💚亮平side
涼太は本当に優しい彼氏だと思う。
俺は先日、思いがけず練習中に怪我をしてしまった。
医師には全治2週間と言われている。
あの時涼太は俺を抱えて病院に連れて行ってくれた。
周りに見られて少し恥ずかしかったけど、でもそれ以上にものすごく嬉しかった。
それからもうまく歩けない俺を気遣って、こうして毎日家に来てくれている。
❤️はい、ご飯できたから食べて
💚ありがとう…いただきます
今は家事をするのもきついだろうと、ご飯の支度や掃除を買って出てくれている。
そして涼太が作ってくれる料理はどれも当然のように美味しい。部屋も怪我をする以前よりきれいになったくらいだ。
幸せで嬉しくて思わず笑みが溢れてしまう。
💚こんなに美味しいご飯が毎日食べられるなら、怪我も悪くないね
❤️ばか言ってないで早く治せ
💚うん、ふふっ。
涼太の言い方は優しくて、本当に気遣いが感じられて、ああ、ずっとずっとこうして一緒にいられたらいいなあと思う。
幸せだ。
片想いだった頃は、こんなに最高の未来が待ってるなんて思ってもみなかった。
思い切って告白してよかったな…。
❤️風呂も準備してあるから、終わったら入れよ
💚うん、ありがとう
❤️じゃあ、俺はあと片付けて帰るから
💚……
❤️どうかした?
💚あのね…?
❤️ん?
💚今日は…泊まって……いかない?
俺はとうとう意を決してお願いしてみた。
涼太は毎日来てくれて、こまごまと色んなお手伝いをしてくれるけど、いつもどんなに遅くなってもその日のうちに帰ってしまう。
それがなんだか寂しかった。
欲張りかもしれないけど、恋人ならたまには泊まって行ってほしい。
❤️ごめん、阿部。俺、明日朝早いし…
💚そう…だよね
❤️ごめんな
💚ああ!ううん!!全然、全然!!涼太も行ったり来たりで大変だろうなって思っただけだから気にしないで!!
本当は少し寂しかったけど、まだ付き合って日も浅いし、お願いするのが早かったかも…。
俺は笑顔でごめん変なこと言って、と謝った。
❤️…じゃあ帰るね。また明日。
💚うん、あ、涼太…
❤️ん?
せめてキスとか、してくれないのかな…。
見送る涼太を思わず見つめる。
涼太は俺の目線の意味に気づかなかったようで笑顔で手を振った。
❤️おやすみ
パタン🚪
💚気づいてよ…
涼太はすごく優しい。
すごく優しくて完璧だ。
でもひとつだけ、悲しいことがある。
…どうして俺に触れてくれないの?
もやもやした寂しさがだんだん胸の底にたまっていく。
こんな調子でいつか、涼太の方から求めてくれる日が来るんだろうか…。
俺って、よくばりかな……
そっとため息をついた。
❤️涼太side
阿部の家に通うようになって、かれこれ1週間になろうとしている。
翔太が阿部に怪我をさせてしまった時、俺は咄嗟にすすんで阿部を病院へ連れて行った。
阿部の負った怪我は、なんだか自分の責任に思えたからだった。
その件で俺は拭えない罪悪感を感じていた。
あの雑誌のインタビューを受けた日以来、俺は翔太と少し気まずくなって、そのままグループ練習にまでその嫌な空気を持ち込んでしまっていた。
あの日照も俺と翔太のダンスに身が入っていないことに気づいていた。
自分で自分をコントロールすることができず、翔太に対して折れることもしなかった結果、 阿部にこんな怪我を負わせてしまったのだと思う。
阿部は俺のことを優しいと言う
自分は幸せ者だと笑う
違う。
俺が考えているのは、こんな時にも、翔太のことだけだった。
阿部が俺にお礼を言うたび、嬉しそうに笑うたびに、俺の中の後ろめたい気持ちは募っていく。
そしてそのことは、自分でもどうしようもなかった。
俺のこの気持ちを阿部に正直に話したら、きっと悲しませてしまう。
だからせめて家のことくらいはさせてほしかった。近くにいて安らぐなら、近くにいてもやりたかった。
これからも?
これからもずっと、こんなふうに阿部にわざと優しくして、その偽りの優しさがいつか愛に変わる日を待ち続けるのだろうか?
そしてそれは本当に可能なんだろうか?
なんだか途方もないことのように思える。
今胸の中に居座っている生意気な幼なじみが綺麗さっぱりいなくなる日が来るのだろうか。
❤️早く消えてくれ、翔太…
俺はあんなに愛した幼なじみが1日も早く、 自分の心から消えてくれるよう祈っている。
🖤蓮side
そろそろ寝ようかとベッドに入るタイミングで携帯が震えた。
翔太くんからの着信だった。
💙めめ?夜遅くに悪い
🖤しょっぴーならいつでも大歓迎だよ。どうしたの?
💙今からそっち行っていい?
🖤……いいけど?どうかしたの?
電話口の翔太くんは、なんだか切羽詰まっている様子で、うまく言えないけど、俺には少し嫌な予感がした。
💙着いたら話す。じゃ、後で。
🖤うん…
ピンポン。
30分もしないうちにインターフォンが鳴った。
🖤いらっしゃい
💙めめ、聞いてほしいことがある。
玄関から上がるや否や、翔太くんは藪から棒に言う。
🖤なに?落ち着いて?
💙俺、好きなやつがいるみたいなんだけど
🖤へ?それって…
この間の話の返事?
俺は一瞬驚くが、翔太くんの様子を見ているとどうやらそうじゃないようだ。
💙めめならわかると思って。俺の相談に乗ってほしい。
🖤えーと…?とにかく落ち着いて、座って。
翔太くんはソファに腰掛ける。
水が飲みたいというのでいれる。
翔太くんは一口飲んで、唇を濡らした。
色っぽいなと見とれる。
🖤しょっぴー、確認なんだけど
💙ん???
🖤俺がしょっぴーに気持ち伝えたこと覚えてる?
💙うん、覚えてる。だから来た。
🖤ちょっと意味がわからないんだけど…
💙あれはこの間断っただろ?
🖤まあ…そうだけど。
💙めめには悪いけど、そんなふうには見れない。
あっさりとこちらが傷つくことを平気でまた言う。
両想いを目指しているならこんなことにへこたれている場合ではないが、気になるのは翔太くんの口から出た「好きなやつ」の正体だった。
🖤…急に誰かに一目惚れでもした?
💙いや…そういうんじゃなくて
🖤誰か好きな人がいるの?
💙自分でもよくわかってないんだけど
🖤うん
💙俺、涼太のことが好きみたいだ
🖤………
なんだよ、これ。
結局舘さんじゃん…。
🖤俺の方がしょっぴーと仲良いじゃん。どうしてそんなこと言うの?
思わず言ってしまった。
こんなこと言っても仕方ないのに。
💙めめ…
🖤俺じゃどうしてダメなの?
💙めめのことは好きだよ
翔太くんは、まっすぐに俺を見て言う。
💙涼太がいなかったら、めめと付き合ってたかもしれない。でも…
🖤舘さんがいいの?
こくり。
💙涼太じゃないとだめなんだ
🖤でも、舘さんには阿部ちゃんがいるじゃないか
💙わかってる。だから、俺、ちゃんと気持ち伝えてフラれてくるよ。そうしたら、慰めてくほしい
🖤…ばか
好き。
大好きだ。
翔太くんの、こういうところが本当に憎めない。
思い立ったら後先考えなくて。
納得いく答えを見つけたら、そこへひたすら突き進む。
計算とか、作戦とかそういうのは全く考えない。
こういう人だから放っておけないし、好きになったんだった。
俺は翔太くんに今、とても酷いことをされてる。
好きだって伝えたのに、他の人を好きだって言われてる。
でもなぜか憎めないし、嫌いになれない。
舘さんが翔太くんを好きなのはなんとなくわかってた。
どうして阿部ちゃんと付き合ってるのかはわからないけど、何か事情があるんじゃないかと思う。心変わりしてるとは考えにくい。
好きな人の幸せは応援したい。
そして、もし、翔太くんが傷ついて帰って来たら、一番に慰めてあげよう。
俺はいつのまにか保護者のような気持ちになっている。
🖤絶対にフラれて来てよ?
💙任せろ!!そしたら朝まで酒に付き合え!!!
🖤弱いくせに、何言ってんのww
俺は思わず吹き出した。
これ以上ないくらいの強烈な失恋なのに、知らず知らずのうちに翔太くんを応援してしまうこの俺の曇りない気持ちはなんなんだろう。
人生で初めて、清々しいくらいに人にフラれてしまった。
そして、それでもなおこの人が好きだ。
ああ、心から舘さんが羨ましい。
こんなにまっすぐな、可愛い人に愛されて。
舘さん、絶対に翔太くんを傷つけないでよ。
じゃないと今度は強引にでも俺のものにするから。
コメント
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にゃーにゃさんとまきぴよさんだ! どちらともの作品を毎日拝見させていただいております! 続きが楽しみです! 頑張ってください!
勿体無いお言葉ありがとうございます!私はにゃーにゃさんのテンポ感のいい作品が大好きですので、これからも仲良くさせてくださいね😉💙
語彙力がすごすぎて! 葛藤する気持ちとかを言語化するのってムズいのに! 何が言いたいかと言うとまきぴよさんの話大好き!