テラーノベル
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放課後。
人気のない会議室。
長机を囲むのは、FPEの教師たち。
サークルは静かに腕を組み、
ブルーミーは資料をめくり、
タヴェルは指先で机を叩いている。
エミリーは冷静な表情のまま、
デミは視線を落とし、
サーシャはどこか楽しげに微笑んでいた。
沈黙を破ったのは、校長・グレースだった。
「……報告を」
サークルが淡々と答える。
「転入生、内田一輝。
本日の事案において、アリスを数秒間拘束」
ブルーミーが続ける。
「観測上、光学的現象。しかし通常のフラッシュとは異なる波動反応」
「異物、ですね」
タヴェルが小さく言う。
会議室の空気がわずかに重くなる。
サーシャが笑う。
「でも、生徒は守られたわ。結果としては悪くないんじゃない?」
エミリーが静かに首を振る。
「問題はそこではありません。
“制度外の力”が校内で作用したことです」
デミが低く呟く。
「F制度の均衡が崩れる可能性がある」
サークルの視線が鋭くなる。
「彼は危険因子です」
一拍。
グレースはゆっくりと立ち上がった。
「いいえ」
その声は穏やかだった。
「彼は――抑止力です」
全員の視線が集まる。
「アリスは本来、制御不能。
我々が直接介入すれば、損害は拡大する」
グレースは続ける。
「内田は、制度に干渉せずに異常存在へ作用した。
それは偶然かもしれない。 だが、現時点では有益」
ブルーミーが眉をひそめる。
「管理下に置くべきでは?」
「当然です」
グレースは微笑む。
「監視対象とする。
F評価は与えない。
刺激もしない」
サークルの目が細くなる。
「野放しにする、と?」
「違います」
グレースは静かに言った。
「彼は“壁”になります」
アリスのような存在。
外部からの干渉。
それらを受け止める、緩衝材。
「必要とあらば、排除も可能です」
エミリーが淡々と付け加える。
会議は静かに終わった。
その頃、寮の部屋。
内田はカメラを机に置き、深く息を吐く。
(教師たち、何か隠してるな)
今日の視線。
特にサークルの目。
あれは敵意ではない。
“評価”だ。
自分は観察されている。
だが――
まだ排除されてはいない。
窓の外を見つめる。
「抑止力、ね」
知らぬ間に、自分は盤面の駒になっている。
森でも、FPEでも。
だが。
駒なら駒なりに、動き方はある。
内田は静かにカメラを握る。
フラッシュが、微かに熱を帯びていた。
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