「沙夜、彼女出来たって。」
「え」
その言葉を聞いてから、私の意識は朦朧としていた。いやまさか…と思っていた。
だって、あんなに私に優しかったんだ。一番私と関わっていたじゃん。
そう思っていた矢先だった。
「カップルのお通りだ〜w」
「冷やかすなって!」
沙夜と、クラス一の美女の恋乃。二人は恥ずかしそうに手を繋いでいる。
「………え…」
それを見た瞬間、頭の中が真っ白になった。悔しさも怒りも、悲しささえも感じられない。
これが「無」なのだろうか?
「二人とも、片想いしてたんでしょ?」
「両片想いってやつ?」
「う、うん。それで、沙夜君側から告白してくれて…」
「よかったね〜!!」
やめて。
「これからデートすんの?」
「今日する。」
やめろ。
「二人共お幸せに___」
もういやだよ。
「律、律!?」
友達が叫ぶ、そしてうっすらとした視界。床に倒れているので、頬に冷たさが刺さる。
この現実が、私の胸を刺すように。
「さ、_」
必死に絞る言葉は、誰にも届かない。当たり前さ。
きっと、私が悪かったんだろうな。ははは。
「……ん……」
起き上がると、保健室のベッドの上にいた。誰かに運ばれたのだろう。
「あ、机に紙がある。」
保健室の机には紙があったので、椅子に座って読んだ。
『坂原律さんへ 起きて、辛くなかったら教室に行って。無理しないで。 担任』
「…辛くないわけないだろ…?」
ふと、鏡を見ると私の姿が映っている。
女の癖して、寝癖の直っていない髪。女らしくない一重の目、可愛さなんて微塵もない無表情の口。まるで男だった。
「…だから沙夜は、女らしくて可愛い恋乃を選んだわけね…」
人気者で、読モもしていて、可愛らしい見た目。まさしく女子の恋乃。
私と比べたら、やはりあの人の方が輝いているのだ。
でもさ。
「少しぐらいさ、私も見て欲しかったよ………」
涙が出てくる。なんでだろう。
『ピーキャー泣いてる奴は大体ブスだから!』
お母さんの言う通りだよ。
「こんな私は…正真正銘のブスだ…自分勝手過ぎる…」
机に突っ伏した。
「…………」
しばらく泣いた後、机の上にポツンと置かれた紙にもう一度目を通した。
「先生も無愛想やんなぁ」
ふふ、と笑った後に思いっきりのびた。まだ教室に帰る気にはなれてなかったので、二時間目までこの保健室にいることにした。
なぜだろうか、もう微塵たりとも悲しさを感じない。
また新しく、好きな人作るか……
「無愛想、か…」
コメント
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無愛想でも良いと思うけどな..
え?! 無愛想無愛想… え?←馬鹿