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本部
異常検知ログ|未選択
午前10時12分。
モニタの一角に、
小さな警告が出た。
〔注意〕
推奨選択未実行
対象ID:MK-TSUKIKAGE
状態:未選択
影響度:算出不能
「……未選択?」
誰かが、
首を傾げる。
未選択は、
エラーではない。
だが、
仕様にもない。
管理統括室 内
「最適があるのに
使われていない、
ということ?」
「はい。
選択要求はあり、
回答も返っていますが……」
「……決めてない?」
画面に、
履歴が表示される。
推奨A:0.83
推奨B:0.79
推奨C:0.77
→ 未提示
誰も、
すぐに言葉を
見つけられなかった。
本部
定義を作ろうとする
「とりあえず、
“未選択”を
異常として
扱いましょう」
誰かが、
そう言った。
異論は、
出なかった。
出せなかった。
暫定定義案(内部)
未選択:
推奨選択が存在するにもかかわらず、
提示または実行されなかった状態。
判断遅延または
意図的回避の可能性あり。
原則として
改善対象とする。
「……“意図的回避”?」
その言葉だけが、
少し
引っかかった。
佐伯
ログを見る
佐伯は、
このログを
偶然見た。
正式な閲覧権限は、
もうない。
だが、
通知の要約が
飛び込んできた。
未選択
影響度:算出不能
佐伯は、
一瞬で
理解した。
「ああ……
これ、
悪くない」
佐伯
数値で擁護してしまう
佐伯は、
自分でも
驚くほど
早く動いた。
まだ、
数値は
残っている。
消される前の、
裏指標。
継続率:微増
離脱率:変動なし
再問い合わせ:減少
どれも、
未選択が発生した後だ。
佐伯は、
メモを
提出してしまった。
備考:
未選択状態発生後、
利用者行動に
不安定化は見られず。
一部指標では
自律行動増加の可能性あり。
提出した瞬間、
佐伯は
悟った。
「あ、
これ
ダメなやつだ」
本部
困惑
会議室。
「……擁護?」
「はい。
数字が、
そう言ってます」
誰かが、
言い返す。
「でも、
意味がない
じゃないですか」
その場で、
一瞬
沈黙が走った。
あの言葉だ。
使えないはずの。
月影
何も知らない
その頃、
月影は
通常業務を
続けていた。
何も、
知らされない。
注意も、
警告も、
来ない。
それが、
一番
不気味だった。
月影は、
ふと思う。
「……なぜ、
削除判断が
来ない?」
最適を
使わなかった。
未選択を
置いた。
それなのに。
余波
本部は
未選択を
異常定義しようとし
佐伯は
数値で
擁護してしまい
月影は
理由を
知らされず
ログだけが
静かに
残る
そして、
誰かが
言い出す。
「……未選択を
再現されたら
困りませんか?」