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桜兎🌸🐇 @🥐
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嗎伽(まか)
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#krptイラスト
まとちゃ_1126
8,479
高校二年生の梅雨。どんよりとした曇り空から、ついに大粒の雨が降り出した。放課後の図書室は、雨音のせいでいつもより静まり返っている。
図書委員の志穂は、窓際の席で新着図書の整理をしていた。パチパチと窓を叩く雨の音を聞きながら、心の中で一人の少女の姿を思い浮かべる。
クラスの誰からも一目置かれる、陸上部のエース・遥。
明るくて、ひまわりみたいな笑顔で、自分とは住む世界が違う人。それなのに、志穂の心はいつの間にか、遥の姿を追うようになっていた。もちろん、そんなこと本人に言えるはずもないけれど。
「——ふぅ、やっと終わった」
志穂が息をついたその時、図書室の重い木製のドアが勢いよく開いた。
「はぁ、濡れたぁ……! ごめん、まだ開いてる?」
入ってきたのは、まさに今考えていた遥だった。
部活のジャージ姿の遥は、髪の毛先から雨の雫を滴らせている。にわか雨に降られて、練習を切り上げて走ってきたのだろう。
「遥ちゃん!? うん、まだ閉館まで時間あるよ。これ、使って」
志穂は慌てて自分のカバンからハンドタオルを取り出し、遥に手渡した。
「わあ、ありがとう志穂! 助かったぁ」
遥はタオルを受け取ると、くしゃくしゃと短い髪を拭いた。タオルから、志穂がいつも使っているお気に入りの柔軟剤の、淡いラベンダーの香りがふわりと広がる。
「あ……」
遥が動きを止めた。志穂の顔をじっと見つめる。
「どうしたの?」
「ううん。志穂の匂いだなって思って」
遥はいたずらっぽく笑うと、拭き終えたタオルを愛おしそうに両手で包み込んだ。その距離があまりにも近くて、志穂の心臓がドクンと大きく跳ねる。
「……風邪、ひいちゃうよ。制服に着替えてきたら?」
「うーん、もうジャージの下は乾き始めてるから大丈夫。それよりさ、雨が止むまでここにいてもいい?」
「いいよ」と答える前に、遥は志穂の隣の椅子にすとんと腰掛けた。
いつもなら大勢の部員に囲まれている遥が、今は自分と二人きりで、同じ雨音を聞いている。その事実だけで、志穂の耳の裏が熱くなった。
外の雨は勢いを増していく。
窓ガラスが白く曇り、図書室という空間が、世界から切り離された秘密の部屋のように思えた。
「志穂ってさ」
遥が机に頬杖をつきながら、窓の外を見つめた。
「いつも静かで、本をたくさん読んでて……私、かっこいいなって思ってたんだ」
「えっ……私が?」
予想もしない言葉に、志穂は持っていたペンを落としそうになった。
「うん。私、走ることしかできないから。志穂の周りだけ、いつも綺麗で穏やかな時間が流れてるみたいで、羨ましかったんだよね」
遥が顔をこちらに向けた。その瞳は、いつもの太陽のような明るさではなく、濡れた紫陽花のようにしっとりと、そして真剣に志穂を捉えていた。
「だからね、雨が降ってちょっと嬉しかったの。図書室に来れば、志穂に会えるから」
心臓の音が、雨音にかき消されてしまえばいいのにと志穂は願った。でも、静かな部屋の中で、自分の胸の鼓動はうるさいほどに響いている。
(どうしよう。遥ちゃんはきっと、深い意味なんてなくて言ってるんだよね……?)
自分の勘違いかもしれない、でも、これ以上優しくされたら期待してしまう。
戸惑う志穂の視線に気づいたのか、遥は少しだけ不安そうに眉を下げた。
「……変なこと言って、ごめん。迷惑、だった?」
「ううん、そんなこと!」
志穂は慌てて首を振る。
二人の間に、雨音だけが優しく流れる。
まだお互いの本当の気持ちは知らない。けれど、窓の外の激しい雨は、しばらく止みそうに全くなかった。
コメント
1件
なにこれ〜!!😭💕めっちゃ好き…!! 雨の日の図書室ってだけでなんかもう胸がぎゅってなるのに、図書委員の志穂ちゃんの静かな恋心がひたひた伝わってきてやばい…💘 あの、タオルの柔軟剤の香りで「志穂の匂いだ」って言う遥ちゃんがすでに距離詰めすぎててこっちまでどきどきしたよ!!あれ絶対わざとだよね??笑 雨音だけが優しく流れる中で二人の気持ちがこれからどう動くのか、めっちゃ気になる…続きが楽しみすぎる🌸✨