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錦くんにはこう返事した。
『ワシ、自分が恋愛に関わるってこと考えたこともなくて、好きっていうのがなんにもわかんないんだ。好きになる努力はするけど、どうしても好きになれなかったらごめんって言わせてほしい』
「好きになってもらえるように頑張ります!」
『いや、頑張らなくていいよ。普通におしゃべりして普通に遊ぼうよ。ワシ、それで十分楽しいから』
「そうですか?」
『普通に付き合ってさ、それで好きになれたらそれが一番だろ? あんまり頑張りすぎても続かないしさ』
「じゃあ、普通にしますけど、普通にまた遊んだり、あとビデオ通話したりしたいです」
『うん、しよ!』
ところで、和泉がなんか元気ない。意気消沈と言うか。Uberでちゃんぽん麺頼んで食べてるんだけど、飯の時なんだかんだ喋るのに、ずっとしょげたように黙ってる。食も進んでないみたいだし。
『どうした?どっか体調悪いか』
「い、いや……大丈夫だよ」
和泉はギクッとしたように言った。
『麺多いなら食ってやるぞ』
「箸つけちゃったやつだけど……」
『いーよ、気にしないから』
「じゃ、じゃあ……」
和泉がどんぶりをこっちに押しやるので、ワシはそこから適当に麺を取った。
『元気ないな、さっきまでは元気だったのに』
「い、いや、今だって元気だよ」
『そうか?』
ワシが首を傾げると、和泉は少し黙ってから「……なんか、寂しかったんだ」と言った。
『寂しい?』
「その、千歳もいつか好きな人見つけていなくなっちゃうのかなって」
『へ?』
「だって、錦くんと付き合うみたいだし、錦くんとうまくいかなくても、千歳なら今後こういうこといくらでもあるだろうし……」
『うーん、付き合うけど付き合わないぞ、まだ』
「ど、どういうこと?」
和泉は戸惑った。
『ワシ、恋って意味で人を好きになるのがわからないから、普通におしゃべりしたり遊んだりして、好きになる努力はするけど、うまくいかなかったらごめんってする、って感じ』
「そ、それ錦くんにも言ってるの?」
『うん、そこなあなあにしたらまずいだろ』
「そうなんだ……」
和泉はあきらかにホッとした顔になって、どんぶりを取って麺をすすりだした。
「やっと食欲出てきた」
『食欲なくしてたのかよ!』
どんだけ寂しがってるんだよ!
『麺返すか?』
「いや、普通にこれボリュームすごいから麺は千歳引き取って」
確かにこのちゃんぽん、野菜も海鮮も山盛りだ。
『じゃあ食うか』
ワシも麺をすすった。
こいつ、ワシがいないとそんなに寂しいのか。ワシが深山さんのところに行っていなかったときもしょげてたしなあ、寂しがりすぎだろ。ていうか、前ずっと一緒にいるって言ったら嬉し泣きしてたっけ。なんでそこまで。
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こいつ、初めて会った時と違って、友達もできたし、仕事だって充実してるみたいだし、別にそんなに寂しがることないのに。しょうもないやつだな。
「いや、でもまだ首の皮一枚つながっただけだな……」
『何が?』
「いや、なんでもない」
ワシがこのときの和泉の気持ちを知るのは、ずっとずっと後のことになる。
コメント
1件
うわあ、千歳の恋愛に対する率直なスタンスがすごくいいですね。「好きになる努力はするけど、なれなかったらごめん」って、誠実でありながら自分を偽らない姿勢が伝わってきました。それに、和泉が千歳の恋愛話に寂しがってるシーン、めちゃくちゃぐっときました。初対面からずっと一緒にいる二人だからこその感情の機微がじんわり沁みます。最後の「首の皮一枚」という意味深なセリフも気になる…この先、どう転ぶんだろう。