに怒られるのが一番きつかった。

だって、もっと好きになって欲しかったんだもん。いつだって格好良くいたいのに、これじゃあまだまだ届かないやって、必要以上に落ち込んじゃってた。

他の誰かに怒られてる時も、近くに涼太くんがいたら、

「お願い聞かないで…ッ!!」って思うくらい、自分のことが恥ずかしくなっちゃうこともあった。

今となっては、そう思っていた頃が、なんだかとても懐かしかった。



でも、今振り返ってみると、なんだか僕はちっちゃいことで悩んでたなーなんて呑気に思えるようになってる。ずっと痛みが続いて辛い、なんてこと、そうそうあることじゃないから、今日も僕は傷付いたとしても、僕のままで踏ん張っていく。


僕が大学に入学して、19歳になった年の誕生日に、また涼太くんに告白した。

高校生の時の僕から、また成長したよって、涼太くんの中で、僕が涼太くんの言う「大人」になれたのなら、今度こそ僕の手を取って?と、そんな気持ちを 込めて差し出した手は、握り返されることはなくて、涼太くんは


「まずは、大学1年生頑張らないとね」


と言った。



だから、僕もう子供じゃないってば!!!!!!と反論したくなるのをぐっと堪えていた。




日進月歩って、僕の中の体感的にはすごく長い。

涼太くんに近づきたくて、毎日大人になるための努力は重ねてるけど、きっと涼太くんから見たら、あの頃の僕はまだまだひよっこだったんだろう。

そんな気の遠くなるような毎日と、ちょっとずつでしか成長できないもどかしさに、心が折れそうになる時もあった。

だけど、これも全部涼太くんを迎えにいくための修行、涼太くんの隣に立って、涼太を守れる男になるためだって思ったら、なんでもできそうな気がしていたんだ。


涼太くんのためなら、きっと、僕はなんだって頑張れる。



だから、涼太くんには僕の隣で笑っていて欲しかった。

怒られてしまうのも、僕が悪いのだから仕方ないけれど、あんまりちくちくしないで?

自分の不甲斐なさが悔しくて、涼太くんとの間に距離ができたみたいで寂しくて、僕、消えたくなっちゃうから。僕が消えちゃったら、涼太くんも嫌でしょ?

僕もそんなの嫌だから、僕はこれからももっともっと、転びながらも大きく、強くなっていくよ。



だからさ、涼太くん。

あのね、涼太くん。


もっともっと、ずっと僕だけを見守ってて?と願った。





めげずに挑んだ20歳の誕生日。

また、涼太くんに、「今」の僕の全部を伝えた。

大好きだって、僕が何歳になってもずっと誕生日がくるたびに伝えにいくって、ずっと涼太くんを好きな気持ちは変わらないって。涼太くんに、深くお辞儀をしながら差し出した僕の手は、面白いくらいに震えていた。


あの日、やっと、涼太くんが僕の手を取ってくれたんだ。


信じられなくて、嬉しくて、涼太くんがやっと、僕を大人として認めてくれたんだって、全部夢みたいでボロボロに泣いた。

そんあな僕をあやすように涼太くんは、僕を優しく抱き締めてくれて、何度も背中を撫でてくれて、「待たせてごめんね」と言った。





もうすぐ涼太くんと恋人同士になって1年が経つ。


関係が変わっても、僕が涼太くんに、もっと好きになって欲しいと思う気持ちは今もずっと変わらない。毎日涼太くんはどんな時にドキドキするのかなって勉強してる。


時には格好良く迫ってみたり、たまに可愛く甘えてみたり、ある時は自分に出来る最大限の色気を出して触れてみたり。


いつだって涼太くんは、優しく僕を受け止めてくれるし、涼太くんも嬉しそうにしてくれる。

自分で言うのもなんだけど、僕と涼太くんはとってもラブラブだと思う。

だからこそ、今いい感じなんだから誰も僕と涼太くんの仲を邪魔しないで、なんて意地悪なことを思ったりもする。

うん、絶対ダメ!涼太くんのことを好きなのは僕だけが良いし、涼太くんが僕以外の人のことを好きなっちゃうなんてことも絶対ダメなんだから!


草食系?なんていう時代がまたやってきてる気がするけど、僕にはそんなの関係ない。

いつだって、涼太くんとイチャイチャしていたいし、隙あらば涼太くんに触れていたいし、知識は少ないけど、この先もずっと涼太くんとどこまでも行きたい。


目黒くんと佐久間くんみたいな「大人の恋人」なんてものにも、もちろん憧れはあるけど、それと僕たちを比べたって仕方ない!僕たちには僕たちの進み方があるんだから、そんなの気にしてるなんて意味ないの。


いつだって、お互いがお互いを好きな気持ちがあれば良いの。



いつだって今が勝負。手探りなことばかりで、ちょっと目を離した隙に僕の気持ちは、すぐに怯んじゃってばかりだけど、涼太くんと過ごすケーキみたいに甘くてふわふわな 毎日が愛おしくて尊い。


ねぇ、涼太くん。

知ってる?涼太くん。



僕、いつだって涼太くんに夢中で、どんなときだって今すぐ涼太くんに会いたいの!!!






二人で抱き締め合いながら、僕は涼太くんに「もっと僕にドキドキして欲しいから、頑張ると」伝えた。そしたら、涼太くんは「もう十分ときめいてる」って言ってくれた。

でも、その後すぐ、涼太くんは照れて顔を隠しちゃった。


涼太くんはたまに、ちょっと抜けてるところがあるから 、きっとその言葉は、ついポロって出ちゃったんだと思う。それに気付いて、恥ずかしくて逃げちゃうなんて、とってもかわいい。



涼太くんの素直な気持ちはとっても甘いのに、涼太くんの体はいつもそっぽを向いちゃってしょっぱい。


甘いのに甘すぎない。




何年経っても、僕はそんな、ちぐはぐな涼太くんの虜なの。



こんなかわいい人、他の誰にもあげない。



この先もずっと、もっともっと好きにさせるから。

涼太くんが溺れちゃうくらいに好きって伝えて、示していくから。



だからね、涼太くん。

ねぇ、僕の愛しい人。





いつまでもずっと、僕だけを見ていてね。

























お借りした楽曲

Hey baby! / 倖田來未 様












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