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星川 愛優 全垢❌
19,047
SUJ 一等海尉
83
#ギャグ
ガイコツ番付
146
月姫ミク@スパレイ

3
久しぶりに軟骨の欠けた足首が不調で歩けず、ハマっているローラーでの筋肉ほぐしができなくて不貞腐れて安静に横になっていたら、いつの間にか寝てしまった。
夜ではなく、真昼間に。
妙にリアルな夢だなと思ったのは、いつから居たのか分からないが目の前に小太りの小柄なサラリーマン風の男が青い顔をして座っていて、「これがその娘なんですが」と可愛らしい女学生の写真を見せられた時だった。
「一年前から行方不明なんです」
どうにもここは古びたファミレスのような店内で、窓の外は大雨のようで叩きつける雨以外は真っ暗で見えない。
「居なくなる直前、娘が友達から『道連れ列車』という話を聞いたらしくて、夕飯の時に楽しそうに道連れ列車の話をしていたんです」
店内には私とオッサンの他に、カウンターに店員さんと他所のお客さんが数組いる。
「どうせ子供の噂話だろうと思って聞き流してしまったんですが」
私の前には紅茶らしき飲み物が、オッサンの前には珈琲らしき飲み物が置かれている。いつ注文したのか覚えていない。
「三日後、娘は失踪しました。このメモを残して」
そう言って、オッサンが写真の横に一通のメモを差し出した。
ーーーアカリちゃんと道連れ列車に行ってくるね!
そう書いてあった。
「この道連れ列車は何処にあるの?」
状況整理の為に訊くと、オッサンは具合の悪そうな顔で唸った。
「それが……この列車、実在しているのか分からなくて。単なる噂話だと思っていたんですが、娘の話だと、決まったタクシーに乗らないと列車まで辿り着けないって言うんです。
条件が幾つかあるらしく、わたしが聞いたのは、雨の日に決まったコンビニの前で停車しているタクシーの運転手に『道連れ列車まで』と言うと連れて行ってくれるそうで」
「じゃあまずは、そのタクシーの運転手に問い合わせたらいいんじゃない?」
オッサンの胸元のポケットを指すと、オッサンは慌てて携帯を取り出す。アンテナ付きの懐かしくも古いガラケーだった。
オッサンはタクシー会社に電話をかけたが繋がらず、私がガラケーを借りて再度掛けると今度はすんなりと繋がった。
「はい」と、聞いたことのないタクシー会社の名前が電話口の相手から出た。
軽く事の顛末を伝え、そんな噂話を流していた
運転手は居ないかと尋ねる。
すると電話口の相手は少し唸った後、「こんな話をお客様にするのは気が引けるのですが……」と渋々話してくれた。
「私共も道連れ列車など存在しないと認識しておりますが、過去にそんな話をしていた運転手がひとりおりまして……ただ、その運転手は十年前に他界しております……」
言い淀みながら、「詳細は私共よりも、彼の親族に聞いた方が早いかもしれません」と続けた。
「個人情報なので一旦確認をしてから折り返しても宜しいでしょうか?」と言われ、私は了承した。
電話が切れて十分程経った後、再びガラケーが鳴った。
再度私が出ると、先程の電話口の相手は運転手の親族にアポが取れたこと、そこまでの案内に近辺にいるタクシーを向かわせて頂きますと言われた。
完璧な手配に内心拍手を送っていると、わりとすぐにタクシーが店に到着した。
飲み物を飲み干してオッサンと会計を済ませる。
幽体離脱状態の時にお金は持ち合わせておらず、ポケットに詰まってたのはその辺の綺麗な葉っぱで「やべえ無銭飲食になっちまう」と肩を竦めていると、「狸みたいな人ですね」と吹き出しながらお代はオッサンが払ってくれた。
なんでポケットに形の綺麗な葉っぱが沢山詰まってたのかも覚えていない。ここに来る前に拾ったんだろうけれど。黄色に赤に茶色の葉っぱを広げて、秋だな!などと悠長に思った。
ファミレスから出るとタクシーの運転手が立っていて、傘を差していた。外は大雨だった。
親族の家までは片道十五分程で、住宅街の中にあるマンションの前で停まった。
やたら縦に長いが、朽ちてボロボロのマンションだ。
「五階の五〇三号室をお尋ねください」と運転手に言われた通り、階段で五階まで上った。
指定の部屋の前でインターホンを鳴らすと、やがて老人が出てきた。
私を見て、その背後に立つオッサンを見た瞬間、老人が目を見開いた。
信じられないものでも見るような目をした老人は、ややあって「ああ」と我に返った様子で「話は聞いているよ」と言いながら私達を招いた。
通された先はリビングなのか仏間なのか、巨大な仏壇が大々的に置かれた線香臭い部屋だった。
おかしなことに、部屋の半分は仏壇で占領されている。
奥にも広い部屋があるようだが、真っ暗で何故かとんでもなく嫌な気配を感じた。あちらには行かない方が良さそうだと直感が告げる。
仏壇には遺影があるのだが、首から下はかろうじて小太りな雰囲気のおじさんだというのが分かるが、顔の部分はどうも意図的な感じで破られていた。
老人にオッサンが「これがうちの娘なんですが」と詳細を話し、老人は長々とオッサンの話を聞いた後、渋い顔をして言った。
しばらく黙って聞いた後、老人は少し沈黙した。
座ったまま下を向き、目を閉じて小さく頷きながら「そうか……やはりそうか……だけど……」と呟き、やがて顔を上げた。
「いやね、儂も以前、本人からそんな列車を見付けたとは聞いたよ。行ったことはないがね。
息子はどうにも、確か雨の日だったかな……時々丑三つ時にとあるコンビニの駐車場に停まって、列車に興味のあるお客を乗せて運んでいたとか。
なんでそんなことを続けていたのか?それは儂も分からんよ、むしろ知りたいくらいだ」
ちょっと待ってなさいと老人は立ち上がり、奥の真っ暗な部屋へと消えていき、すぐに戻ってきた。丸めた紙と赤ペンを持っている。
テーブルに広げたのは一枚の古い地図だった。
現在地とかなり離れた所にあるトンネルに丸を付け、その途中にある建物にもチェックを入れた。
「ここのトンネルを抜けた先に、駅があると息子から聞いた。ただね、このトンネルまで結構距離がある。息子が使っていた車を貸してあげよう。それでトンネルまで行きなさい。
さっき言ったコンビニは道中にある。このチェックマークのとろがそれだよ。一軒しかないから分かりやすいはずだ」
そう言って車の鍵をオッサンに手渡した。
オッサンが先に一階へと降りて行く姿を見送って、老人がふと「ちょっとアンタ」と私を呼び止めた。
「ありがとうね、わざわざ連れてきてくれて。本人は覚えていないようだけど」
「……?誰を?」
「誰って息子だよ。息子はまだ孫を探してるんだ」
「え?」
向き直って何の話か問おうとしたら、オッサンが階段下から「早く行きましょう!」と叫んだ。
オッサンに注意を取られて再度老人の方を振り返れば、もう老人は戸を閉めるところだった。
先程の老人の発言に少し引っかかったが、この時は特に深く考えなかった。
最近うちの守護の百鬼のツリーハウスで、とある人物の死因を推理して犯人を突き止めるサスペンスアトラクションが出来たので、私はこの状況を百鬼の手の込んだアトラクションだと思い込んでいた。
オッサンは既にマンションの駐車場から車を一台出してきて、助手席に早く乗るようジェスチャーしている。
深い疑いもないまま車に乗り込むと、オッサンの運転でトンネルを目指した。
カーナビもない、ラジオテープを入れて再生するタイプの古い車だった。
流れる音楽は聞いたこともない古めかしいジャズみたいな曲で、オッサンも知らないのか運転しながら色んなボタンを弄っていたが、途中で諦めたらしい。
途中にある例のコンビニの前を通った時、小腹が空いたなと思いながらふと見やると、コンビニの店内に沢山の人が見えた。
大勢の人が何故か無表情でこちらをじっと見つめている。なんだか不穏な雰囲気だった。
駐車場にタクシーは一台もない。
オッサンがコンビニを素通りしたので「ダメ元でタクシーを待たなくていいの?」と尋ねる。
「トンネルに行ってから、何も手がかりがなかったらさっきのコンビニでタクシーを待ちましょう」
そう言われ、助手席で地図の通りにオッサンをトンネルまで道案内する。
十五分程経っただろうか。住宅街から外れた人気のない静かな場所に、そのトンネルは現れた。
何故かとてつもなく嫌な気配のするトンネルだった。
結構狭いトンネルで、車は一台くらいしか通れなさそうだ。
「流石に対向車が来たら危ない。ここからは歩いて行きましょう」
オッサンはそう言って脇道に車を停め、さっさと降りてしまった。
私も地図を助手席に置き、オッサンの後に続いた。
細長いトンネルを歩いていると、やがて周囲が霧に包まれた。本当に車で来なくて正解だと思う。
しばらくオッサンと二人並んで歩く。やがて周囲が明るくなりトンネルを抜けた。
抜けた先も霧が濃く、前方を見やると何やら小さな駅のようなものがある。
少しでも手がかりが欲しいのだろう。オッサンは小走りに駅まで行ってしまう。私はその後を追った。
駅は無人で、古びたベンチと時刻表がぽつんとある。
周囲を探索すると、ベンチの下に何やらピンクの落し物を発見した。
なんだろうと拾い上げると、それはかなり古い機種のガラケーだった。白い犬のキーホルダーが付いている。
私が拾い上げたそのガラケーに見覚えがあったのか、オッサンが目を見開いた。
「ミホの携帯だ!!」
娘さんはミホというらしい。オッサンの物とよく似たアンテナ付きの、やたらと画面の小さいレトロなガラケーだ。
「つまり娘さんは列車に乗ったかもしれないってことね」
そう言って周囲を見渡せば、霧の奥の方から光が一定の速度で近付いてくるのに気付く。
「列車って……あれかな?」
ややあって、駅に列車が到着した。
なんだか凄まじく嫌な気配を濃縮させたような列車だった。
「ミホ……!!」
列車のドアが開くなり、オッサンは我先にと乗り込んでしまった。止める間もなかった。
大きな溜息を吐き、仕方なく私も同行する。
乗り込んだ途端に空気がビリッと震えた。背筋に悪寒が走り、この列車は何かおかしいと潜在意識が警鐘を鳴らした。
オッサンは何も感じないのか、列車内の席を見て回る。
『ーーー間もなく発車します』
やる気のなさそうな気怠い男のアナウンスが響いた。随分と酒焼けしたようなガラガラ声だ。
『御乗車、ありがとうございます。当列車は終点へ向かいます。
座席に手紙を用意しております。お別れの言葉は手紙に記して下さい。
ーーーそれでは発車します』
などとアナウンスが言い始め、目の前の席にはいつの間にか封筒が2枚置かれていた。
これはまさか私とオッサンの分か!?と思っていると、急にオッサンが泣き出した。
「すみませんすみません、本当にすみません、娘が先に乗ってしまって」
泣きながら封筒から便箋を取り出し、オッサンは添えられてたペンを持つ。
「本当ならわたしも乗らなきゃならないのに、自分ひとりでは怖くて乗れなくて」
わんわん泣きながら手紙に何か書き殴り始めた。
「一緒に来てくれてありがとう」とその懺悔とも取れるお礼は、明らかに私に対して言っていた。
私もなんとなく事の顛末を理解して「あっ、これ……まさか乗ったら道連れって、オッサンと道連れになるって話か……!!」と頭を抱えた。
窓の外は真っ暗で何も見えない。
列車はどの駅にも停車することなく、しばらくして『終点です』とアナウンスが流れ、静かにドアが開いた。
とてもポカポカした気候の晴れた場所に降ろされ、流石になんか帰れなくなりそうだなと思ってオッサンを放置し周辺を探索する。
下車した先は駅というよりも、金細工の白くて豪華な扉が目立つ場所だった。
来た道を辿ると、列車の線路が途中で途切れていて帰り道が分からない。
内心「こりゃまずったか」と本気で路頭に迷っていた。
しばらくすると、うちの仏壇奥の上側のお姉さんの部下にそっくりな女が金細工の扉から現れた。何やら書類を手にオッサンの方に向かってくる。
私もいるよ!と大きく手を振れば、そっくりさんが私を見るなり血相を変えて大慌てでどこかへ行ってしまった。
また取り残されて泣きながら手紙握り締めているオッサンを仕方なく宥めてたら、また先程の部下そっくりさんが更にもうひとり、これまたうちの仏壇の奥の見覚えのある女を連れてきた。
そのもうひとりの部下らしき女も目が合った途端、血相を変えて私をオッサンから引き離して「えっ、貴女まさか死んだんですか!?いつ!?」などと失礼な質問を投げかけてきた。
「知らんよ。え、私死んだんか?」と真顔で答えたら、最初にいた部下が「その方の対応と、間違い子が迷い込んだと上に報告を!!間違い子がうちの問題児だってことも忘れずに!!!」と焦った顔で告げる。
私はもうひとりの部下に羽交い締めにされ、オッサンと列車が見えなくなるまでしばらく引きずられた。
その先には先程のとは違う、もっと大きな両開きの扉があった。
部下が力を込めて扉を開ける。
「何この扉、何処に繋がってーーー」
開いた扉の先が眩しいくらい真っ白で、質問を投げかけている途中にも関わらず、問答無用で押し込まれてーーー私は気絶した。
はっとして目覚めたら、守護のS兄とMちゃんが物凄い神妙な顔をして覗き込んでいた。
「おっ?起きたぞ」
S兄が安堵の表情を浮かべた。
「さっき急に、雪のシルバーコードが切れたような手応えがあったんだけど」と顔見合せていて、よく見たらいつの間にか二人は喪服姿になってた。
「……なんで喪服なの?」
「一瞬で切れたと思ったから、もう戻らないかなって」
つまり死んだと思ったらしい。
あまりにも諦めが早い守護達に思わず笑ってしまった。
その後、私は理不尽にも仏壇奥の姉御達にこっぴどく怒られた。
あの列車は本来死んだ人間の魂が乗るもので、まだ生きてる人間の魂が乗ると相当危ないのだそうな。
途中下車しようものなら外にいる危ない輩に食われるのだとか。あの時、列車の中から外の様子は見えなかった。
そして終点にあった金細工の扉を万が一にも潜ってしまうと、完全に生身と魂を繋ぐシルバーコードが切れてしまうらしい。
『道連れ列車』と聞いたら迂闊に乗ってはいけないと、口煩く注意されたのだった。
この一連の流れを文字に起こしながらふと、あのオッサンの正体について考える。
若干矛盾もある上に、誰も真相を教えてくれないので、ここからはただの私の呟きである。
老人の気になる一言を踏まえると、雨の日にコンビニに停車してはトンネルまで客を乗せたタクシーの運転手は、オッサンだと思う。
娘のミホちゃんが失踪した後、行方を辿る為に噂の列車を探しに向かったのだろう。
列車が見つかったか否かは不明だが、見つけたとしても何か条件があってオッサンは乗れなかったのかもしれない。
だから客を乗せてトンネルまで行ったのか。ちゃんと『道連れ』になるように。
でも乗れなかったのか、はたまたそこで何かトラブルがあって無意識に同じ行動を繰り返すはめになったのか。
探せど探せどミホちゃんは見つからず、最終的にSOSを出したのを偶然私が拾ってしまったのだろう。
以前も、あちらの世界なのに現世と変わらない区別で生活している霊体を見たことがある。
同じく死んでいるけれど、死んだまま生きている時と変わらない生活をしている霊体と、綺麗に成仏した霊体が区別されているのだ。
私は成仏することをステップアップみたいに捉えているが、霊体によっては死後長く留まり過ぎて、成仏することを未知の恐れと捉える輩も多々いるようだった。
あの時の感覚と、老人のいた部屋での肌身で感じる感覚が酷似していた。
思うに、老人は生きている時と変わらない生活を送っているのだろう。
オッサンは列車に乗って終点に行ったことで、仏壇奥の姉御達が管理する『上』、所謂『天国』みたいな場所に行ったと勝手に解釈している。
おそらくミホちゃんは既に道連れ列車に乗って友達と成仏したのだと思う。
オッサンが向こうでミホちゃんに会えたかどうかは分からない。
個人的に今頃会えていると良いな、と願っている。
そして私は、あの列車が妙に忘れられない。
あの金細工の扉が僅かに開いた時、見えた景色はとても穏やかで暖かそうな、居心地の良さそうな場所だった。
いいな、早くあの扉の先に行きたいな、となんとなく思ってしまった。
それから困ったことに、定期的にふとした瞬間に私は幽体離脱して、気付けばあの霧の中の駅に立っていることが増えた。
目の前には件の列車が停車し、ドアを開けて次の乗客を待っている。
コメント
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ああ、この話めちゃくちゃ好きです……! 最初は「現実なのか夢なのか」の境界が曖昧なまま進む感じがもう、巧いなと。しかもポケットの葉っぱで無銭飲食になりかける主人公、めっちゃ好きです(笑)。あと最後の「仏壇奥の姉御達に怒られた」からの、それでもあの扉の先が忘れられなくて無意識に列車の駅に立っちゃうっていう締め。あの金細工の向こうの穏やかな景色の描写だけで、帰りたくなる気持ちが痛いほど伝わってきました。 それにしてもオッサンの正体、もし本当に運転手本人の霊で、娘を探し続けてたんだとしたら……そういう構造の巧みさにぐっときました。続き、すごく気になります。