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#切ない
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第13話
数日後。
「あの、このお菓子貰ったんだけど、一緒に食べない?」
そう言ってアニカは僕にお菓子の箱を差し出した。
僕は笑顔で頷いた。あれから、少し慣れたけどまだ心がモヤッとするというか、フワッとするというか……何だろう……
僕は差し出されたお菓子を一口食べた。甘くてとても美味しかった。酒が入っているような気がしたけど気の所為にしておいた。
僕が少しでもお酒を飲むとぶっ倒れてしまう事はソフィー以外、誰も知らない。
「ふふっ。美味しい」
アニカも口に頬張ってニコニコしている。
僕はそんなアニカを見て微笑んだ。
「……ソフィーは、帰ったら急にいなくなったんだ。さようならって置き手紙だけして……苦しかった……」
アニカは頷いて聞いてくれてる。
「僕は家族も、護るべき人も護れないんだよ。だからこの仕事を辞めようかと思った。でも、剣を振るう以外に何もできないから辞められないんだ。僕が兵器なのはいくら何を言っても変わらない」
僕はそこまで言ったら口を閉じた。
まずい……変な事ばかり……
何で僕はこんなにも口下手なのだろう……
「私は兵器とは思わないよ。言っても変わらないなら私は思う。心優しい人だって。私はロルフの事をそう思ってる。それに、剣を振るう以外にもできるでしょう。家事だって、私の話もこんなに理解してくれる人なんて中々いない……だから兵器だなんて思わないで」
……アニカ……そんな褒める言葉は僕には到底似合わないよ……
「嬉しいけど、僕に似合わない。だけど、ありがとう。そう言ってくれると嬉しい」
僕がそう言って微笑むと寂しそうに微笑んだ。
僕はもう一口お菓子を口に入れた。
「ここに住まない? あ、もちろんロルフの意見が尊重されるんだけど、毎日あの道を通うのは大変でしょ……空き部屋は沢山あるからそこは気にしなくていいから……」
アニカが突然そう言った。
え? 王城に住むの?
「……少し考えさせて。確かにこれからの季節は雪にまみれるから大変だね」
僕は頷いた。
さっきから気になったけど、頭がポワポワして気分もそんなに良くない。
これは……酔いかな? 家で料理酒が上手く抜けなかった時に、倒れたんだよね……まずいかも……
僕は顔が真っ青になりながらさっきの事を考えた。
「ねぇ、大丈夫? 顔色が……って!」
僕はアニカが心配して話している途中に椅子から倒れた。
見える景色は床に転がって見上げているようにして天井が見える。頭が痛い。おまけに吐き気もする。
アニカの「大丈夫?」という声がどこか遠くで言われているような気がする。
そのまま、僕の意識は遠のいた。
うぅ…頭痛が……
僕は意識がぼんやりとしたまま目を開いた。
目の前にはうとうとしているアニカと病室が見える。僕は前に貧血か何かで倒れた時に運ばれた部屋に似ていた。
酔ったような気分だった。
まさか、お菓子のお酒だけで酔うなんて思いもしなかった。
こんな姿……恥ずかしい……
僕はぼんやりと目を開いて起き上がろうとしたら頭痛が増して、背中に何かとりついたように重くなった。
「ん……って、ロルフ! 大丈夫?」
「うん。大丈夫っ……うぅ……」
「休んでて。全然大丈夫じゃないでしょ」
そう言ってアニカはどこか行ってしまった。
はぁ……酔ってこんな事に……
お酒、そんなに強かったのかな……?
本当、駄目だな……
少し目を瞑っているとソフィーの幻覚が見えた。
「お兄ちゃん。私、頑張ってるから助けて……私の体が保たない……」
何が起こっているのかさっぱりだった。だけど、僕の中にいるソフィーはこんな事を言わないのは分かった。
何を……助けてって、護れなかったんだよ。
一体どこにいるの……?
「待ってるから。お兄ちゃんも頑張って」
僕はソフィーがそこまでいった時に飛び起きた。
首元は寝汗でぐっしょり濡れていて、呼吸も荒いように感じた。
「うなされてたけど……」
「あ、ごめん……」
「謝るところじゃないけど、こうやっていつもうなされるの?」
いつも……でも、最近は記憶には無いけど、こうやって首元の寝汗が酷い時があるし、寝付きも悪い。
僕は頷いた。
アニカは隣にある椅子に座りながら珈琲を机の上に置いた。
「酔いに効くと聞いたんだけど……良ければ飲んで。あのお菓子に、テキーラが入ってたから……」
え? テキーラ……?
僕には一生関わらないくらいだと思っていたけど、まさかこんな事で聞くなんて……
魔法の事と、お酒の事は無縁では生きていけなさそうな世の中だな……
僕は「ありがとう」と微笑んでから珈琲をすすった。
珈琲は好きだった。紅茶より無糖の珈琲が出てきた方が嬉しい。
それから、一晩経てば僕はケロッと治って視察の護衛をした。
コメント
1件
第14話読み終わったよ〜🥀 最初はアニカがお菓子差し出してほっこりしたのに、テキーラ入りとか完全に不意打ちだった…! ロルフの自虐的な言葉にアニカが「心優しい人だって思ってる」って返すところ沁みた。あとソフィーの幻覚「助けて」は胸がギュッてなった。眠れない夜にうなされるロルフが切なくて、でもアニカが珈琲差し出す細やかさに救われた気がする。不穏な予感が続いてて次が気になる🤍